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2023.10.20

40代でも急に老けてしまう「ゴースト血管」の恐怖|血管を「若く保つ」ためにはどうしたらいいのか


「老い」はどこから始まるのでしょうか(写真:8x10/PIXTA)

「老い」はどこから始まるのでしょうか(写真:8x10/PIXTA)

いくつになっても、旅行に出かけたり、好きなものを食べたりしたいもの。そのためには、タンパク質を積極的に摂りながら運動をすることで「筋力」を蓄えることが重要だと、諏訪中央病院の名誉院長、鎌田實氏は説く。

同氏と生島ヒロシ氏との共著書である『70歳からの「貯筋」習慣』では、高齢者が長く健康を保つために、体の筋肉を蓄える「貯筋」の大切さを提唱している。本稿では、「がんばらない健康法」を提唱する鎌田さんに、老化を防ぐための食事、運動、睡眠における重要ポイントを聞いた。

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腸内の善玉菌を増やす「貯菌」

――『70歳からの「貯筋」習慣』では、「貯金」、筋肉を蓄える「貯筋」と並ぶもう1つの重要な「ちょきん」として「貯菌」を紹介しています。

「腹をくくる」「腹を決める」という言葉があるように、「腹=腸」は体の中心であり、生きていくうえで最も大事な要素です。

腸には免疫細胞の約7割が集まっているといわれ、ウイルスや病原菌から身を守ります。また、「脳腸相関」といって脳と腸はつながっていて、互いに情報をやり取りしているともいわれます。

ストレスを感じるとおなかが痛くなったりおなかを壊したりするのはその脳腸相関が関係しています。細胞の進化を見ていくと、腸は脳より先にできていて、腸から脳は生まれたのではないか、ともいわれています。

腸内に存在する善玉菌・日和見菌・悪玉菌の構成は、2:7:1が理想的なバランスとされています。 腸内環境を整えるうえでは善玉菌を増やし、腸内細菌の多くを占める日和見菌を善玉菌の味方につけることが大事で、その善玉菌を増やすことを「貯菌」と呼んでいます。

――その「貯菌」はどのように実践すればよいでしょうか?

善玉菌を増やすには、チーズ、ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品を食べることが基本です。できるだけ発酵食品のバリエーションを広げ、多種多様な菌を摂ることで、善玉菌が常に刺激を与えられる状態にしてあげましょう。

納豆も地域によって納豆菌の種類が異なるので、さまざまな産地の納豆を食べることで異なる善玉菌を少しずつ摂り入れることができます。僕は、麹菌を含む麹甘酒を「貯菌のレギュラー選手」として冷蔵庫に常備しています。

もう1つ、「貯菌」において忘れてならないのは、善玉菌のエサとなる食物繊維を摂ること。野菜、きのこ、海藻などに含まれる食物繊維は善玉菌の働きを活発にし、腸内環境の悪化を防いでくれます。また、水分を含むことで便のかさを増し、朝の排便を快調にしてくれます。

現役世代に忍び寄る「ゴースト血管」

――私たち現役世代も老後に備えて今から取り組む必要がありますね。

そうですね。特に、働き盛りの40代、50代の皆さんにとっては「老い」に対する不安もあるでしょう。その「老い」はどこから始まると思いますか?

――どこから? ……わかりません。

答えは「血管」です。血液の通り道である血管の長さは、10万キロメートル。実に地球の2周半分もの血管が、人体のすみずみまで張りめぐらされています。

血管というと、太い血管である動脈が連想されますが、実は血管の約95%を占めるのが毛細血管です。毛細血管が老化すると血液の流れが悪くなり、酸素や栄養素が十分に行きわたらず、細胞が弱っていきます。この状態を「ゴースト血管」と呼びます。

動脈の病気である解離性大動脈瘤、脳梗塞、心筋梗塞はもちろん命に関わる深刻な病気ですが、一方でこの毛細血管が老化し「ゴースト血管」化すると、足のむくみ、シミやシワ、老人性皮膚掻痒症によるかゆみなど、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が低下する原因となります。

――「ゴースト血管」による老化を防ぐことが、仕事やプライベートを長く充実させることにつながるのですね。

「ゴースト血管」を防ぐいちばんの“薬”は「一酸化窒素」で、この一酸化窒素を作ってくれるのが運動です。運動すると血管内皮細胞で一酸化窒素がつくられ、その作用によって血管がやわらかく、しなやかになります。血管が柔軟性を得ることで血液の流れがスムーズになります。

