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2022.11.26

医師が警告「便秘の人」が大腸がんに注意すべき訳|大腸がん予防には腹直筋を鍛えるべき理由


気がつかないうちに大腸がんリスクを高めているかもしれません(写真:TAKA-HERO/PIXTA)

気がつかないうちに大腸がんリスクを高めているかもしれません(写真:TAKA-HERO/PIXTA)

「筋肉とがんの予防効果には相関関係がある」。そう語るのは、がんの専門医であり、ヘルスコーチでもある石黒成治氏です。

最新刊『筋肉が がんを防ぐ。専門医式 1日2分の「貯筋習慣」』は、医学的な根拠と自らの実践をもとに、「貯筋習慣」の重要性と始め方を伝える書。本書を一部抜粋・再構成してお届けします。

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男女ともに増加している大腸がん

日本人の死亡要因の1位はがん。2人に1人ががんになると試算されています(日本がん治療学会ホームページより)。部位別に見ると、増加しているのは男性では前立腺がん、女性では乳がんで、それぞれの罹患数のトップになっています。男女ともに増加しているのは大腸がんです(国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」より)。

大腸がんは、大腸粘膜と、なんらかの発がん物質との接触によって起こります。初期・早期には自覚症状がありません。大腸にポリープができがん化していくものが多いため、検診で便潜血検査(便に混じった血液を見つける)を行い、ポリープからの出血を探します。検査で出血を認められた人は、大腸の内視鏡を行って実際にポリープがないかどうかを調べます。その時に大腸がんが見つかる場合もあります。

日本では内視鏡検査が盛んで技術力も高いため、早期の段階で見つけるがんの割合が多く、大腸がんの多くは良性のポリープからわずかにがん化しただけの早期がんとして発見されます。そのため手術治療ではなく、内視鏡的にポリープを切除する方法で治療が完了します。

大腸がんは腸の内腔の粘膜から発生しますが、がんが進行するにつれて大腸の内腔に突き出すようになり、次第に便が通りにくくなってきます。便ががんに引っかかるようになると、腸は無理して通そうと過剰に動いたりするためおなかが痛くなったり、逆に固形の便を通すと症状が強くなるためわざと水分を吸収しないようにして下痢便を通すようになります。

さらに進行してしまうと完全に腸が詰まる状態(腸閉塞)になり、緊急の処置(手術など)をしなければ命に関わる状態となってしまいます。大腸がんは、このような症状が出た段階ではかなり進行していると考えて間違いありません。

大腸がんは「便秘」の人に多い

疫学的データを見ると、実は便秘と大腸がんのリスクにははっきりとした相関は認められていません。ですが、大腸粘膜と便中の発がん物質との接触時間が長くなる「便秘」の状態によって、ポリープやがんを発生させるリスクが高くなることは間違いありません。

原則、男性なら1.5日、女性なら2日以内に食べた食事から作られた便が出なければ便秘です。ところが、数日に1回の排便でも自分は便秘ではないと思っている人は、便秘ではないと答えてしまいます。そのため便秘と大腸がんの関連を調査することは難しいのです。

しかし、大腸がんの手術を多数行った経験から、「大腸がんの人が便秘の人に多い」ことは間違いありません。大腸の術後は通常3日から7日で食事を再開します。そして大部分の人が術後に下剤を必要とします。おなかの傷があるので力強く腹圧をかけられないからです。

おなかの傷が癒えたあとでも、下剤がないと排便がうまくいかない人が80%以上を占めます。もともと腸を動かす力が弱いため下剤がないとうまく排便できないのです。術後の後遺症とも考えられている便秘ですが、もともと便秘傾向であるために術後に生涯にわたって下剤を必要とする人も珍しくありません。便秘を解消することは、大腸がんのリスクを下げる最も取り組むべき課題であると僕が考える理由です。

成人女性の約40%が便秘であると自覚しています。便秘になる要因は複数あります。もともと腸の動きが弱いなど遺伝的な素因を持っていることは大きな要素です。

それ以外にも帝王切開などで普通分娩で生まれてこなかった人や、母乳を与えられる期間が短く正常な腸内細菌が形成されなかった人は、腸内環境が乱れやすい特性を示しやすく、便秘などの排便トラブルを引き起こしやすいでしょう。それらの生まれつきや、幼少期の要素以外にも、多くの要因が便秘を引き起こし、そして悪化させています。

便秘を改善するための対策としては、当然ですが普段の食事で何を食べているかは最も重要であることは間違いありません。野菜果物の摂取が少なく食物繊維が不足していたり、コンビニ食や市販のおかし、冷凍食品などの添加物、保存料のたくさん入った加工食品ばかりを食べている人は、腸内環境が乱れやすく便秘になりがちです。

同じくストレスが多い生活や睡眠が慢性的に不足している人も、腸内環境は乱れやすく便秘になりやすいと言えます。また40代以降では甲状腺機能が低下してくるため、さらに腸の動きが悪くなり便秘が悪化しやすくなってきます。

さらに便秘解消のためにあまり意識されていないことがあります。それは「おなかの筋力と姿勢」です。

「ぽっこりおなか」では腹圧がかからない

排便の際には様々な筋肉が協調して働き、便を腸の中から押し出します。普段は肛門近くの直腸を包み込むように存在している恥骨直腸筋という筋肉が収縮して、直腸の角度を曲げて、便が直腸の中にとどまるようにブロックしてくれています。排便の際にはこの恥骨直腸筋が緩んで、直腸からまっすぐ肛門に向かう向きになります。そして腸が動き肛門が緩んで便が排出されます。このとき腸の動きをサポートする重要なものがあります。それは腹圧です。腹圧がしっかりかかると一気に腸の中の便を排出することができます。

