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2024.02.27

"アブラ"じゃない「肝臓に脂肪がたまる」根本原因|気を付けたい、気軽に買っている「2大食品」


日本人の3人に1人がかかっているという脂肪肝。肉の脂身や揚げ物など、アブラの摂りすぎが原因ではないよう(写真:kikisorasido/PIXTA)

日本人の3人に1人がかかっているという脂肪肝。肉の脂身や揚げ物など、アブラの摂りすぎが原因ではないよう(写真:kikisorasido/PIXTA)

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いまや、日本人成人の3人に1人がかかっているという脂肪肝。特に近年は、お酒をあまり飲まない人に急増しているらしい。

長野県佐久市立国保浅間総合病院の「スマート外来」には、肥満や脂肪肝の改善を目指す人が全国から集まってくる。同外来の担当医、尾形哲さんにお酒を飲まない人がなぜ脂肪肝になるか聞いてみた。

お酒をよく飲む人がかかるとされていた「脂肪肝」が、お酒を飲まない人に増えている。

お酒を飲まない人がなぜ?

「とくに直近の5年間は急増傾向にある」と尾形さんは言う。非アルコール性の脂肪肝の原因とはなんなのだろうか。

「“脂肪”のイメージから、食事での肉の脂身や揚げ物などアブラの摂りすぎを想像しがちですが、主な原因は『糖質』の摂りすぎです。とくに肝臓は、『精製された糖質』から多くの中性脂肪を合成します。それが脂肪肝へとつながっているのです」と尾形さん。

「精製された糖質」とは、穀物などが精製され、食物繊維などがそぎ落とされたものだ。白米、小麦、砂糖などがこれにあたる。

「体内に糖質が増えすぎると、肝臓は糖を中性脂肪という形に変えて、肝細胞1つひとつの内部に脂肪滴(てき)としてラーメンの背脂のような滴をため込み、肝臓を太らせていきます」(尾形さん)

脂肪肝の組織内の白い粒が脂肪滴だ。

脂肪肝の顕微鏡写真。丸く写っているのが「脂肪」(出典:Wang,Tanaka et al.Arch Toxicol 2019)

脂肪肝の顕微鏡写真。丸く写っているのが「脂肪」(出典:Wang,Tanaka et al.Arch Toxicol 2019)

体によいことをしているつもりで…

精製糖質はとくに飲み物で摂ると吸収スピードが早いため、肝臓へのダメージも大きくなるという。つまり、「精製糖質のたっぷり入った清涼飲料水の常飲が脂肪肝の元凶」と尾形さん。

脂肪肝が急増している背景には、深夜まで営業するコンビニに清涼飲料水やスイーツなどの甘い物が充実していて、いつでも気軽に手に入ってしまうことが状況に拍車をかけているという。

「スポーツ飲料や乳酸菌飲料、スムージーや野菜ジュースなどにも実は相当量の糖質が含まれています。体によいことをしているつもりで糖質を摂りすぎていて、肝臓に脂肪をため込んでいるかもしれません」

尾形さん曰く、注意すべき2大食品は「エナジードリンク」と「果実飲料(フルーツジュース)」だという。

エナジードリンクには大量のカフェインと糖質が含まれている。カフェインに糖が加わると、糖だけよりも高血糖になりやすく、糖を中性脂肪に変えるインスリンが大量に出てしまう。これらを飲んで疲れや眠気がすっきりとれた気がするのは、「血糖値が上がったせい」と尾形さんは言う。

そして、果物はジュースではなく、そのまま食べたほうがいい。

果物の糖は主にブドウ糖と果糖である。ブドウ糖は肝臓外の組織でもエネルギーとして利用されるが、果糖は、肝臓内でのみ使われる。つまり、果糖のほうが肝臓に多くの負担がかかることになる。

「その果糖も食物繊維と一緒にゆっくり吸収されれば、小腸の酵素でブドウ糖に変わります。しかし、飲み物で一気に果糖を摂ると、そのまま肝臓に向かってしまう。果糖は肝臓を直接傷つけ、肝臓の脂肪化を促進します」(尾形さん)

なお、果糖は「果糖ブドウ糖液糖」などの形で清涼飲料水や加工食品の甘味料にも使われている。加糖飲料はすべて避けたほうが賢明だ。

清涼飲料水に含まれる砂糖の量。角砂糖1個あたり3グラムで換算(出典:https://twitter.com/ogatas0520/status/1739594162817970465)

清涼飲料水に含まれる砂糖の量。角砂糖1個あたり3グラムで換算(出典:https://twitter.com/ogatas0520/status/1739594162817970465)

出典:https://twitter.com/ogatas0520/status/1739594162817970465 ※外部サイトに遷移します

カロリーゼロの人工甘味料は?

