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2023.01.25

運動が脳を鍛え、うつ退け、集中力上げるカラクリ|『運動脳』著者アンデシュ・ハンセン氏が明かす


スウェーデンから来日したベストセラー書の著者に聞きました(写真:mits/PIXTA)

スウェーデンから来日したベストセラー書の著者に聞きました(写真:mits/PIXTA)

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運動は最強の“うつ予防薬”であり、記憶力、創造力、注意力、そして集中力を高める――。そう語るのは『運動脳』(サンマーク出版)の著者でスウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセン氏だ。脳はかつて大人になったら衰えると考えられてきたが、その後の研究で年をとっても脳細胞は増えることがわかってきた。1月21日(土)19時から放送予定の「世界一受けたい授業」(日本テレビ系列)に登場し、日本でも話題となっているハンセン氏に、運動がもたらす驚くべき脳への多様な効果について話を聞いた。

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運動はうつ病に効く

――精神科医のハンセンさんが運動に興味を持ったきっかけは、クリニックで診ていた患者さんだったと聞いています。

その通りです。うつ病や不安神経症の患者さんをたくさん診ていると、運動をしている人は、半年や1年経っても診療に戻ってこないことがわかりました。それをきっかけに、運動はうつ病を予防するのではないか?と考えるようになりました。

それと、もう1つ理由があります。私は日ごろから医学の研究論文をたくさん読んでいるのですが、そのなかで運動はうつや不安から身を守るだけでなく、創造性を高め、集中力を高め、記憶力を向上させる、とても重要なものであるということを示す重要な研究を目にしたのです。

――運動がもたらす効果はそれほどすごいものなのですか?

そうです。もし運動が脳や体に与える効果を錠剤にできたら、とてつもなく売れるでしょうね(笑)。アディダスやナイキ、プーマなどのスポーツメーカーも、最近になって運動が健康にもたらす効果を紹介するキャンペーンをやっていますが、私は「創造性推進装置」とか、「不安解消剤」のようなネーミングのシューズを作ればいいのにと思っています。

――運動がうつ病に効くということについて、もう少し教えてください。

医師としてヘルスケアに携わっていると、どの患者さんにはうまくいって、どの患者さんには問題があるのか、そういうパターンが見えてきます。もちろん単なる偶然という可能性もあるので、慎重に見極めないといけないのですが、それでも運動には抗うつ薬のような効果があるのではないか?と思いました。

ただ、重症のうつ病の人は運動してはいけません。また、現在抗うつ薬を必要としている人も、医師に相談せずに薬をやめて走り始めるようなことはしないほうがいいです。

――今、治療をしている患者というより、もっと大勢の「ちょっとストレスが溜まっている」とか「ちょっと仕事で集中力が出ない」とか、そういう方に向けてのメッセージとしてとらえたほうがいいということですね。

はい。メンタルヘルスのための運動の役割は、ストレスに対する耐性、不安に対する耐性、うつ病に対する耐性を高めることだと考えています。運動したほうがストレスに強くなるし、ストレスにうまく対処できるようになります。

アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)/精神科医。スウェーデン・ストックホルム出身。カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)にて医学を、ストックホルム商科大学にて企業経営を修めた。現在は上級医師として病院に勤務するかたわら、多数の記事の執筆を行っている

アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen)/精神科医。スウェーデン・ストックホルム出身。カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)にて医学を、ストックホルム商科大学にて企業経営を修めた。現在は上級医師として病院に勤務するかたわら、多数の記事の執筆を行っている

――なるほど。それだけでもすごいですが、それ以外の効果もあるんですよね。

はい。まず運動は認知機能を向上させます。また、運動は記憶力を高め、創造力を高め、注意力を高め、集中力を高めます。そして、スウェーデンの徴兵対象者に関する研究※によると、運動は知能にも多少の影響があるようです。

付け加えると、運動は睡眠を改善します。運動をするとより早く眠りにつき、より深い眠りにつくことができます。スウェーデンでは多くの人が睡眠問題を抱えています。彼らはみな(睡眠)薬を求めてクリニックに来ますが、私が最初にアドバイスするのは「昔ながらの目覚まし時計を買うこと」と、「寝る前に携帯電話をチェックしないこと」、そして「運動すること」です。ほとんどの人は、「思っていたよりもそれらをやり遂げることが難しくなかった」と言い、よく眠れるようになりました。

※スウェーデンでは男性に対して徴兵制を実施(女性は任意)。その際に行う身体・知能検査などのデータを基にさまざまな調査・研究を行っている。

運動すると短期的だが脳に届く酸素や栄養が増える

――運動するとなぜこうした効果が得られるのでしょう。血流ですか?