腹圧をしっかりかけるためにはしっかりとした腹筋が必要です。そのために重要な筋肉は腹直筋下部と腹横筋です。腹直筋はおなかの前面の筋肉でいわゆる腹筋と呼ばれるものです。腹横筋は腹部の筋肉の最も内側に存在しています。シックスパックというように腹直筋は通常は6カ所に分かれると考えられていますが、実際は8カ所に分かれています。それはへそから下の腹直筋は目立ちにくく認識されにくいためです。

しかしこの一番下の腹直筋が腹圧をかける上では重要です。いわゆる「ぽっこりおなか」の人はこの腹直筋下部の筋肉と腹横筋が極端に弱くなっているため、おなかの形状を維持することができません。そこに内臓脂肪や皮下脂肪がたっぷりつくとなおさらだらしなく緩んだおなかになってしまいます。排便のためにしっかりと腹圧をかけるには腹部の筋肉を鍛えることが重要です。

「姿勢が悪い人」は便秘になる

外来に便秘で来院する人で姿勢が良い人を見たことがありません。背中全体が丸く頭が前方に飛び出した姿勢、もしくは極端な反り腰の姿勢の人は腸がうまく動きません。それは脳から連続する神経にダメージがあるためです。

背骨(脊椎)は体全体を支える柱の役割を果たします。首から腰まで合計24個の骨が縦にS字状に積み上がる形で作られる背骨の中を貫くように脳とつながる脊髄という神経が存在します。脊髄から心臓、肺、腸、肝臓、腎臓など各臓器に神経が伸びており、脳の指令を伝達します。主に腸の動きは腰の神経(腰椎交感神経)と脳から直接腸まで伸びてくる迷走神経(副交感神経)の2つのバランスでコントロールされています。肛門近くの直腸は腰の骨よりさらに臀部側の仙椎から出る神経の支配も受けます。

脊髄が通過する背骨の空間は24個の骨がきれいなS字を描いているときにもっともスペースが広くなります。頸の骨は前方に軽く沿った形で存在しますが、その反りがなくなってまっすぐになってしまうと神経は強く圧迫を受けてしまいます。正しい姿勢を継続しなければ、背骨に負担がかかり炎症を起こします。

炎症が起きることにより背骨同士をつなぐ靭帯が固くなっていくと脊髄の通り道がさらに狭くなっていきます。腰の骨の並びが乱れると腸に行く神経もダメージを受けます。結果腸の動きのバランスが崩れてしまいます。腰痛の人はしばしば便秘も併せ持つことが多いです。脊髄は頸から腰、臀部まで連続しているため頸の脊髄が圧迫を受けるとそれより下の神経はすべてダメージを受けてしまいます。現在スマートフォン、パソコンをのぞき込む姿勢で極端に頸が前に出ている姿勢の人を多く見かけます。こういった人の頸の骨のレントゲンを撮るとアーチが消失してまっすぐになっています(ストレートネック)。

頸の骨がまっすぐになるとバランスをとろうとして腰の骨もまっすぐになってしまい、結果腸に至る神経の指令が伝わりにくくなります。姿勢が悪い人は便秘が解消しにくいという事実をまず理解すること。そして便秘解消のためには、頭が前に出すぎないような姿勢を心がけ、腰周りの体幹を安定させるようなトレーニングを行い姿勢を保つ必要があります。

大腸がん予防のためには便秘を改善することが必須ですが、先述のように便秘が引き起こされているメカニズムは様々です。食物繊維の摂取が少なく、動物性蛋白質・脂質の多い食事をしている場合は便の量が少なく、腸の動きを刺激しません。インスタントラーメン、チョコレートやスイーツ、スナック菓子などばかり食べていると食品添加物によって腸が炎症を起こしているかもしれません。

また年齢が進みホルモンバランスが乱れ甲状腺機能が低下しているかもしれません。食事を変えることは重要です。しかし多くの便秘で悩む人は食事だけを改善しても思ったような効果を実感できないことがほとんどです。

大腸がんを防ぐために鍛えるべき部位と筋トレ

こういった便秘を起こす様々な原因に対して共通して有効な方法は運動しかありません。運動は腸の炎症を抑え、甲状腺機能を改善する効果があるからです。

現在、僕が運営するオンライン健康スクールでは便秘の改善を期待して入校する方が多いのですが、食事の改善とともに運動、特に筋トレを実施するにつれて目に見えて便通がよくなることを経験しています。

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便通改善、大腸がん予防のためには重点的に2つの部位をトレーニングしていく必要があります。

1つは先ほど述べましたが、腹直筋下部や腹横筋などの「おなか周りの筋肉」です。排便時に必要な腹圧を上げて便秘を解消するために欠かせません。この部位を鍛えるための具体的なトレーニング例としては、「プランク」「レッグレイズ」などがあります。

そしてもう1つは「お尻周りから足にかけての下半身の筋肉」です。がん予防のためには大腸周辺のリンパの流れを良好にしておくことが免疫細胞を循環させる観点から望ましいのですが、大腸のリンパ流だけを改善することはできないので、腸のリンパ流と交通のある骨盤のリンパ流を改善することを目指して下半身の運動を取り入れます。

臀部(おしり)、大腿(太もも)、下腿(ふくらはぎ)の筋肉を十分に動かして、ダイナミックなリンパの流れを大腸の周りに循環させます。この部位を鍛えるための具体的なトレーニングとしては「スクワット」「カーフレイズ」などがあります。

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提供元:医師が警告「便秘の人」が大腸がんに注意すべき訳|東洋経済オンライン

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