昨今は、微糖や無糖をうたうコーヒーや炭酸水などに人工甘味料で甘さを加えているものも多い。糖質ではない、これら人工甘味料の摂取についてはどうなのだろうか。

「カロリーゼロの人工甘味料でも結局、摂取していれば、甘さへの依存は強いまま。最近の研究で、人工甘味料には腸内環境や代謝を乱す懸念もあるとされています。脂肪肝を改善するなら、甘さのない飲料だけを摂るようにしてほしい」と尾形さん。

それによって味覚が回復し、素材の美味しさを感じられるようになる人も多い。食生活の改善も期待できるそうだ。

非アルコール性の脂肪肝で怖いのは、炎症や線維化(組織が硬くなること)を伴う「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」という病気になること。肝臓への脂肪の沈着程度にかかわらず、脂肪肝の人の約1~2割に発症するとされている。

「このNASHを放置すると、肝硬変や肝がんに進むリスクが高い」と尾形さんは言う。

だからこそ、健診で脂肪肝がひっかかった場合、すぐに対処したい。

どうすれば改善できるのか?

では、どうすれば改善できるのだろうか。

脂肪肝の改善では「食事に勝る薬なし」と尾形さんは言う。肝臓に脂肪が沈着する原因である飲食を減らすことなしに、治すことはできない。脂肪肝の改善は足し算ではなく、あくまで引き算なのだ。

そして、有り難いことに「肝臓の脂肪は最後にたまって、最初に落ちる。体の脂肪のなかでも、じつはかなり落ちやすい脂肪」と尾形さんは話す。

糖質はインスリンの働きによって中性脂肪に変換され、その後、皮下脂肪→内臓脂肪→肝臓脂肪の順に蓄積される。これが、減量などによって蓄積した脂肪が落ちるときには、肝臓脂肪→内臓脂肪→皮下脂肪の順に落ちていくという。

まずやるべきことの1つめは、「加糖飲料を飲まないようにする」。

「これだけでも、1カ月で体重の減少とともに脂肪肝も改善する人が多いです。飲み物をすべて水、お茶、ブラックコーヒーなど、糖質を含まない飲料だけにしてください」と尾形さん。

もう1つは、「空腹を友だちにする」だ。

「じつは空腹こそが肝臓の脂肪が減るためのスイッチです」と尾形さん。

エネルギーとして使われなかったブドウ糖は、いくつも合わさってグリコーゲンになり、肝臓と筋肉に蓄えられる。肝臓内のグリコーゲンは空腹にならないとエネルギーに変換されないという性質があるという。

空腹になり、グリコーゲンからブドウ糖への変換が起こると、それが刺激になって、肝臓や体の脂肪がブドウ糖に変換されるスイッチが入りエネルギーとして使われる。こうして、肝臓から脂肪が減っていく。

ついつい習慣で、おやつを食べたくなることもあるだろう。また、夕方に「低血糖になった」と感じて甘いものをとる人もいるだろう。

そうした空腹こそ、「脂肪が燃えるチャンス」。「そういうときは水を1杯飲むのが有効。食べたい気持ちがいったん落ち着きます」と尾形さんはアドバイスする。

もう1つのポイントは「減量」

この2つのポイントに加えたいのが「減量」だ。どの程度の減量が必要なのだろうか。

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「現体重の7%の体重減少で肝細胞から脂肪が減少し、脂肪肝は改善します。つまり、体重80㎏の人なら5.6㎏以上の減量でOK。減量後のBMI※が25以上で標準体重にはなっていなくても、脂肪肝は改善することが報告されています」(尾形さん)

※BMI(ボディ・マス・インデックス:体重を身長の2乗で割った指数。標準値は22)

いまから取り組めば、4月からの新年度をより健康な肝臓と身軽な体で迎えることも可能かもしれない。この機会にぜひ、チャレンジしてみてはいかがだろうか。

(取材・文/石川美香子)

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長野県佐久市立国保浅間総合病院外科部長、同院「スマート外来」担当医
尾形 哲 医師

1995年、神戸大学医学部医学科卒業、 2003年、医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。「スマート外来」は脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。『肝臓から脂肪を落とす食事術』(KADOKAWA)はオーディブル版も発売中。

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提供元:"アブラ"じゃない「肝臓に脂肪がたまる」根本原因|東洋経済オンライン

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