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2023.10.12

肝臓専門医が警鐘「疲れたら甘い物」摂る人の盲点|「脳に騙されない」スイーツの楽しみ方とは?


ご褒美のスイーツを食べると、かえって疲れがたまるという新事実が(写真:プラナ/PIXTA)

ご褒美のスイーツを食べると、かえって疲れがたまるという新事実が(写真:プラナ/PIXTA)

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長野県の佐久市立国保浅間総合病院「スマート外来」では、患者の8割が3カ月で約5㎏の減量と、脂肪肝の改善に成功しています。

著作の『肝臓から脂肪を落とす』シリーズが累計6万5000部を突破し、多くの患者を減量に導いている肝臓外科医・尾形哲氏がこの度、『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』を上梓。本書から一部抜粋・再構成してお届けします。

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疲れを取るはずの甘いもので余計に疲れる

疲れた仕事帰りにコンビニに立ち寄ると、思わず引き寄せられるスイーツコーナー。そして、シュークリームやエクレア、チーズケーキなどに手が伸びることもあるでしょう。

高脂肪、高糖質で甘みのある“カロリー密度の高いスイーツ”は、人間が先天的に好きな食品です。そして、脳の疲れによって食欲をコントロールできない状態だと、暴走する食欲のままスイーツを食べてしまうのです。

確かにブドウ糖は脳のエネルギー源になるため、脳からは甘いものを欲する司令が出ます。しかし、それによって体がどうなるかご存じでしょうか。

空腹時に甘いものを食べれば、血液中に糖が増えて血糖値が急激に上がります。すると、すい臓からは血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌されて、血糖値を下げます。

同時に、インスリンにはもう1つ重要な働きがあります。細胞内に十分な糖があるとき、糖を中性脂肪に変えて体内に蓄えるのです。こうして、甘いものを食べすぎることで、飲酒習慣がなくても肝臓に脂肪が蓄積する「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」の人が増え、現在、約2000万人が罹患しているといわれます。

さらに血糖値が急上昇すると、それを速やかに下げるため、インスリンの分泌量も過剰になって、今度は急激に血糖値を降下させます。すると血糖値が下がりすぎて低血糖になり、空腹感が湧き出し、また甘いものが欲しくなるという悪循環が起こるのです。

それだけではありません。低血糖状態では、疲労感が強くなったり、イライラが強くなったりもします。つまり、疲れをとるはずの甘いものが、再び疲れを呼び起こすのです。

こうして、「疲れたから」「がんばったから」とご褒美のスイーツを食べると、結局“疲れが増す”ことになるのです。

甘いものが疲労感を大きくする(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

甘いものが疲労感を大きくする(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

高糖質×高脂質の甘い加工食品が食欲を増幅

ひとくくりに甘いものといっても、さつまいもやかぼちゃのように食材そのものが甘みを持っているものと、加工された食品とで満足感が大きく異なることも示されています。

例えば、芋けんぴと焼き芋を比較してみましょう。

芋けんぴと焼き芋の比較(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

芋けんぴと焼き芋の比較(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

同じ100gであっても、さつまいもを油で揚げて砂糖をまぶした芋けんぴのカロリーは、焼き芋の3倍以上。にもかかわらず、焼き芋なら100g分も食べればお腹が満たされるのに、芋けんぴでは100g分食べても満腹感を感じにくいのです。

さらに芋けんぴを食べている途中で塩味を挟めば、際限なく食べられることにも。同じ量でも高カロリーの芋けんぴをたくさん食べてしまうのは、脳が高糖質×高脂質の食品から快感を得て、もっと食べるように要求するためです。

砂糖と油の組み合わせに、脳が騙されてしまうのです。

【パン・焼き菓子の食品満足度比較】

パン・焼き菓子の食品満足度比較(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

パン・焼き菓子の食品満足度比較(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

上図はあらゆる食品の満足度を調べた研究結果(※)の一部です。白いパンの満足度を100としたときに、クロワッサンやケーキ、ドーナッツなどの甘くて脂質が多い高カロリーな食品ほど、満足度が低いことが示されています。満足度が低ければ、どんどん食べてしまうことになります。てっとり早くエネルギー摂取ができる高カロリーを脳は優遇し、「どんどん食べよ」と指令を出すわけです。

※SHA Holt, et al. Eur J Clin Nutr. 1995;49(9):675-690.

人工甘味料使用に減量効果なし

一方で、甘いもので太らないための対策として、糖質オフが謳われたスイーツを選んだり、調理でカロリーゼロの甘味料を使用したりしている人もいるでしょう。減量のためにカロリーゼロのダイエットコークに変えたという話もよく聞きます。でも、それでは根本的な解決にはなりません。

カロリーゼロの飲料や糖質オフのスイーツの大半に、カロリーゼロの甘味料が使用されています。これらは、人間の体内で消化や吸収、代謝がされにくい、「糖アルコール」や「非糖質系甘味料(人工甘味料、天然甘味料)」です。砂糖の代わりに使用され、減量の味方として広く支持されています。

カロリーゼロの甘味料(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

カロリーゼロの甘味料(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

甘いものを食べても太らないという夢のような食品ではありますが、さまざまな研究結果が明らかになっています。

非糖質系人工甘味料の研究結果まとめ(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

非糖質系人工甘味料の研究結果まとめ(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

上図はゼロカロリー、低カロリーの甘味料について調べた研究結果のごく一部です。こうした結果に基づき、ついに世界保健機関(WHO)は、非糖質系甘味料に減量効果がないと明言しています。さらに長期使用による健康被害をもたらす可能性を示し、ダイエット目的で使用しないよう勧告を出しています。