前回お話しした「鎌田式ウォーキング」や「鎌田式スクワット」などシンプルな運動でかまわないので、運動を習慣化することは「貯筋」だけでなく、「ゴースト血管」の防止にもつながるのです。

前回 ※外部サイトに遷移します

加えて、血管の老化を防ぐには抗酸化力を高める食事が欠かせません。特に野菜をしっかり摂ることです。

僕は約50年前に東京から長野の諏訪中央病院に赴任したときに、長野県全域で「健康食事運動」を展開しました。「1日の野菜摂取量350グラム」を目標に掲げ、県民の皆さんに呼びかけたのです。特に野菜をたくさん摂れる「ぜいたく具だくさん味噌汁」が大ヒットして、長野県の平均寿命は1990年に男性が1位に、2010年には男女で1位になりました。

野菜を摂れば塩分を減らせる

――食事の際、塩分については意識したほうがいいですか。

塩分を摂っても血圧に影響しない人は一定層いることがわかっていますが、それでも多くの人は塩分の摂取量とともに血圧が正比例で上昇するので、減塩は大事です。減塩によって血圧が平均に保たれると動脈硬化、心筋梗塞とか脳梗塞などの病気が起こりにくくなります。

長野県はかつて脳卒中の罹患率が全国ワースト1位でしたが、「健康食事運動」で野菜の摂取とともに減塩を呼びかけたところ、全国トップクラスの長寿県になりました。

野菜を摂取することには、塩分を減らす効果もあります。多くの野菜にはミネラルの一種であるカリウムが含まれています。カリウムが体の中に入ると、血圧を上げる原因であるナトリウムが代わりに尿とともに排出されます。

野菜を摂ることで、ナトリウムとカリウムのチェンジが体内で行われるのです。僕も毎日350グラムの野菜を摂るようにしていますが、一時期「140/90」だった血圧が、今は「120/70」くらいに保たれています。

――食事に最適な時間帯はあるのでしょうか。

食事は朝にしっかり摂ることを勧めます。この記事を読んでいるビジネスパーソンの方は忙しいので、朝・昼・夜の食事のウェイトはおそらく1:3:6くらいではないでしょうか。それを、4:3:3、できれば5:3:2にするのが理想です。

――なぜ、朝食のウェイトを高めたほうがいいのでしょうか。

腸の動きは10時から14時くらいが活発になるといわれています。たんぱく質を夜にたくさん摂っても十分に消化されず、ただ肥満になっていくだけなので、これから活動が始まる朝にたんぱく質を摂ったほうが筋肉に置き換わりやすくなる、つまり「貯筋」がしやすくなります。

あとは、夕食をできるだけ早くすることで、朝食までの時間をできるだけ空けるのがポイントです。夕食と朝食の間を9時間以上空けると脂肪燃焼が始まるので、特に太りすぎを気にする女性は夕食を早くとったほうがいい。僕は18時くらいには夕食を終え、8時半くらいに朝食をとっています。

良質な睡眠を促す「幸せホルモン」

――「睡眠」も健康を維持するうえで重要です。

睡眠におけるいちばんのポイントは「朝」にあります。朝日を浴びて体を動かすと「セロトニン」という物質が出て、そのセロトニンが、時間が経つと「メラトニン」という睡眠導入物質に変化します。

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したがって、良質な睡眠のためには朝日を浴びてセロトニンを出しておくことが大事。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、「大変だけどいい人生を歩んでいるな」と幸せ感が増したような気持ちになれます。なるべく日中に筋トレやウォーキングをして筋肉を動かしておくことも、睡眠の質を高めるポイントです。

睡眠中に腸をいっぱい働かさないで済むように夕食を少しでも早く終わらせておくことも大事です。どうしても難しければ、食事が終わった後に軽く運動して、お風呂に入って深部体温を一度上げておく。その後、深部体温がだんだん下がってくると、副交感神経が優位になって眠りやすくなります。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

医師が警告!「見た目が老ける悪習慣」5大NG

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提供元:40代でも急に老けてしまう「ゴースト血管」の恐怖|東洋経済オンライン

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