2023.10.17
「食べ過ぎなくても太る人」が抱える2つの問題|なぜ「バナナ」を1日2本食べるといいのか?
勝手にやせる体づくりには、「自律神経」「腸内環境」の2つを整えることが大切です(写真:USSIE/PIXTA)
「夏バテのせいか、あまり食べないのに体重が変わらない」「最近、やせにくくなった。年かな?」「昔より食べてないのに太る」。こういったことはないでしょうか。そして、これらを年齢のせいにして、諦めてはいないでしょうか。
「確かに、加齢による代謝の低下などで年をとると太りやすくなりますが、原因はそれだけではない」と語るのは、腸と自律神経の第一人者として知られる順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏。今回、小林弘幸氏の著書『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』から抜粋・再編集して、食べ過ぎなくても太る原因と簡単にできる解決策を紹介します。
『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
勝手にやせる体づくりに欠かせない2つの要素
結論からいいます。勝手にやせる体づくりには、「自律神経」「腸内環境」の2つを整えることが大切です。
まずは1つ目の要素である自律神経から説明していきましょう。
自律神経とは、中枢神経と体のあらゆる器官をつないでいる末梢神経の1つです。内臓の働きや呼吸、血流、体温の調整など、体の機能を24時間コントロールしている体の司令塔のような役割を担っています。
自律神経が各器官に命令を与えることで、私たちは環境に順応でき、生命を維持しています。この自律神経がうまく動かなくなるのが、自律神経が乱れた状態です。なぜ、うまく動かなくなるのか。その理由の1つが自律神経のオーバーワークです。例えば、ストレスは自律神経を乱す大きな原因となります。なんらかのストレスを受けたとき、私たちの体はいつも通りの状態を保とうと活動します。そして、ストレスを受け続けると、なんとかしようと自律神経が頑張ることで、自律神経がオーバーワークになってしまい、本来の働きが、どんどんできなくなってしまうのです。
例えば、胃腸の働きが抑制されて食べたものの消化が滞り、便秘になり、ぽっこりお腹になりやすくなります。
そしてなにより、血流が悪くなり代謝が下がります。それによって、脂肪をためやすい、太りやすい体になってしまうというわけです。
自律神経の乱れによる肥満は、昔から指摘されており、「モナリザ症候群」といわれています。モナリザ症候群とは簡単にいえば、自律神経の乱れによって交感神経の働きが衰えて代謝が悪化し、太りやすくなっている状態のことです。肥満の人の約7割がこの「モナリザ症候群」ではないかといわれています。
不眠などの生活習慣の乱れによっても自律神経の乱れは引き起こされます。
そして自律神経の乱れは、悪化するまで気がつきにくいもの。簡易的なものですが、ぜひ次のチェックリストで自律神経の状態を調べてみてください。1つでもチェックがつくと、自律神経が乱れている可能性があります。また、チェックした数が多いほど自律神経の乱れが大きいと考えられ、モナリザ症候群の危険性が高まります。
□すぐ疲れる
□やる気が出ない
□よく頭痛がある
□気分が落ち込みがち
□肩がこる
□イライラしやすくなる
□腰痛がよく起きる
□集中できない
□便秘や下痢ぎみ
□緊張しやすく、ストレスを受けやすい
□肌が荒れる
□よく眠れない
□手足が冷たい
□いくら寝ても疲れがとれない
□よく風邪やインフルエンザにかかる
□目覚めが悪い
腸で産生されるやせ物質「短鎖脂肪酸」
ここからは、勝手にやせる体になる2つ目の要素である「腸内環境を整える」ことについて、説明していきます。
腸内環境を整えて腸本来の働きを取り戻す腸活は、ダイエットには欠かせません。
その理由は、2つあります。1つは、腸と自律神経には密接な関係があるからです。
腸と脳とは、自律神経、内分泌系、免疫系の3つの経路を介して、互いに影響を及ぼしあう関係で、これを「腸脳相関」といいます。ストレスで下痢気味になったり、緊張するとトイレに行きたくなったり、おなかが痛くなったりした経験はないでしょうか?
