メニュー閉じる

リンククロス シル

リンククロス シルロゴ

2023.10.05

便秘なら「食物繊維を摂ればOK」と考える人の盲点|むやみに糖質や油を制限すると排便に悪影響も


誰でもいますぐ取り組める、便秘予防や改善に効果がある方法やコツをご紹介します(写真:ほんかお/PIXTA)

誰でもいますぐ取り組める、便秘予防や改善に効果がある方法やコツをご紹介します(写真:ほんかお/PIXTA)

この記事の画像を見る(3枚) ※外部サイトに遷移します

多くの女性や高齢者が日々悩まされている便秘。世の中には「便秘に効く」とされる商品があふれ、ネット上にも、便秘予防や改善に関するさまざまな情報が飛び交っている。

消化器内科医で便秘治療に詳しい鳥居内科クリニック院長の鳥居明医師によると、食事や運動、マッサージ法、トイレの座り方など、誰でもいますぐ取り組めて、便秘予防や改善に効果がある方法やコツがあるという。詳しい話を聞いた。

便秘予防や改善に近道はなく、一朝一夕で効果が期待できる方法はない。だが、やってみる価値がある対策は存在する。

「“食物繊維の摂取”と“適度な運動習慣”によって、明らかに便秘の頻度が減少するというデータが出ています。つまり、便秘予防や改善には毎日の生活習慣の改善が大切です」

鳥居医師はそう話す。

食物繊維、摂り方のポイント

●食物繊維を摂る

食物繊維は便秘解消や便秘予防には欠かせない栄養素だ。不溶性と水溶性があり、不溶性食物繊維は野菜やイモ類などに多く含まれ、便の量を増やして便通をよくする働きがある。水溶性食物繊維は果物や海藻などに多く含まれ、便をやわらかくする働きがある。

(食物繊維については【痔の予防・改善】まずは3カ月、実践したい対策、をご覧ください)

【痔の予防・改善】まずは3カ月、実践したい対策 ※外部サイトに遷移します

ただし、食物繊維はただたくさん摂ればいいわけではないという。とくに、水に溶けにくい不溶性食物繊維は、便秘気味の人の症状を悪化させることもある。便秘のタイプによっては注意が必要だ。

「便秘の人は腸の蠕動(ぜんどう)運動などの働きが弱まっているため、不溶性食物繊維を摂りすぎるとお腹が張ったり、逆に便秘が悪化したりすることもあります。便秘気味でお腹が張りがちな人はなるべく不溶性食物繊維を控え、水溶性食物繊維を多めに摂ったほうがいいでしょう」(鳥居医師)

水分補給と油分摂取で便を軟らかく

●水分補給

便秘予防・解消には、食物繊維の摂取に加えて、こまめな水分補給や適度な油分の摂取も大切だ。「腸の働きは本来、正常なのに、そもそも水分の補給が足りなくて便秘になっているケースも少なくないです」と鳥居医師は言う。

便を軟らかくするのに欠かせないのは水分だ。便の硬さがほどよいバナナ状の便では、70~80%の水分が含まれている。それよりも多いと泥状になり、90%を超えると水様性の状態になる(いわゆる下痢便)。逆に70%よりも少ないと硬くなり、60%以下になると非常に硬い便になってしまう。

便をほどよい70~80%の水分量にするには、どのくらいの水分を摂ったほうがいいのか。

「目安は1日1.5リットルです。通常、食事で1リットル程度の水分を摂れるので、あと500ミリリットル程度を飲み水で補給しましょう。のどが乾いたらこまめに水分を摂ること。利尿作用のあるカフェイン飲料は避け、ウーロン茶、麦茶や黒豆茶、ルイボスティ、ハーブティなどのノンカフェインのお茶や水がいいでしょう」(鳥居医師)

