2023.12.27
「膝をたたくだけ」医師が勧める簡単すぎる健康法|最近注目の「若返りホルモン」が期待できる
今までにないくらいかんたんで、圧倒的に続けやすい「ひざたたき」健康法をご紹介します(写真:kuro/PIXTA)
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2023年11月27日、厚生労働省のガイドラインで「週に2、3回の筋力トレーニングを推奨する」と発表されました。
定期的な運動習慣が健康維持につながるのは、言わずもがな。問題は、やり続けるのが難しいことです。整形外科医・中村光伸氏の著書『ひざたたき 世界一かんたんな健康法』から一部抜粋・再編集して、圧倒的に続けやすい健康法について紹介します。
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継続こそ最高の健康法
ちょっと思い出してみてください。
これまで健康やダイエットのために、半年以上やり続けられたものはありますか?
「ないなあ」と思った人も、ガッカリしないでください。意外とそれが普通です。ジョギングを始めたけど、ひざを痛めて中止したとか、ジムに入会したけどユウレイ会員のままだとか、腹筋マシンを買ったのに充電すらしていない……なんていう声はよく聞きます。
習慣化するまで自分の意思で何かを続けるのは、想像以上に難しいことですよね。特に、流行りの健康法は思わず飛びついてしまうものの、すぐにやめてしまう人が少なくありません。
「ルームランナーが荷物置き場になってます!」
「ぶら下がり健康器って、ハンガーですよね?」
「朝バナナ、1カ月で飽きちゃいました……」
「エクササイズのDVD、キツいし再生するのが面倒でもう観てない」
せっかく健康のために始めたのに、つい忘れる、飽きる、面倒になる。
「わかっちゃいるけど、続かない」のが多くの人の本音ではないでしょうか。
正論を言えば「“継続”こそが最高の健康法」です。
どんなにすごい健康法も、続けなければ結果は出ません。反対に、一見すると地味なことでもコツコツと続ければ効果が現れてきます。
ウォーキングでも、腹筋マシンでも、スクワットでも、やり続ければ何でもプラスの効果はあるはず。結局、何をやるかというメソッドよりも、まずは続けられることが大事なのではないでしょうか。
しかし、それがいちばん難しいのです。
かんたんさを突き詰めた「ひざたたき」
では確かな効果が期待できて、圧倒的に続けやすいことはないのか?
どこかに通う必要もなく、筋力や体力に自信がなくてもできて、ケガをするリスクも少なく、時間も場所も選ばない。誰でも一生続けられるような、どんなトレーニングや体操よりも、もっともっとかんたんな方法……そんな今までにないくらいかんたんな健康法を考えた末に行き着いたのが、「ひざたたき」です。
ヒントは「骨」にありました。
私は整形外科医、美容皮膚科医として日々患者さんと接しています。高齢の患者さんは筋力や骨が衰えていることが多いので、「骨が健康の土台ですよ」「少しでも骨を鍛えましょうね」とお話しします。
骨を鍛えるには軽くたたいたりして衝撃を加えるのが効果的なのですが、実はこの「たたくだけ」のやり方に、骨を鍛えるだけでなく、認知症や糖尿病を予防したり、脂肪を減らすなど、非常に幅広い効果が期待できることがわかってきたのです。
驚きの効果の秘密は「若返りホルモン」といわれる「オステオカルシン」「オステオポンチン」にあります。
オステオカルシンはNHKの連続テレビ小説『おかえりモネ』のなかで出てきたので、ご存じの人もいるかもしれません。坂口健太郎さん演じる菅波先生が「記憶力の向上が期待できる」と語っていました。
この若返りホルモン、他にも多くのポジティブな効果をもたらすことが最近の研究で明らかになってきています。
(『ひざたたき 世界一かんたんな健康法』より)
実は骨というのは、単なる硬いかたまりではありません。生きた細胞でできていて、ホルモンの分泌を通して体のいろんなところに元気になるメッセージを送る、いわば臓器なのです。
骨が大切だとは知っていても、そんな役割があることは知らなかった、という人も多いのではないでしょうか。
若返りホルモンが分泌される仕組み
ひざをたたくことの大切な意味は、骨に刺激を与えることにあります。その刺激が若返りホルモンを出すスイッチになるからです。
その仕組みを見ていきましょう。
「人の細胞は常につくり替えられている」という話を聞いたことがありませんか? もちろん骨も例外ではありません。あなたの骨も、大人になって硬くなったらそのままというわけではなく、常に新しい骨につくり替えられています。
