2023.09.30
夏から秋の変わり目で「体調が崩れる人」の特徴|自律神経と基礎代謝、体の中で何が起こっている?
季節の特徴を知り、次の季節のために早め早めに準備していくことが、1年を通して元気でいるための秘訣です(写真:アン・デオール/PIXTA)
夏から秋へ――。季節が移り変わるタイミングで体調不良に陥ってしまう人がいます。その原因は、からだの体温調節を受け持つ「自律神経」にあります。自律神経の名医と気象予報士が天気を味方につける方法を探った『天気に負けないカラダ大全』から一部抜粋、再構成してお届けします。
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季節によっても自律神経の働きは変化する
暑さ寒さと密接に関係している自律神経は、季節によってもその働き方が変化します。
春から夏までは、副交感神経が優位。気温が上昇する季節は、体内の発熱を抑える必要があるため、心臓の動きをゆっくりにさせる副交感神経が働きます。
秋から冬までは、交感神経が優位。寒い季節は、体内から熱が逃げないように血管を収縮させたり、心臓の動きを早めて熱を作り出すために交感神経が働きます。
季節と自律神経の働きだけを見ると、「夏は活動的になって気分も上がるのに、リラックスモードの副交感神経が優位なの?」と感じるかもしれません。
夏に活動的になるその理由は、気圧と気温の安定、そして、わくわくする予定にあります。
夏はゲリラ豪雨をのぞけば、上空を高気圧が覆っていて気圧は安定しています。気温が高くて一日をアクティブに過ごすとヘトヘトにはなりますが、朝晩の寒暖差が激しいということもありません。
変化が苦手な自律神経にとって、気圧と気温の変化が少ない夏は、自律神経が安定しやすく、トータルパワーが高まることによって活動的になれるのです。
ただし、夏を活動的に過ごしすぎて自分をいたわることを忘れてしまうと、秋以降にその反動がやってきます。季節の特徴を知り、次の季節のために早め早めに準備していくことが、大きく体調を崩すことなく、1年を通して元気でいるための秘訣ということを覚えておきましょう。
季節の変わり目に体調を崩しやすい理由
冬から春へ、暖かくなるのが待ち遠しいのに、毎年なんだか体調を崩しがち。夏から秋へ、暑さがやわらいで体はラクなはずなのに、気分が落ち込む。季節が移り変わる時期に限って、風邪をひいたり、眠りが浅くなって疲れが抜けなかったり、気分が安定しなかったりでモヤモヤ、イライラ……。
「今日から夏です!」と宣言でもしてくれれば救われる人はたくさんいるのに、実際はそうではありませんよね。季節は暑い日と寒い日、あるいは、晴れと雨を繰り返しながら徐々に移り変わっていきます。
冬から春など、異なる季節の空気と空気がせめぎ合うところには「停滞前線」が発生します。その名の通り、停滞して動かず地上に雨を降らせ、季節の変わり目に天気をぐずつかせます。
このぐずつく天気には名前があって、春から夏へと季節が移り変わるときの「梅雨」、夏から秋への「秋霖」、秋から冬への「山茶花梅雨」、冬から春への「菜種梅雨」と、季節にちなんだネーミングになっています。
日本の四季は、大小の梅雨によってつながれている。だから、季節の変わり目には体調が安定しにくいのです。自律神経にとっては、季節の変わり目により多くの労働を強いられることになり、いってみれば疲弊した状態に陥ります。
(出所:『天気に負けないカラダ大全』より)
その結果、自律神経のトータルパワーが低くなったりバランスが崩れたりして、頭痛、肩こり、便秘など、病院へ行っても診断のつかない不調、いわゆる不定愁訴が出やすくなってしまいます。
基礎代謝も季節によって変化する
季節の変わり目には体調が安定しにくい理由のもうひとつが、自律神経とも深く関わっている「基礎代謝」です。
基礎代謝とは、生命を維持するために、体を休めているときにも心臓を動かし、体温を維持するのに必要なエネルギーのこと。この基礎代謝も年間を通して一定ではなく、自律神経の働きとともに季節によって変化します。
外気温の高い春から夏は、体温維持のために生み出すエネルギー(熱)が少なくてすみ、リラックスモードである副交感神経の働きによって体全体の活動量が抑えられているため、基礎代謝は低くなります。
寒くなる秋から冬は体温を一定にキープするために、体内でたくさんのエネルギーを生み出す必要があり、アクティブモードである交感神経が強く働くことで基礎代謝は高くなります。
