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2023.09.25

定年後に陥りやすい「負の思考」を持つ人の共通項|「こうあるべき」を捨ててもっと自由に生きよう


なぜ、定年が老人性うつのきっかけになりやすいのでしょうか(写真:C-geo/PIXTA)

なぜ、定年が老人性うつのきっかけになりやすいのでしょうか(写真:C-geo/PIXTA)

65歳以下の人がうつ病になる割合はおよそ3%。それが定年を迎える65歳以降になると5%に急増するといわれています。老後への不安やストレス、加齢とともに幸せホルモン・セロトニンが分泌されにくくなること、感情をコントロールする前頭葉が萎縮することなどがその原因です。

しかし人生100年時代では、65歳はまだ後半が始まったばかり。いわば人生の黄金期です。

ベストセラー『80歳の壁』の和田秀樹さんが、不安やストレスのもとを消し去り、心を若く機嫌よく保つことで、うつや認知症を寄せつけないための《50の「気づき」》を提言する新刊『65歳から始める 和田式 心の若がえり』より、一部を紹介します。

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定年後にうつには理由がある

◎定年退職は自分の居場所も人間関係も失う最悪な制度

「定年後にうつになる人が多いんだよなぁ」

というのは、精神科医なら誰もがする話です。もともと、セロトニンの分泌量が低下しているところに、定年退職がきっかけとなって老人性うつを発症する人たちは、非常に多く見られます。

それほど定年制とは、心の健康において最悪の制度です。まるで理にかなっていない、おかしな制度なのです。

まだ能力があって会社に貢献できる人材でも、65歳、もしくは70歳になると、一律に解雇する会社がいまだに多いのは、年齢による差別制度といえます。こんな前時代的な制度が、日本という国にはまだあるのです。

「人の心を無用に苦しめる制度なんぞ、なくしてしまえ!」

と、精神科医として日々叫んでいますが、残念ながら、社会はどうにも変わっていきません。

ではなぜ、定年が老人性うつのきっかけになりやすいのでしょうか。それは、長年、仕事で積み上げてきたものを1日で喪失するからです。

古典的な精神分析の考え方では、うつ病の最大の原因は、「対象喪失」とされています。愛する対象を失ったときに、人間は心理的に不安定になり、うつ状態に陥ります。その状態が2週間以上続いたとき、「うつ病」と診断されます。

定年後にうつになる人が多いのは、会社を離れることが対象喪失になるからです。熱い想いを持って長年勤めてきた会社を去ることになるため、居場所も人間関係も一気に失い、それが心に大きなダメージを与えてしまいます。

心の支えが一気になくなる

一方、現代的な精神分析では、「自己愛喪失」が心の健康に最も悪影響を及ぼす、としています。自己愛喪失とは、自己愛が満たされないこと、あるいは自己愛を満たしてくれる対象を失うことです。

具体的には、自分の働きを認めてくれる人、自分を尊敬してくれる人、自分の心の支えになる人、自分が同じ仲間と思える人などを失うことが、自己愛喪失になります。定年退職を迎えると、これらを一気に失うことになります。

このように、定年退職は、対象喪失と自己愛喪失がダブルで押し寄せてくる、心の健康において最悪の状況を生み出しやすいのです。

◎65歳を過ぎたら「自分がやりたいことをやる」

ところが、定年退職という最悪な制度も、自分の考え方を変えると、最高の制度に見えてきます。

よく考えてみてください。定年退職は、それまでの束縛から解放されて、「自由を手に入れる」という最良の機会とも考えられます。

65歳は、老いてきてはいるものの、体力・気力は十分にあり、試せることはたくさんあります。むしろ、時間的な余裕が増えるぶん、できることも増えていくでしょう。この先、20年も30年も生きることを考えれば、その数は無限大です。