それもあります。22年前、私が医学部に通っていた頃は、脳への血流は常に一定と教わりました。しかし、実際にはそうではなく、脳は体を動かしたほうがより多く、具体的には座っているときよりも早歩きをしたり走ったりしたときのほうが約20%多く血液を受け取れることがわかっています。血流が増えるということは、脳に届く酸素や栄養が増えるということを意味します。

ただし、これは短期的な効果で、運動後1~2時間程度しか維持されません。

――長期的な効果はどうでしょうか。

脳への長期的な影響を与える1つにBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質があります。これは脳が作り出すタンパク質で、脳細胞の新生や記憶力、全般的な健康など、脳のさまざまな働きを促進する作用があります。そして、BDNFは運動をすることでよりたくさん作られます。BDNFができるには時間がかかるため、さまざまな効果(たとえば新しい脳細胞が形成されるなど)を得るには、運動を数カ月にわたって定期的に行うことが必要です。

――どんな運動をどれくらいすればいいですか?

速く走ったり、長く走ったりする必要はありません。短期間、心拍数が少し上がる運動をするだけでBDNFは産生されます。しかも、運動を繰り返すほどBDNFの生成量が増えていきます。1日30~45分間のランニングを週に3回ほど、これを数週間から数カ月も続ければBDNFによるプラスの効果は出てきます。心拍数を上げることは必要ですが、スピードは関係ありません。無理をせず走ることが大事です。

――運動には自転車やヨガ、フィットネス、テニスなどさまざまなものがあります。どんな運動でもよいのでしょうか?

重要なのは運動の「強度」

重要なのは種類ではなく強度にあると思います。「強度」というのは、「心拍数がどれくらい上がるか」です。だから、テニスでもサッカーでもクロスカントリーでも、強度が同じであれば脳への影響は同じ。どの運動が優れているということではありません。

――ウォーキングはどうですか?

うつ病の予防に関しては、60分のウォーキングは15分のランニングと同じ効果があるようです。これはうつ病に対する予防効果についてであって、他の認知機能についても同じかわかりません。ただ、これは少なくとも何らかの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

――日本では、国立長寿医療研究センターが、歩きながら脳トレをする「コグニサイズ(コグニション=認知と、エクササイズ=運動を組み合わせた新しいエクササイズ)」があり、「運動する+頭を使う」というのがいいといわれています。

認知症など年をとってからかかる病気から脳を守るためには、運動が非常に重要で、認知トレーニングも重要であることは明らかです。若い人でも体を動かしながらオーディオブックやポッドキャストなどを聴いたりして何かの情報を得るのは、座って聴くよりも学習効果は高くなります。

試験勉強であれば勉強する前に早歩きをして、昼休みにまた早歩きするのはとてもいいことです。学習中や学習前に体を動かすと、より細かいところまで記憶できるようになります。

――朝昼晩、どのタイミングで運動をすればいいですか?

短期的な効果は運動後1時間くらい続きます。集中力が増すとか、クリエイティブになるとか、そういった効果です。それを考えると、朝に運動したほうが、仕事や学校での勉強にいい影響を及ぼします。一方でこれが最も重要な効果なのですが、長期的な効果についていえば、いつ運動しても同じです。

――どれくらいで脳の変化が実感できますか?

1カ月後ぐらいには表れると思います。

――運動にはデメリットはないのでしょうか。

たとえばアイアンマン(レース)のように、10時間、12時間と走り続けるような極端な運動は、脳にとってよくない可能性があります。マラソンくらいまでなら問題ないと思います。繰り返しますが、週に3回、毎回45分、汗をかく程度の運動をすれば、脳への効果は十分に得られます。それ以上やっても、心肺機能は高まりますが脳へのプラスの効果は得られません。

――運動嫌いの人もいます。

私は、現代社会が犯した大きな過ちは、運動とスポーツを一緒にしてしまったことだと思っています。運動はスポーツとは何の関係もなく、私たち人間にとって本質的に必要なものです。私はむしろ「私は運動が得意ではないから……」というような人たちに対してこそ、こう伝えたいんです。マラソンのようなことをする必要はありません。定期的にウォーキングするだけでいいんです。これまで何も運動をしていない人が少し体を動かすことで、効果が生まれるのです。

人間は怠け者になるように進化してきた

――体を動かすことが大事でも、なかなか続けられない人が多いです。

運動がつらいのは、私たちは怠け者になるように進化してきたからです。

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『運動脳』(サンマーク出版) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

人間はほぼ全歴史上、全人類の半分が10代になる前に亡くなっています。私たちは、10代になる前に死ななかった人たちの子孫ということになります。彼らの死因はがんや心臓血管病ではなく、飢えや脱水、感染症などです。それらから命を守るため、人は生きるためにはカロリーをたくさん摂取してきました。そして、そのエネルギーをムダにせず、じっとしていることが大切でした。

実際、私たちは自分が動かなくていいようにいろいろなものを作ってきました。エレベーターを作り、電動スクーターを作り、怠け者のために食べ物を玄関先まで配達してくれるようになりました。これは私たちが本能的に怠け者だからです。

――なるほど。でも、現代人には運動が必要、ということですよね。

だから、あまり考えずに運動できる工夫が必要です。例えば、通学や通勤時に歩くとか、昼休みに体を動かすとか、できるだけ階段を使うとか、そういうことです。日常生活のなかに運動、体をちょこちょこと動かすことを取り入れることが大切なのです。

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提供元:運動が脳を鍛え、うつ退け、集中力上げるカラクリ|東洋経済オンライン

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