これは、ストレスによって自律神経が影響を受け、コントロール機能が乱れ、大腸の働きに異常をきたしたことによって起きる現象です。
また、逆に腸内環境が悪くなると、脳が不安を感じ、自律神経が乱れやすくなるといわれています。うつ病の人に便秘の人が多いのも、この腸脳相関の関係性からくるものといえるでしょう。
腸活がダイエットに欠かせない2つ目の理由が、腸の中にいるビフィズス菌などが「短鎖脂肪酸」というやせる物質を産生してくれるからです。
「短鎖脂肪酸」にはいくつかの種類があり、どれもさまざまな健康効果から今注目されている物質です。
なかでもダイエットと結びつくのが「酢酸」と「酪酸」です。
「酢酸」は、脂肪細胞に余分なエネルギーが取り込まれるのを防いで、脂肪をたまりにくくしてくれます。
また、「酪酸」は、交感神経に働きかけて、心拍数や体温を上昇させ、代謝を高めてくれる効果があります。
この「短鎖脂肪酸」の恩恵をうけるには、善玉菌が元気でなくてはなりません。
そのためには、善玉菌が元気に活動できる環境を整える必要があります。
そして、その環境こそが腸内に便がたまっていない状況なのです。つまり、代謝を下げる自律神経の乱れから身を守るためにも、やせる物質である「短鎖脂肪酸」を体内で多く産生するためにも、腸内環境をよくする腸活は、欠かせないものなのです。
では、太りやすくなる2つの要素を解消するにはどうすればよいのか。できるだけ、簡単な方法をご紹介します。重要なところは次の2点です。
・朝にバナナを1本以上食べること
・1日にバナナを2本食べること
まず、なぜバナナなのか。それは、バナナにはレジスタントスターチという、腸内環境を整えてくれる成分が多く入っているからです。レジスタントスターチは、エサとなり、善玉菌を元気にしてくれます。さらに、腸の中の便をおそうじし、善玉菌の居心地のいい環境を作り出す役割も果たしてくれます。
また、レジスタントスターチは、その名の通り消化が難しく、やっと消化されるのが大腸の最も奥です。腸の奥にまで、届くということです。腸の奥。ここに多くすんでいるのが、数ある善玉菌の中でも主役級であるビフィズス菌で、これがまた、レジスタントスターチの大好物。待ち構えていたビフィズス菌によって分解されると、やせるために必要な「短鎖脂肪酸」が作られるのです。しかも日本が長寿国である要因の1つが、ビフィズス菌をもつ人が多いことだといわれています。
その意味で、レジスタントスターチと日本人の腸は相性抜群ともいえます。
なぜ2本なのか。それは、1日2本が腸内環境の改善と自律神経を整えることに役立つことが期待できるからです。
2022年の1月に、順天堂大学漢方先端臨床医学研究室と小林メディカルクリニック東京の共同チームによる実証実験をしました。
その結果、バナナを1日2本、2週間食べ続けた成人男女13人のうち、過半数の7人について、腸内の悪玉菌が作り出した「インドール」と呼ばれる腐敗物質が減少し、腸内環境が改善するという効果が確認されました。また、うれしいことに、自律神経が活性化する効果も見られました。
バナナが朝食にいい理由
では、次になぜ朝なのか。人間の体には、1日の時間の流れに合わせて、新陳代謝やホルモン分泌などを行っていくために、「体内時計」の機能が備わっています。例えば朝に目が覚めて、夜になると眠くなるのは、この機能がしっかりと働いているからです。
『お医者さんがすすめるバナナの「朝食化」ダイエット 超シンプルな腸活健康法』(アスコム) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
これがしっかり機能しないと、自律神経に乱れが生じ、腸の働きも停滞してしまうことになります。しかし、体内時計は、ぴったり24時間ではなく、少しずれているので、朝に調整する必要があります。この体内時計の調整をしてくれるのが、朝日を浴びることと朝食です。そのため、自律神経が乱れてやせにくい体にならないためには、朝食は非常に大切だといえるでしょう。
以上のことから、続けやすさと効果の面を鑑みて、朝には必ず1本以上食べる、バナナを1日2本食べるというメソッドになったのです。
忙しくて朝食はとらないという人もいらっしゃるかもしれませんが、朝食をとらないと、やせにくくなるだけでなく、日中の集中力や免疫力、筋肉量の低下の原因にもなるといわれます。バナナは剥けばすぐに食べられるので、忙しくても摂取しやすいのではないでしょうか。また、いろいろな料理の食材としても優秀です。ぜひ朝食にバナナを心がけてみてください。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:「食べ過ぎなくても太る人」が抱える2つの問題|東洋経済オンライン