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2023.08.26

【痔の予防・改善】まずは3カ月、実践したい対策|おしりにやさしいシャワートイレの使い方は?


痔にならないために気をつけるべきポイントは、トイレの使い方にもあるようです(写真:KY/PIXTA)

痔にならないために気をつけるべきポイントは、トイレの使い方にもあるようです(写真:KY/PIXTA)

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いつも朝食は食べず、朝はゆっくりトイレに座る時間もない……。そんな生活習慣を続けていると、今後、痔になってしまう可能性があるかもしれない――。さらに食生活、シャワートイレの使い方、おしりの拭き方などによっても痔のリスクを高め、すでに痔がある人も症状を悪化させる可能性があるという。
コロナ禍で外出が減り、リモートワークが増えて一日中座りっぱなしの生活を余儀なくされた結果、密かに痔を抱える人が激増したともいわれている。肛門科専門医の平田雅彦医師に痔にならないための習慣、気をつけるべきポイントについて聞いた。

コロナで「痔主」が増えた?

「コロナ禍で家に閉じこもって動かない生活をしていたら、痔になってしまったという患者さんがたくさんいます」(平田医師)

コロナ禍では運動不足が大きな社会問題になったが、その裏で痔の患者数も大きく増えているという。とくに、それまで通勤や通学で毎日4000~5000歩は歩いていたのに、リモートワークによってそれが0になってしまった、というケースが多い。

そもそも「痔は高血圧や糖尿病、肥満などと同じ生活習慣病」と平田医師は言う(関連記事:【痔】生活改善で治る人と手術が必要な人の違い)。過度な疲労やストレス、不規則な食生活や睡眠不足のほかに、運動不足も痔にとってはリスクとなる。いま、明らかに運動不足という人は、今後、要注意といえる。

関連記事:【痔】生活改善で治る人と手術が必要な人の違い ※外部サイトに遷移します

●体を動かす

痔の予防には運動習慣が大切だが、室内でできる運動でも予防効果があるという。

「1日5000歩程度歩くのが理想ですが、室内でできる運動でもいいでしょう。例えば、片足ずつ1歩踏み出して行うスクワット(下のイラスト参照)20回を1日2セット。まっすぐ立った姿勢から、ひざを少し曲げて腰を落とし、ゆっくりとひざを伸ばす軽スクワットを朝晩50回ずつ。それらを毎日行うだけでも全身の血行がよくなり、痔の予防になります。もちろん便秘も改善します」(平田医師)

片足ずつ1歩踏み出して行うスクワット(画像:yoshi/PIXTA)

片足ずつ1歩踏み出して行うスクワット(画像:yoshi/PIXTA)

●座る時間を短くする

平田医師がとくに危惧するのは、座りっぱなしの生活だ。座っている状態が続くと全身の血液循環が悪くなるだけでなく、肛門周りもうっ血して炎症が起きやすくなるため、痔になりやすい。1時間に1回は立ち上がって動いたほうがいいそうだ。

「座る時間は最長でも1時間にとどめ、1時間おきに10メートル程度歩きましょう。時間の経過がわかるように、スマートフォンやキッチンタイマーを1時間にセットして鳴らすのもいいですね」(平田医師)

朝の過ごし方で快便生活を

●便秘を予防する

痔の予防では便秘の予防が必ずセットとなる。便秘が痔を引き起こし、さらに痔を悪化させる要因にもなるからだ。とくに便秘を予防するためには、朝の過ごし方が重要だという。

通常、私たちが朝、目が覚めて布団やベッドから起き上がると、その刺激で大腸の蠕動(ぜんどう)運動が始まる(起立反射)。さらに、からっぽの胃の中に水や食べ物が入ってくると、その刺激によって腸が動き出し、便が直腸に運ばれて便意を感じる胃・結腸反射を起こす。

「朝は、この起立反射と、胃・結腸反射がもっとも強く起こりやすいときです。起き抜けにコップ1杯の水を飲んだり、ある程度ボリュームのある朝食をきちんと食べたりするだけでも、健康な人なら自然な排便は起こるものです」(平田医師)

朝食を毎日ちゃんと食べない人だけでなく、朝、時間がなくてトイレに座る暇がないという人も要注意だ。

ゆとりをもって起床し、朝の時間を確保して、便意がなくても毎朝トイレに座る習慣をつけておきたい。よい排便時のイメージを覚えておいて、普段からイメージトレーニングをしておき、毎朝トイレで試みる。それが便秘予防の第一歩だという。痔と便秘の予防には、まずは朝の過ごし方から見直そう。

痔を防ぎ、おしりにやさしいトイレの使い方についても聞いた。

理想的は排便スタイルとは?

