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2023.08.03

7時間未満の睡眠が続くと「人は太る」という根拠|代謝に影響を与え、体はエネルギーを蓄えに走る


世界のさまざまな国や地域で大規模集団を対象に実施された調査で、睡眠時間が7時間未満の人は過体重や肥満になるリスクが高まることがわかっている(写真:プラナ/PIXTA)

世界のさまざまな国や地域で大規模集団を対象に実施された調査で、睡眠時間が7時間未満の人は過体重や肥満になるリスクが高まることがわかっている(写真:プラナ/PIXTA)

日本人は平均すると1日に6時間35分ほど寝ている。国際平均からは45分短く、働き者の日本人らしい数字だが、それでも生活の3割弱は寝て過ごしている計算となり、いかに快適な睡眠を取れるかが人生の豊かさにも直結する。

スウェーデン・ウプサラ大学の神経学者と健康問題を20年追ったヘルスジャーナリストが、人間の生活に欠かせない睡眠のさまざまな謎を解き明かした『熟睡者』から一部抜粋、再構成してお届けする。

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「体型」は目を閉じている間に変わる

世界のさまざまな国や地域で大規模集団を対象に実施された調査で、睡眠時間が7時間未満の人は過体重や肥満になるリスクが高まることがわかっている。それだけではない。調査期間中にはけっして太りすぎではなかった人たちも、長期的には過体重や肥満になりやすいことが判明しているのだ。

可能なかぎり正しい結論を導き出すべく、複数の研究結果を統合して比較リサーチするメタ分析も実施されている。それによると、一晩の睡眠時間が7時間未満の人は、7〜8時間(つまり、ほんのわずか睡眠時間が長いだけ)の人に比べ、肥満となるリスクが50%上昇することが明らかになった。

あなたの周囲にはいないだろうか、大食漢にもかかわらず、しかもほとんどスポーツもしないのにまったく太らない人物が。

「不公平だ」と感じる人もいるだろう。いや、実際に不公平なのだ。

これらの人はおそらく食料の利用効率が悪く、栄養を燃料にうまく変換できない。その代わり、栄養の大半を熱に変える。いわゆる「食事誘発性熱産生」が高く、食べ物から得られるエネルギーの多くがもっぱら体熱として消費されるため、簡単には体重が増えない。

太りすぎに悩む人は、これと正反対のことが起こる。より多くのエネルギーを脂肪という形で蓄え、放出する熱の量が少ない。つまり食事誘発性熱産生が低いのだ。

石器時代なら、後者の人のほうがうらやましがられたにちがいない。食料が簡単には手に入らず、規則正しく食事をとるのが当たり前でなかった時代、エネルギーを蓄えられるのは、進化にとって利点だった。

大昔には食料を求めて長い道のりを進まねばならなかったことから、私たちの体はそもそも、エネルギーを消費するより蓄えるように設計されている。食べ物がいつでも手に入る今日の社会とは、状況がまるで違う。本来、狩りに出て、木の実や果実を採集するように作られた人類の体は、食べ物がたくさん詰め込まれた冷蔵庫がいつも目の前にある状況に、そう簡単には適応できない。

そのせいで私たちの多くが、つねに体重増加の危険にさらされているのだ。

就寝の直前にしっかりとした食事をとったり、夜遅くにたっぷり間食したりすると、摂取したエネルギーはそのまま脂肪貯蔵庫に送られてしまう。そんな食生活を長く続けたら、体重増加は避けられない。

睡眠不足が代謝に影響を与える

代謝は1日を通して変動する。そのため食事は代謝のピーク時、つまり日中に摂取することを勧めたい。

その一方で、代謝は睡眠によっても、正確にいえば睡眠不足からも影響を受ける。ただし睡眠不足に左右されるのは、基礎代謝ではなく食事誘発性熱産生だけ。一晩睡眠が不足すると、翌朝の熱産生量が約20%低下する。別の言い方をすれば、寝不足の後の体は、より多くのエネルギーを蓄えようとするのだ。

このことは、著者がドイツの研究者たちと行った実験でも確認されている。

体は、よく眠れなかった夜のエネルギー消費量が通常よりも多かったことを記憶し、食事から得られるエネルギーを蓄えることでこれを補おうとする。このような状況に置かれた脳は、「昨夜のような大量のエネルギー消費を経験したからには、将来同じような夜が訪れたときに備え、何が何でもエネルギーを貯蔵しておかなければ」と考えるのだ。