季節による注意点もある。

暑い夏はたくさん汗をかくので、水分摂取を心がけていても水分が不足しやすい。一方、冬は逆に気温が低いので喉が渇きにくく、水分摂取の回数が減りがちになる。冬場はさらに、寒さで体が緊張して交感神経が優位になりやすく、便秘になりやすい状況も重なる。1年を通して、こまめな水分補給の工夫が必要だという。

鳥居医師がおすすめするミネラルウォーターのタイプがある。

「コントレックスなどの硬水です。マグネシウムを多く含むため、便を軟らかくし、胃腸の働きを高める作用があります。便秘の解消・予防に効果が高いので、便秘気味であれば試してみてもいいでしょう」(鳥居医師)

●油分摂取

便秘解消・予防には油分も重要だ。「オリーブオイルが便秘に効く」とちまたでよく聞く情報は「間違いではない」(鳥居医師)という。もちろん、カロリーオーバーになるので摂りすぎには注意が必要だが、オリーブオイルやゴマ油、サラダ油などの適量の油分は腸の蠕動運動を高め、便を排出しやすくする。

そのため、鳥居医師は「油抜きダイエットは便秘になりやすい」と警告する。

「ダイエットによって、便のかさになる食事だけでなく、油分も控えてしまうと、非常に便秘になりやすくなる。おすすめしません。ダイエット中も適度に油分は摂るようにしましょう」(鳥居医師)

糖質制限で便秘になる恐れも

昨今は、米やパンなどの主食を控える、いわゆる糖質制限をしている人も多い。「糖質制限を始めてから便秘気味になった」という声もよく聞く。

「糖質のなかにはグルコース、ガラクトースなど、腸の動きをよくする成分が含まれています。これらは便秘薬の成分にもなっているほど、排便に深くかかわっています。むやみに糖質をカットしてしまうと便秘になりやすくなるので注意しましょう」(鳥居医師)

●腸内細菌

日々の便通は腸内細菌とも関係が深い。腸内細菌には、体にいい働きをするビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌と、腸内で有害物質を作り、腸の働きを弱めるウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌がいる。善玉菌は悪玉菌の増殖を抑え、乱れた腸内細菌のバランスを整えてよりよい便通を促す。

善玉菌を増やすには、ビフィズス菌や乳酸菌が含まれるヨーグルトや乳酸菌飲料など善玉菌そのものであるプロバイオティクスの摂取が有効だ。手軽にそれらを摂取できるサプリメントなどを利用してもいいという。

善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やす働きがある食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスを同時に摂取するとさらに効果が高まる。

「ヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリもさまざまな種類が売られていますが、人によって体質に合うものと合わないものがあると思います。いろいろと試してみて、自分に合ったものを探してください。体質に合えば、2週間程度でお腹の調子の改善が見られ、便秘予防・解消効果が感じられると思います」(鳥居医師)

「便秘薬を使ってやせる」とうたう過激なダイエット法を、若者を中心に耳にすることがある。便秘予防の観点からはどうなのだろうか。

「便秘の治療目的ではないところで、センナなどの刺激性の便秘薬を使ってむりやり排便して一時的に体重が減ったとしても、ほとんどは大腸で吸収されなかった水分です。ダイエットとはいえません。むしろ、センナは常用していると、だんだん効きにくくなる恐れがあります」(鳥居医師)

●適度な運動

便秘予防・解消の生活習慣では運動も大切だ。「適度な運動は便秘薬に匹敵する」と鳥居医師は言う。

「腸の動きをよくしてお通じを促すのは、やはり運動です。昨今はリモートワークで家にこもりがちな人も多いと思いますが、なるべく何か用事を作って外に出ましょう」

記事画像

この連載の一覧はこちら ※外部サイトに遷移します

座りっぱなしの生活も問題だ。全身の血流が悪くなると腸の動きも悪くなって、便秘の原因になる。「腸を刺激するためにも、毎日5~10分でもいいので、歩いてほしいです」と鳥居医師。

