2023.12.12
75歳医師が「最初にたんぱく質」を勧める理由|空腹を感じにくくなり、メタボ予防にも効果的
40代、50代になって「最近、疲れやすい」「集中力が落ちた」「仕事のパフォーマンスが上がらない」と感じる人は、たんぱく質が足りていないのかもしれません(写真:vaaseenaa/PIXTA)
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毎日の食事は、健康で生きるための基本。とりわけたんぱく質は、筋肉の材料になったり、血糖値を下げたり、元気な体づくりに欠かせません。
現在75歳で骨密度が135%(正常値は80%以上)という医師の鎌田實先生の著作『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生き食事術』より、たんぱく質の効果的なとり方を一部抜粋してお届けいたします。
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疲れやすさは「たんぱく不足」が原因かも
ぼくはこれまで、健康・長生きのための方法を幅広く提案してきましたが、そのど真ん中にあるのが「食事」。
とりわけたんぱく質は、筋肉の材料になったり、血糖値を下げたり、元気な体づくりに欠かせません。
40歳を過ぎると、毎年1%ずつ筋肉が減っていくといわれています。
筋肉は体を動かすだけでなく、集中力などの脳の働きにも関わります。
40代、50代になって、「最近、疲れやすい」「集中力が落ちた」「仕事のパフォーマンスが上がらない」と感じる人は、たんぱく質が足りていないのかもしれません。
また、高齢者にとって怖いのが、たんぱく質不足によるフレイルです。
フレイルとは、筋肉のおとろえにより心身の働きが弱くなった「虚弱」の状態で、65歳以上の8.7%がフレイル、40.8%がプレフレイル(フレイル予備軍)というデータもあるほど身近な症状です。
とくに女性はフレイルの割合が高いため、筋肉の材料であるたんぱく質を積極的にとる必要があります。
もちろん、若い世代や子どもの体づくりにも欠かせません。
ただし、やみくもにたんぱく質をとっても、余分なものとして体の外に排出されてしまうだけ。
より効率的なたんぱく質のとり方があります。
その方法をお伝えする前に、「鎌田式フレイルチェック」で自分の筋肉の状態を確認してみましょう。若い方でも、筋肉が衰えていることを自覚できるかもしれません。
□ 立つときに「よいしょ」と言う
□ ペットボトルのふたがあけにくい
□ 以前に比べて疲れやすい
□ 前を歩く人を追い抜けない
□ 1年で体重が2~3㎏減った
1つでも当てはまったらプレフレイル、3つ以上当てはまったらフレイルの可能性が高い状態です。とくに、握力低下と肥満が同時進行している「サルコペニア肥満」の人は、認知症リスクが6倍も高まるという調査もあります(2022年順天堂大学の調査報告より。BMI〈体格指数〉が25以上の肥満、かつ握力が男性28kg、女性18kg未満の「サルコペニア肥満」の場合)。
「たんぱくファースト」がいい理由
食事のときに、最初に野菜を食べることを「べジファースト」といいます。
まず食物繊維をとることで糖の吸収をおさえ、血糖値の上昇を防ぐことができるし、食欲をおさえることもできるという考え方です。
ただし、鎌田式はちょっと違う。先に食物繊維をたっぷりとると、たんぱく質の吸収までおさえてしまうことがあります。
筋肉をつけたい人や、フレイルが気になるご高齢の方には、手放しではおすすめできません。
そこで提案したいのが「たんぱくファースト」。
食物繊維と同じように、たんぱく質にも血糖値の上昇をおさえる効果があることがわかっています。肉や魚などの主菜を先に食べ、そのときにサラダなどの副菜も一緒に食べれば、血糖値の上昇をおさえ、たんぱく質もしっかりとれます。
ごはんやパン、麺類などの主食を食べるのはそのあと。
これを「カーボラスト」といって、最近では「べジファースト」以上に大切だといわれるようになりました。「カーボ」=炭水化物(糖質)を最後に食べるから「カーボラスト」です。
肉や野菜を先に食べ、主食はその次(イラスト:『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生き食事術』)
食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」は、血管を傷つけて、「慢性炎症」の原因にもなります。認知症には脳細胞の炎症が関係しているし、動脈硬化が進むと、脳の細胞へ血液が十分に届かずに脳機能がおとろえてきます。
「たんぱくファースト」で肉や魚を最初に食べ、「カーボラスト」で最後に主食。こうして食べる順番を変えるだけでも、さまざまな疾患を引き起こす血糖値スパイクの予防に。それが、健康な体をつくり、「元気に長生き」の秘訣です。
血糖値は本来、ゆるやかに上下するが、急激に変化すると血管が傷ついたり、詰まりやすくなってしまう(イラスト:『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生き食事術』)
「たんぱくファースト」と「カーボラスト」で血糖値を安定させれば、空腹を感じにくくなり、メタボ予防にも効果的。