これを骨の新陳代謝(骨づくり)といいます。古い骨が溶かされ削られる「骨吸収」と、新しい骨がつくられる「骨形成」の繰り返しによって、骨折しにくい強度を保っているのです。
骨の新陳代謝は、古い骨を壊す→新しい骨をつくる→古い骨を壊す→新しい骨をつくる……という繰り返しです。このとき骨を壊す働きをするのが「破骨細胞(はこつさいぼう)」。骨をつくる働きをするのが「骨芽細胞(こつがさいぼう)」です。
注目していただきたいのが骨芽細胞で、この骨芽細胞が働いているときに、若返りホルモンが分泌されます。
骨芽細胞は、骨に負荷がかかることに反応して働きます。骨に刺激が加わるなどして負荷がかかると「もっと強い骨をつくれ」という指令が出て、骨芽細胞が頑張るのです。
これが、「ひざたたき」をすると若返りホルモンが分泌される秘密です。
反対に、運動不足などで骨に衝撃が加わらない生活を続けていると、どんどん骨芽細胞は働かなくなります。
(『ひざたたき 世界一かんたんな健康法』より)
「ひざたたき」は面倒な準備や難しい練習は何も必要ありません。着替えたり出かけたりしなくてもいいし、場所や時間に縛られることもありません。
あなたの毎日の生活スタイルを想像してみてください。運動やストレッチは無理でも、ただ座っている時間をちょっと「ひざたたき」の時間にするくらいなら、できそうなイメージがありませんか?
座ったついでにひざをトントン。
テレビを観ながらひざをトントン。
友達や家族とおしゃべりしながらひざをトントン。
頑張って運動をしなくても、たったこれだけであなたの体には若返りホルモンが分泌されます。
骨芽細胞から分泌されるオステオカルシンには、さまざまな健康効果があることがわかってきました。ここでは全部を紹介できませんので、一部をかいつまんで紹介しましょう。
例えば、糖尿病の予防です。
オステオカルシンは、すい臓の働きを活性化し、インスリンの分泌を高めるといわれています。
糖尿病にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型はすい臓からインスリンをほとんど分泌できないタイプで、Ⅱ型はインスリンが分泌できなくなったり、働きが悪くなったりするタイプです。生活習慣病といわれるのはⅡ型で、オステオカルシンの効果が期待できるのもⅡ型になります。
骨を強くしてオステオカルシンがよく分泌されるようになると、インスリンの分泌もよくなるため、血糖値の上昇を抑えることができます。
また、オステオカルシンには、脳の神経細胞を活性化する働きがあることがわかってきました。オステオカルシンを分泌できないマウスは、神経細胞の働きを高める神経伝達物質の分泌が低下し、逆に機能を抑制するアミノ酸が増えたという報告があります。
そのためオステオカルシンは、認知症予防にも効果があるのではないかと期待されています。
それからオステオカルシンの分泌量が増えると、筋肉量が増えることもわかってきました。
老化マウスにオステオカルシンを注射で補うと、なんと骨格筋量が増え、運動機能が回復したという報告もあります。また、その実験では、筋肉量を増やすために必要なたんぱく質の合成能力も上がったといわれています。
一つの成功体験が次の習慣につながる
誤解のないようにお伝えしておくのですが、「ひざたたき」さえやっていれば万事オーケーというわけではありません。筋トレやストレッチなどの運動ができるのであれば、ぜひ並行して続けていただきたいと思います。
「ひざたたき」のとてもいいところは、これまで運動習慣がなかったり、どんな健康法も続かなかった人に「続ける習慣」が一つできるところです。
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どんなにかんたんなことでも、何かを続けられたり、習慣化できたりしたことは、確かな成功体験になります。その成功体験から、「次はアレをやってみよう」「今度はコレもできるはず」と、どんどん意識が広がっていく可能性はおおいにあります。
また、「ひざたたき」をやったら、そのついでに「ちょっと体操でもしようかな」「軽くストレッチもやっておこうかな」と他の運動のきっかけになることもあります。
繰り返しになりますが、継続こそが最高の健康法です。
どんな健康法よりも始めやすく続けやすい「ひざたたき」を入り口にして、ぜひ、もっと好きな運動や楽しい健康習慣を見つけていただきたいと思います。
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提供元:「膝をたたくだけ」医師が勧める簡単すぎる健康法|東洋経済オンライン