便秘予防・解消には優位になった交感神経を鎮めることも大切だ。それには、ゆっくりした速度でのウォーキングなど、同じ動作の繰り返しが効果的だという。

「便秘予防としてのウォーキングでは、話しながら歩ける程度のゆっくりした速度がおすすめです。ゆっくりした速度で歩くと副交感神経が優位になり、心身のリラックスやストレス解消につながります。さらに、歩くという動作は骨盤を動かし、腹筋も使う。腸をほどよく刺激し、腸の運動を促進して、便秘の予防や改善につながります」(鳥居医師)

トイレは「考える人」のポーズを

便秘予防には、排便時の姿勢も大切だ。理想の姿勢はロダンの彫刻「考える人」の前傾姿勢だという。それによって、直腸と肛門がほぼまっすぐになり、肛門の括約筋も緩みやすくなり、排便しやすくなる。ちょっとした工夫で日々の排便はより楽になる。

●腸マッサージ

便秘解消に「腸マッサージ(腸もみ)がいい」という話も聞く。これも効果があるのだろうか。

「お腹のマッサージ(バウエルマッサージ)は、お腹の張りを改善するために医師も使う方法です。便やガスのたまりやすい腸の曲がり角を中心にやさしくマッサージすることで、たまっていたガスが動き、腸の動きがよくなります。便秘予防や解消にも有効です」と鳥居医師。

やり方としては、仰向けに寝て両ひざを軽く曲げて立てる。おへそを中心とした5カ所を、(1)お腹の右下、(2)右上、(3)左上、(4)左下、(5)お腹の真ん中(おへその下)の順にやさしく押していく。お風呂上がりなどリラックスしているタイミングがより効果的だそうだ。

お腹のマッサージのやり方。鳥居医師への取材を基に編集部作成(イラスト:imacvery/PIXTA)

お腹のマッサージのやり方。鳥居医師への取材を基に編集部作成(イラスト:imacvery/PIXTA)

「便秘気味であれば、このマッサージを毎日の習慣にするといいでしょう。そして、なるべくストレスをためないこと。朝食後にトイレに座る排便習慣をつけることも大切です。それでも便秘で困っていたら、早めに消化器内科や便秘外来を受診してください」(鳥居医師)

(取材・文/石川美香子)

記事画像

鳥居内科クリニック院長
鳥居 明医師

医学博士。内科・消化器科・アレルギー科鳥居内科クリニック院長。日本内科学会認定医・日本消化器病学会専門医・日本消化器内視鏡学会専門医・日本医師会認定産業医・日本医師会認定健康スポーツ医。東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学院博士課程修了。神奈川県立厚木病院医長、東京慈恵会医科大学附属病院診療医長、東京慈恵会医科大学助教授を経て、鳥居内科クリニックを開設。現在、東京都医師会理事。
主な監修書に『図解よくわかる 過敏性腸症候群で悩まない本』(日東書院本社)。

記事画像

【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

【治らない副鼻腔炎】実は指定難病、嗅覚低下も

【男性更年期】30代でも発症、気付きのサイン6つ

【血糖値】平気で丼物食べる人に起こる悲劇

提供元:便秘なら「食物繊維を摂ればOK」と考える人の盲点|東洋経済オンライン

おすすめコンテンツ

関連記事

【医師監修】脂質異常症になったら食べてはいけないものってあるの?~コンビニ食の活用方法の解説付き~

【医師監修】脂質異常症になったら食べてはいけないものってあるの?~コンビニ食の活用方法の解説付き~

高齢者の交通事故、増加の要因は「認知症」ではない|「脳ドックデータ」で判明した大きな事実誤認

高齢者の交通事故、増加の要因は「認知症」ではない|「脳ドックデータ」で判明した大きな事実誤認

医師が指摘「悩みから解放されにくい人」3つの特徴|不安、イライラ…日々のストレスが認知症を生む

医師が指摘「悩みから解放されにくい人」3つの特徴|不安、イライラ…日々のストレスが認知症を生む

口も老化するって本当?オーラルフレイルを予防しよう

口も老化するって本当?オーラルフレイルを予防しよう

戻る