一面的にはカロリーゼロで血糖値を上げないというメリットがありますが、腸内環境や代謝を乱す懸念があるため、私の外来では摂取を避けていただいています。ゼロカロリーであっても甘いものを食べ続ければ、結局甘いものへの依存が強まって、さらに脂肪を増やすことになりかねません。

甘いもの欲求を止めるコツ

脳が騙されたまま高カロリーの甘い加工食品を食べ続けないためには、脳の疲れを取って適切に判断できるように整えることが大切です。

甘いものが欲しくなったときは、10分程度でよいので「ホットアイマスク」をつけると、視覚情報が遮断されて脳の疲労回復に役立ちます。血流も改善してリラックスモードに切り替わりやすく、食欲の暴走にストップがかかります。

さらに夜寝る前にも10分間ほどのホットマスクの習慣をつけると、睡眠の質が改善します。深い眠りが得られると脳の回復も早まるので、食欲をコントロールしやすくなります。

また、甘いものを食べたいときには、とにかく「水を1杯飲む」のも有効です。血中のナトリウム濃度が下がることで飢餓状態でなくなったと脳が判断し、食欲が抑えられます。

そうはいっても疲れて甘いものが欲しくなったときに、いつも「ダイエット中だから食べてはいけない」とガマンを続けると、ストレス食いによるリバウンドの原因になりかねません。そこで、上手に間食をとることで食欲の暴走を食い止める「ちょこっと食べ」におすすめの間食をご紹介しましょう。

食欲の暴走を抑えるおすすめ間食(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

食欲の暴走を抑えるおすすめ間食(出所:『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』)

◉パック入りむき甘栗

甘いものを口にしたいときは、むき甘栗を3〜5個食べてもよいでしょう。糖質量は高いですが、食物繊維も多く、血糖値の上昇はゆるやかです。

◉ミックスナッツ

良質な脂質をとることができ、ビタミンEやマグネシウムなどの栄養素を補給できます。ただし、高カロリーなので量は片手にのる程度(約25g)を目安に。

◉ゆで卵

筋肉量が少ない方にとくにおすすめの手軽な高タンパク食品。腹持ちもよく、栄養価も高い優秀な間食です。

◉カフェオレ(無糖)

コーヒーや紅茶に少量の牛乳を加えて飲むのもいいでしょう。ただ、勘違いしないでほしいのは、飲料としては水、お茶、コーヒー限定です。牛乳自体は、タンパク質や脂肪だけでなく、乳糖という糖類を含み、1杯(200㎖)で130㎉もある高カロリー飲料です。

甘いものが好きな人に、「今日から一切甘いものをやめてください」というつもりはありません。ただ、欲求のままに食べる習慣が続くと、気づいたときには肝臓には大きなダメージになっていることがあります。

「雨だれ石を穿つ」という言葉がありますが、転用するなら「甘だれ肝を穿つ」ということ。好きなものだからこそ、ゼロにするのではなく、長く食べられることが理想ですね。

そのためにも、甘いもの「量」「質」「頻度」を見直していきましょう。「甘いものはやめられない」と思い込まず、少しずつ減らしながら依存度を下げていくこと。そして、楽しむときには思う存分楽しむというメリハリをつけていきましょう。

そのために今日からできる工夫を紹介しておきます。

◉3日に一度の「休甘日」を作る

毎日甘いものを食べているのなら、頻度を見直しましょう。具体的には、3日に一度「休甘日」を作るところから始めるとよいでしょう。

◉飲料でとる甘いものは避ける

甘いものを飲料でとると吸収スピードが早く、血糖値が上がりやすいだけでなく、肝臓へのダメージも大きくなります。スムージーや乳酸菌飲料など、体によさそうなものを避けることでも余計な糖分の摂取を減らせます。ちなみに疲れたからといって飲む「エナジードリンク」は、大量のカフェインと糖が含まれます。カフェインに糖が加わると、糖だけよりも高血糖になるという報告があります(※)。

※Jane Shearer, et al. Nutrients. 2020;12(12): 3850.

ストレス自体を手放すことを意識して

◉週に一度、贅沢なスイーツを楽しむ

普段、コンビニなどで手頃な価格のスイーツを買うのなら、その分で1週間に一度のちょっと贅沢なスイーツにするのもいいですね。

記事画像

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◉買い置きしない

目の前に甘いものがあれば欲しくなるのは当然です。安売りをしているから、ちょっとずつ食べればよいなどの言い訳を作らず、お菓子やアイスクリームなどのストックはしないようにしましょう。

◉甘いものを食べたら記録に残す

甘いものを食べたらスマホで撮影するなど、記録に残すのもおすすめです。甘いものとの距離を知るよい手段になります

◉できたらほめる

「休甘日」を守れたとか、コンビニのスイーツコーナーに立ち寄らなかったとか、できたことがあれば些細なことでも自分をほめてください。そして、甘いものを減らすことで少しずつ、味覚が変化することもあります。そういうよい変化が表れたら、大いに喜んでください。

もし、甘いものに頼っていると気づいたときは、食べてしまう自分を責めるのではなく、“自分をいたわる時間が必要”だと思うようにしてください。多くの場合、根本的な原因に過剰な緊張感やストレスがあります。食べすぎる行為を責めずに、ストレス自体を手放す手段をゆっくりでいいので、探っていってください。

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提供元:肝臓専門医が警鐘「疲れたら甘い物」摂る人の盲点|東洋経済オンライン

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