そこで、65歳以降のご自身に対して、1つルールを設けてはいかがでしょうか。「65歳を過ぎたら、自分がやりたいことをやる」というルールです。

現役時代は、社会のルールに従って生きてきました。しかし、現役を引退したのちは、あなたを縛るものはもう何もなく、1人の人間としての自由を謳歌できます。

年齢を重ねてまで、嫌なことをする必要はありません。取り返しがつかなくなるような大バクチ以外のことなら、なんでも気軽に試してみましょう。そうすることで、新たな刺激を前頭葉に与えられます。

セロトニンの分泌が減っていく65歳以降は、なんでもやりたいことをするようにしないと、人生を楽しむ意欲など湧いてこないのです。

◎「自分はこうあるべき」の理想が自身を追い込む

心の老い支度では、物事の受け止め方を変えていくことが大切です。

前頭葉が老化すると、物事の「決めつけ」が激しくなります。この物事を決めつける思考は、「かくあるべし思考」となって現れます。物事を「こうあるべし」と決めつけ、それに反することが許せず、不安を高めていく思考のあり方です。

たとえば、定年退職によって長年続けた仕事を辞めて、家にいる時間が長くなると、「オレは、もう社会から必要とされていない人間なんだ」と、自分を過小評価してしまう人がいます。

これは、「人間は働いて、人の役に立ってこそ、価値がある」という、「人とはこうあるべき」との決めつけによって起こる不安な感情です。

では、「人は働くのが当たり前」とは、誰が決めたのでしょうか。自分で「そうあるべき」と決めつけているだけ、それを常識と思い込んでいるだけのことなのです。

「かくあるべし思考」を捨てる

65歳を過ぎると、体力も徐々に落ち、若い頃と同じようには動けなくなります。そのとき、自分を「ふがいない」と思ってしまうのは、「動けるのが当たり前」と思い込んでいるからです。

このように、「自分はこうあるべき」という理想があり、その理想に囚とらわれていると、体力が落ちていく自分を情けなく感じてしまいます。
この「ふがいない」という感情は、「老いたら衰えるのが当たり前」ということを上手に受け入れられていないことの表れでもあります。

「かくあるべし思考」のように、人間の判断をゆがめてしまう思考パターンを「不適応思考」と呼びます。この不適応思考を持つ人は、精神的な落ち込みが強くなり、老人性うつを発症しやすくなります。

では、人はどうして不適応思考を抱いてしまうのでしょうか。それは、自分への要求水準が高い、いわば、頑張り屋さんだからです。自分への要求が高いぶん、「頑張らなければいけない」と自分を追い込み、それができなかった場合、自分自身を情けないと感じます。

このように「かくあるべし思考」は、自分の考えで自分を縛るゆえに、思考が悲観的になっていくのです。

◎「ポジティブ思考」よりも「別の可能性」を考えてみる

悲観的になっている患者さんのお話を聞くとき、私は「そういう考え方もありますが、そうとも限りませんよね」と、別の視点を持つようにアプローチしていきます。この「別の視点を持つ」というアプローチは、私が精神科の治療で行っている「認知療法」の基本的な考えの1つです。

認知療法とは、本人が自分の思考の偏りを「認知」することによって、うつ病などの症状の改善を目指す療法です。この療法を行うことで、ネガティブ思考やマイナス思考など、否定的な考え方のクセを変えていくことができます。

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たとえば、定年退職後に、「自分は必要とされていない存在だ」とネガティブに捉えると、思考が悪い方向に進み、不安が強くなっていきます。

ただ、ネガティブ思考に陥っているとき、「もっとポジティブに考えましょう」といわれても、そううまく切り替えられません。そこで大切になるのが、「別の可能性を考える」ことです。

すべての物事には二面性があります。一見すると悪い出来事も、別の見方をするとよいことが必ずあります。たとえば、「仕事が生きがいだったのに、定年を迎えてしまった」と思ったとき、「これからは好き勝手に生きていける」というよい面を見つけられるかもしれません。

このように、「悪い面」の裏に隠れた「よい面」を見つけられると、心がフッと軽くなります。ぜひ、取り入れてみてください。

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提供元:定年後に陥りやすい「負の思考」を持つ人の共通項|東洋経済オンライン

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