要するに、体重の増加は摂取カロリー量だけの問題ではない。代謝が一日中いつでも同じように効果的に機能するわけではないことから、食事をいつとるかも重要だ。

一定時間断食をするインターバル・ファスティングが多くの人に効果があるのも、そのためではと推察できる。たとえば、朝8時から18時の間に食事をとり、18時から翌朝8時まで、つまり代謝が休憩をとる時間帯にエネルギー摂取を休止することで、腰まわりに脂肪がつきにくくなるというわけだ。

1度や2度、熟睡できなかっただけなら、長期的に深刻な影響をもたらすことはおそらくないだろう。

だが、しょっちゅう睡眠トラブルに悩まされている場合は、いずれ体重増加の問題が起こる可能性がある。

寝不足だと「大きいもの」が食べたくなる

よく眠れなかった夜のあとにエネルギー消費を節約するために、私たちの体はもう1つのトリックを使う。

たとえば、翌日に運動やそのほかのエネルギーを消耗する活動を避けようとするのだ。体を動かしてもすぐに疲れを感じるので、自然に運動量が減る仕組みだ。

慢性的な睡眠不足による体重増加の原因は、以上のように食事誘発性熱産生量の低下と身体活動の減少と相まった、摂取カロリーの増加と不健康な食生活にある。

後者については、著者ベネディクトらが詳しい研究を行っている。被験者グループをウプサラ大学に招き、睡眠不足の翌日に被験者たちがどのような食事を欲するか調査を行った。

まずコンピュータの画面上に、さまざまな食べ物を表示する。いずれも複数のサイズが用意され、実験参加者たちには、希望する食べ物に加え、満腹感が得られそうなサイズを選択してもらった。

すると、徹夜をした被験者は、7〜8時間の睡眠をとった対照グループに比べ、より大きなサイズの食事を選んだ。脳が一晩中起きていて、翌朝その分のエネルギーを渇望することを思えば、さほど驚くような結果ではない。

その後、実験参加者全員に、ヨーグルトとオートミール、ハムやチーズを挟んだパンという朝食セットが提供された。食後に、満腹になったかどうかを尋ねたところ、全員がイエスと答えた。

この後、もう一度、コンピュータ上で先に選んだ食事の量を見直し、あらためて理想的なサイズを回答してもらった。すると、睡眠をとらなかった実験参加者たちは変わらず、十分に睡眠をとった人たちよりも大きめのサイズを選択し、しかもファストフードを好む傾向が顕著だった。朝食後に満腹だと答えていたにもかかわらず、だ。

7時間未満睡眠では「甘いもの」に抗えない

アメリカでも同様の研究が行われていて、睡眠時間が短い人、具体的には一晩の睡眠時間が7時間未満の人は総じてより多くの糖分をとり、食物繊維の摂取量が少ないという結果が出ている。

スウェーデン人研究者とドイツ人研究者、そして著者による別の共同研究では、被験者は1回目の実験では眠ることを許され、2回目の実験では徹夜を強いられた。それぞれの翌朝、被験者たちに300スウェーデン・クローナを渡し、「食べ物を買ってきてください。明日はすべての店舗が休業するという前提で、全額を使ってきてください」と伝え、買い物に行ってもらった。

さて、何を買ってきただろうか。予想どおり、徹夜明けの被験者たちは、たっぷり眠ったあとに比べ、脂肪分が多く、甘く、カロリーの高い食品を購入した。これは進化の観点で見れば、非常に賢い選択だ。よく眠れず、目が覚めている間に多くのエネルギーを消耗したときには、脳に再び十分な燃料を補給しなければならない。

この研究結果は、睡眠不足が食事の量だけでなく、食事内容にも影響を与えることを示している。

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満足に眠れないまま朝を迎え、ビュッフェで朝食をとる場面を想像してほしい。何回、おかわりすることになるだろう。そのうえ、お皿にはオートミールではなく、厚くて甘いパンケーキが盛られるにちがいない。

睡眠不足の日に食料品の買い出しに行ったなら、何がカートに放り込まれることになるだろうか。果物や野菜コーナーよりも、ケーキのカウンターやお菓子売り場のほうが魅力的に感じられる可能性が高く、高カロリーの食べ物でいっぱいの買物袋を抱えて家路につくことになる。

その結果、自分自身の体にダメージを与え、体重を増やすだけでなく、家で待つ子どもたちも冷蔵庫の中の牛乳や水の代わりに、買い物袋の中のジュースを欲しがるだろう。

それもこれも、あなたの睡眠が足りなかったばかりに……。

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提供元:7時間未満の睡眠が続くと「人は太る」という根拠|東洋経済オンライン

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