理想としては、トイレには時間をかけず、いきまず、するりと排便できることが大切だという。

「“ロダンの考える人のポーズ”、まさにあれが理想的な排便スタイルです。あの前傾姿勢をとれば、直腸がまっすぐになるので排便しやすい。身長の低い人なら、前傾姿勢をとりやすくするために足元に台を置いてもいいでしょう」(平田医師)

ロダンの考える人(イラスト:morihito/PIXTA)

ロダンの考える人(イラスト:morihito/PIXTA)

トイレタイムの過ごし方はどうだろう。

トイレにはスマートフォンや本などを持ち込んで、それらを見ながら排便するのが習慣になっている、という人もいるかもしれない。平田医師によると、それは非常にリスクの高い行為だと指摘する。

「実は、便座に腰かけただけでおしり周りの血圧は150mmHgぐらいに上がります。さらに排便でいきむと200mmHgぐらいまで上がってしまう。おしりをうっ血させ続けることは痔を悪化させる直接的な行為です。トイレには長居せず、3分座っても便が出なかったらトイレから出るようにしましょう」(平田医師)

シャワートイレの普及で、シャワートイレの使用がトイレ習慣の1つになっている人も多いだろう。

注意すべきは、シャワートイレの水流の刺激で排便を促すクセがついている人だ。シャワーの刺激に依存すると、シャワーなしには排便できなくなるという。排便後に長く洗う人も肛門周辺に強い刺激を与えてしまい、結果、粘膜を傷めて痔になりやすくしてしまう。

ただし、「シャワートイレの使用自体は悪くない」と平田医師。要はその使い方次第なのだという。

「汚れは水で洗ったほうがよく落ちます。ゴシゴシとトイレットペーパーでこするよりもいい。おすすめは、できるだけ弱い水圧モードにして5~10秒程度おしりを洗う。その後は紙でやさしくポンポンと水分を拭う。そうした使い方なら粘膜を傷つけず、問題はないでしょう」(平田医師)

便秘を防ぐには食生活の改善も必須となる。とくに食物繊維の多く含まれた食材を摂ることが重要だ。

食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類がある。

不溶性食物繊維は腸に刺激を与え、腸の蠕動運動を促して便秘を防ぐ。水溶性食物繊維はほどよく水分を含んだ理想的な軟らかさの便を出すのに役立つ。便秘予防にはどちらの食物繊維も大切だ。

不溶性食物繊維を多く含む食材には豆類、いも類、穀類、野菜類などがある。水溶性食物繊維を豊富に含む食材は寒天やわかめなどの海藻類、こんにゃくや果物類などだ。食物繊維に加え、納豆や味噌、漬物などの発酵食品も腸内環境を整えるには大切だという。

「昔は夏場によく、ところてんを食べていましたが、夏は汗をかいて体の水分がうばわれやすく便秘になりやすい。海藻類のところてんは便秘予防に効く食材。昔からの生活の知恵ですね」(平田医師)

食物繊維をたくさん摂るには?

ちなみに、日本人の食物繊維摂取の目標値は成人男性で1日あたり20グラム以上、成人女性で18グラム以上だ。近年、食物繊維の摂取不足が叫ばれているが、この目標値の達成はけっして簡単ではない。

「和食を中心に食べていれば、食物繊維はそれなりに確保できるでしょう。さらに摂取を増やすなら、主食のお米に押し麦や寒天を混ぜるとか、サラダは海藻サラダにする、デザートに寒天ゼリーを食べる、などの工夫をするといいでしょう」(平田医師)

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いまは献立を入力すると食物繊維量や栄養素を自動計算してくれるスマートフォン用アプリも出ている。ぜひ活用しよう。

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痔や便秘予防のために運動習慣や食生活の改善を続けていくと、結果的に糖尿病や高血圧、肥満などの改善や予防にもつながっていく。

また、生活習慣の改善で本来の免疫力を発揮できるようになれば、肛門の粘膜も外部からの細菌やウイルスを撃退し、おしりの状態は自然とよい状態が保たれる。痔は予防できると話す。

「大事なのは日々の積み重ねです。自分の体からのメッセージによく耳を傾けながら、免疫力を高めていきましょう」(平田医師)

(取材・文/石川美香子)

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平田肛門科医院院長
平田雅彦医師

日本大腸肛門病学会肛門領域指導医。「手術をしないで治す」を信条とする肛門科専門医。1981年に筑波大学医学専門学群卒業後、慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。1985年に社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医となる。現在は、1935年開院の平田肛門科医院の3代目院長。ストレスマネジメント、食事指導、排便イメージトレーニングなど心身両面の生活指導を実施。本来持つ自然治癒力を最大限に引き出しながら、延べ40万人以上の患者を改善に導く。

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提供元:【痔の予防・改善】まずは3カ月、実践したい対策|東洋経済オンライン

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