自分では意識することのない基礎代謝ですが、実は、体感として誰もが感じ取っています。基礎代謝の低い夏では、20度という気温は、少し涼しく感じます。基礎代謝の高い冬では、20度といったら、かなり暖かく感じます。
同じ気温でも感じ方に差があるのは、基礎代謝の違いによるものだったのです。そして、この基礎代謝の季節による違いが冬から春、夏から秋へ季節が移り変わるとき、私たちを悩ませます。
たとえば、冬の間は交感神経の働きで体の熱を逃がさないようにしつつ、基礎代謝を高めてエネルギーを生み出しています。
でも、2月のある日、「春一番」とともに日中の気温が23度まで一気に上昇! 冬対応の体は必死に暑さに対応しようと副交感神経をせっせと働かせますが、いかんせん基礎代謝が高いので、5月の20度は快適でも冬の20度超えはとても暑く感じ、コートの中は汗ばむほどです。
自律神経は大忙し
ところが一転。夜になるとひとケタまで気温は急降下。ついさっきまで春がきたと思っていたのに、季節は真冬に逆戻り。自律神経は大忙しで、対応に大わらわです。
こんなことが、季節が移り変わる間、何度も繰り返されます。これ以上の説明をしなくても、体が悲鳴を上げている様子が目に浮かびますね。
季節が夏から秋、秋から冬へと向かうときにも、体の内側では同じようなことが起こっていますが、どちらかというと、春から夏へ、寒さから暑さへと体を馴染ませている時期のほうが不調を感じる人が多いようです。
これには、自律神経の特性が関連していると考えることもできます。自律神経とひと言で表現していますが、実は、交感神経と副交感神経で働きが違うだけではなく、体の中でも異なるルートで働いています。
寒さから暑さに慣れる方が負担が大きい理由
交感神経は、脊髄の末端にある胸髄(胸のあたり)や腰髄(腰のあたり)から出ていて、体が危険を察知したときなどには素早く反応します。
対する副交感神経は主に脳の中枢から出ていて、じわじわと時間をかけて反応します。
一瞬にして緊張することはあっても、一瞬でリラックスはできませんね。マッサージでもアロマの香りでも、あぁ心地よいなと感じてからゆっくりと緊張がほぐれていくことからも、それぞれの働きがわかると思います。
先ほどの話に戻すと、春から夏は副交感神経の働きが高まりますが、季節が体に馴染むのにもじんわりと時間がかかり、これが体調を崩しやすい原因になっているとも考えられます。
また、副交感神経はその出発点やルートなどのために、五感からの刺激や感情による影響を受けやすいのですが、季節の変わり目にはそれぞれの梅雨があり、不快な感情を抱きがちです。
ポリヴェーガル理論という新しい自律神経の捉え方では、人との交流が減り、感情が動く機会が少ないと、自律神経の一種である腹側迷走神経の働きが落ちてしまうともいわれます。
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季節の変わり目の梅雨の時期は、出歩く機会や人との約束が減ってしまうことで、副交感神経がうまく働かないということもまた、体調に影響を与えていると考えられます。
ここからは余談ですが、基礎代謝や自律神経の働きによって、食欲も影響を受けています。
秋から冬にかけて、体は交感神経の働きで心臓の動きを早め基礎代謝を高めているので、エネルギーのもととなる食べ物をたくさん必要とします。
だから「食欲の秋」は必然であって、おいしいものがたくさんある味覚の秋に食べるのを我慢するなんて、本当はしないほうがいいのです。
冬はたくさん食べても太りにくい
さらにいうと、基礎代謝の低い夏の間はさっぱりとカロリーの低い食べ物を好みますが、秋から冬はカロリーの高いものが食べたくなります。
たとえば、夏の冷やしうどんは、大根おろしにすだちを利かせてさっぱりいただくのに対し、冬は鍋焼きうどんのように味付けも濃いめでたくさんの具材が欲しくなります。
体のメカニズムから考えれば、冬は夏に比べてカロリーの高いものを食べても基礎代謝が高いので太りにくいといえます。頭で考えるより、本能に従ったほうが健康でいられそうですね。
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提供元:夏から秋の変わり目で「体調が崩れる人」の特徴|東洋経済オンライン