さらに、集中力が増して仕事や家事の効率アップも期待できるなど、いいことだらけです。
「鎌田式みそ玉」で筋肉を増やす
たんぱく質は、大切なのは三食の中でバランスよくとることが大切です。
とりわけ重要なのが朝のたんぱく質、略して“朝たん”。
高齢女性を対象とした調査(長崎大学と早稲田大学を中心とする研究グループによる調査報告)では、夕食よりも朝食にたんぱく質をとった人の方が、骨格筋指数や握力が高いという報告があり、これには体内時計が関わっていると考えられています。
だから朝食抜きというのが一番いけません。
ところが、日本人の3食のたんぱく量の割合は、若者から高齢者まで、夕食が最も高く、朝食はその半分程度。
この朝と夜のたんぱく量の割合を逆にするだけで、効率よく筋肉をつけ、フレイル予防につなげることができます。
朝たんの最強の味方は、やっぱりみそ汁。
ぜひ「鎌田式みそ玉」を活用してください。
鎌田式では、たん活に効くサバ缶やチーズ、野菜を入れて具だくさんのみそ玉にするのがポイント。毎朝、お湯を注ぐだけでみそ汁が完成。
ぼくはこのみそ玉を、とにかく忙しい朝の食事に革命を起こす秘策だと思っています。
たんぱく質だけでなく、朝食の量を全体的に増やして、朝食、昼食、夕食のバランスが4:4:2になるのが理想。
せめて。4:3:3を目指しましょう。
あるテレビ番組で、ぼくがこれを“朝たん生活”と言ったら、出演者の方からすごく好評でした。
これからは、全国に朝たん生活を伝えていきたいと思っています。
「鎌田式みそ玉」で作る「たんぱくみそ汁」
・サバ缶
・チーズ
・ほうれん草
サバ缶、チーズ、ほうれん草の「みそ玉」(写真:『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生き食事術』)
・大豆
・オクラ
・ほうれん草
大豆、オクラ、ほうれん草の「みそ玉」(写真:『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生き食事術』)
「鎌田式みそ玉」は、みそと顆粒だしをまぜて、好みの具材と一緒に丸め、1食分ずつラップで冷凍しておくだけ。保存の目安は1カ月。
サバ缶やチーズ、大豆などを入れておけば、1食で10~15gもたんぱく質をとれます。ほかにも、ごはんに蒸し大豆をまぜたり、しらす干しをのせたり、朝のひと工夫でフレイル知らずの元気な体に!
たんぱく質は「こまめに」とる
「たんぱくファースト」「朝たん」と並んで、ぼくがおすすめしたいのが「プチたん活」と「たん活おやつ」です。
一度に体に吸収できるたんぱく質の量はかぎられています。
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だからやみくもにたんぱく質をとっても邪魔なものとして体の外に排出されてしまいます。
1日3食しっかりとることに加えて、「こまめに」とることも大切。
間食として食べているおやつを、たんぱく質たっぷりな「たん活」おやつに置きかえて、「プチたん活」を心掛けましょう。
たとえば、ヨーグルト、チーズなどの乳製品やゆで卵を冷蔵庫に常備しておけば手軽だし、「高野豆腐ラスク」は、ぜひ試してみてください。
高野豆腐は成分の半分がたんぱく質という、天然プロテインです。
ナッツ類はたんぱく質が豊富なうえに、体にいい脂質、ビタミン、ミネラル、鉄分、食物繊維がたっぷりで、バランスのよいおやつになります。
ぼくはピーナッツや、いり大豆をよく食べます。いり大豆は小さじ山盛り1杯あたりのたんぱく質量が1.2gと豊富で、「プチたん活」にぴったり。
「プチたん活」のタイミングは、午前10時や午後3時など、3食の間にこまめにとるのが理想的。
また、筋トレのあとの30分以内は、傷ついた筋肉細胞がたんぱく質によってよみがえる「筋肉のゴールデンタイム」。理想的な時間にパッと食べられるよう、冷蔵庫にあなたの「たん活おやつ」を常備しておきましょう。
こまめに筋肉を増やす「手作りきな粉ナッツ」
「手作りきな粉ナッツ」ミックスナッツ(素焼き)40g、黒糖、水、きな粉…各大さじ1/2(写真:『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生き食事術』)
きな粉ナッツは毎日食べたい健康おやつ。
黒糖と水をフライパンに入れ弱火で水分を飛ばしナッツを入れ、黒糖でコーティング。冷ましてきな粉をまぶすだけ。3時のおやつタイムや小腹が空いたときに食べて。
「高野豆腐ラスク」で手軽にたん活
「高野豆腐ラスク」高野豆腐…2枚、牛乳…150ml、きな粉・砂糖…各大さじ1(写真:『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生き食事術』)
牛乳を耐熱容器に入れ、電子レンジで温めたら、高野豆腐を入れます。
あら熱がとれたら、できるだけ薄くカットし、砂糖をまぜたきな粉をまぶして、トースターでカリカリになるまで焼いたら完成です。砂糖は入れなくてもオッケー。
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提供元:75歳医師が「最初にたんぱく質」を勧める理由|東洋経済オンライン