2023.05.30
五月病の抜け出し方をまとめました~原因や症状を臨床心理士が解説~
当記事を監修した専門家:臨床心理師・公認心理士 石倉美希、編集長 森下りの(詳しいプロフィールはこちらをご覧ください) ※外部サイトに遷移します
五月は気候もよく、気持ちのよい季節ですね。
新年度を迎えて、新しい環境で頑張ってきた方も、少しずつ慣れてきた頃かと思います。
しかし、実は五月は新生活の疲れから、心身の調子を崩しやすく「五月病」という言葉があるほどです。
五月病の抜け出し方を知っておくと、万が一不調を感じた時の早めの対処につながります。
どうぞ最後までお付き合いください。
五月病ってなに?
五月病とは大型連休の前後から生じる、「怠い、気力がわかない」といった心身の不調を指します。
「五月病」は正式な医学用語ではありませんので、受診した結果「適応障害」と診断される場合もあります。
主な症状
「適応障害」と似た症状を感じる方が多く、代表的なものは以下の通りです。
人それぞれ症状は異なりますが、よく自分自身を観察し「いつもと違う」という場合は注意しましょう。
うつ病とは違うの?
「適応障害」と「うつ病」の症状は似ていますが、診断基準は異なります。
しかし、診断が適応障害だからといって症状が軽いわけではありません。適切に対処しないとストレスの原因から離れても、なかなか回復できなくなることがあります。そうした場合、うつ病へと移行する場合もあるため、早めの対処が重要です。
五月病の原因は環境の変化
五月病は新生活にまつわるストレスが主な原因といわれています。
最近、以下のような環境の変化はありませんでしたか?
1つ当てはまるだけでも大きな変化ですよね。
これに日常生活のストレスが加わると、より調子を崩す危険性が高まります。
1つでもチェックがついた方は、五月病のリスクが高くなっていると意識して過ごしましょう。
なりやすい人の特徴
いわゆる「しっかりものの頑張り屋さん」は五月病のリスクが高いと考えられます。
・頼まれごとを断われずに引き受けてしまう
・失敗を深刻にとらえすぎてしまう
・周りが忙しそうにしていると話しかけられない
という方は、ひとりで頑張ろうとしてしまい、周りを頼ることが苦手です。
新しい環境で周りは知らない人ばかりの場合、さらにひとりで抱えこんで辛くなってしまう可能性があります。
五月以外も注意が必要
最近では六月や七月に、五月病のような症状で悩んでいる方が増えています。
環境の変化に「何とかついていくぞ」と緊張した状態が続いた結果、六月や七月になってから疲れてきてしまうことも。
五月は「乗り切った!」という方も、気づかないうちに疲れが溜まっていないか、振り返ってみましょう。
どうやったら五月病から抜け出せる?
五月病の症状に気づいたら、まず自分でできるケアを試してみてください。
また、ひとりで悩まず、周りの力を借りることも重要です。
それでもなかなか抜け出せない時は、専門家への相談をしましょう。
自分でできるケア
まずは生活習慣の工夫によるケアを試してみましょう。
・生活リズムを一定に整える
疲れているからといって、休日に寝だめをしようとしていませんか?
体の疲れを取るために横になって休むことは重要ですが、休日でリズムが崩れると休み明けが辛くなります。平日のリズムと極端に変えないように心がけましょう。
・軽い運動をする
気力がわかない時にハードな運動をすることは難しいですよね。しかし、散歩やストレッチなどの軽い運動は、むしろ疲れを軽減する効果があります。
とくに、日光にあたると生活リズムを整えるホルモン、メラトニンによって睡眠のリズムがリセットされます。ぜひ昼間のうちに散歩に出てみてください。
・気晴らしの方法をたくさん持つ
楽しめるものが生活の中にたくさんあると、ストレスを発散できます。
大好きなものがある方も、趣味と言えるものがないという方も、日常生活を楽しむバリエーションを増やしましょう。例えば、いつもと違うおかずを作ってみる、普段聞かない音楽を聞いてみるというちょっとした変化も、よい気晴らしになるかもしれません。
・仕事とプライベートのON/OFFをしっかりする
新生活に慣れようと、つい休日も仕事のことを考えたり、仕事のメールを読み返したりしていませんか?
休日はパソコンを開かない、通知はオフにするという工夫も大切ですね。
周りの力を借りて行うケア
1人で頑張り過ぎず、遠慮なく周りの力も借りましょう。
・愚痴を聞いてもらう
愚痴を聞いてもらうことも、立派なストレス対処方法です。よい解決策が見つからなかったとしても、話すだけで気持ちは楽になりますよね。
・アドバイスをもらう
気持ちが落ち込んでいると、悪いことばかり考えてしまいがちです。より客観的な視点から意見をもらうと悩みの解決にもつながります。家族や友人など、信頼できる人に相談してみましょう。
なかなか抜け出せない時は専門家を頼ろう
少しハードルは高いかもしれませんが、専門家への相談が回復の近道です。
・病院やクリニックを受診する
不調が続く場合には、精神科を受診しましょう。早めの受診によって、早く回復できる場合もあります。
また状態によっては、睡眠を助ける薬や不安を落ち着かせる薬が処方されることもあります。
・職場の健康相談窓口を利用する
職場に産業医や保健師などの産業保健スタッフがいる場合には、相談窓口を利用するのもよいでしょう。病院へ行くのはハードルが高いという方にもおすすめです。
企業によってはカウンセラーと相談できることもあります。ぜひ制度を確認してみてください。
・電話やSNSでの相談窓口を探す
「対面で話すのは緊張する」「もっと気軽に相談したい」という方は、厚生労働省が提供している相談窓口の検索サイトもあります。
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まとめ
以上、五月病の抜け出し方についてまとめました。
五月病かもと感じたら、ご自身の生活を見直すこと、周りの力を借りること、専門家を頼ることがポイントです。
五月病の症状はさまざまですが、いつもと違うという自分のサインを見逃さないようにしましょう。とくに新生活で環境の変化があった方は、注意して自分自身を観察してくださいね。
当記事が、あなたが五月病でつらい状態を少しでも早く抜け出す役に立ちますように。
参考文献
平島(2018). 適応障害の診断と治療 精神神経学雑誌. 120(6). 514-520.
池田(2020). 日本における「適応障害」患者数の増加ーメンバーシップ型雇用からの考察- 社会政策学会誌『社会政策』. 12(2). 101-112.
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監修:編集長 森下りの
名古屋大学医学部保健学科看護学専攻卒業。在学中はヘルスケア領域の知識や経験ををグローバルな視点で深めるために、リーズ大学(イギリス)への長期留学や、エリザベス病院(タンザニア )でのインターンシップなどを経験。卒業後は、看護師として疾患知識やコニュニケーション力を培う。医療業界のIT化遅れへの危機感や、疾病予防には個人の主体的な行動が不可欠と感じ、H2株式会社に入社し、マーケティングと広報を担当。 看護師、保健師、メンタル心理カウンセラーの資格を保有。
執筆者:臨床心理士・公認心理師 石倉美希
早稲田大学人間科学部卒業、東京家政大学大学院人間生活学総合研究科臨床心理学専攻修了。在学中に認知行動療法や健康心理学を学び、糖尿病患者が抱える不安や食行動変容について研究。卒業後は医療機関にて臨床心理業務に従事し、主に働く人のメンタルヘルスのサポートを担う。「心身の健康を通じてその人らしい生き方をサポートしたい」という思いからH2株式会社に入社。臨床心理士、公認心理師の資格を保有。
記事提供:H2株式会社
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