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2022.11.17

和田秀樹「高齢者はお金に過度な心配が不要な訳」|人生に潤いを与えるようにお金を使っていく


高齢者はお金とどのように向き合えばいいのか(写真:polkadot/PIXTA)

高齢者はお金とどのように向き合えばいいのか(写真:polkadot/PIXTA)

「人生100年時代」といわれる中、シニア世代に入ってからも前向きに人生を楽しむには何が重要なのでしょうか。高齢者専門の精神科医として6000人以上の患者を診てきた和田秀樹さんの著書『80代から認知症はフツー ボケを明るく生きる』から一部抜粋してお届けします。

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人は何歳から老人になるのか

「人生100年」といわれて久しくなりました。人は何歳から「年寄り」あるいは「老人」となるのか、よくわからなくなってきています。70歳を過ぎても元気に仕事をしている人や、80歳を過ぎても毎日を健康で楽しく過ごしている人はたくさんいます。80歳を過ぎて現役バリバリという人も珍しくなくなりました。

お金に余裕がある人も多いようです。現役時代、日本の経済が今よりも強かったからです。お金と体力があるのなら、「老いては子に従え」と思う必要はありません。もっと自分らしく自由に生きてもいいのではないでしょうか。高齢になったら、意欲的に物事を考えて積極的に行動することを私は強くおすすめします。そのように生きたほうが老化のスピードを遅くすることもできます。何よりQOL(人生の質)も上がるでしょう。

あなたも50歳を過ぎたら、自分の好きなことをやりましょう。やりたいことをやると、毎日が充実します。60歳を過ぎたら、もっとやりたいことをやればいい。きっと、楽しいと思える日々が多くなり、周りから「顔つきがやさしくなった」といわれることでしょう。70歳を過ぎたら、楽しい日々を謳歌しましょう。きっと、「いつも機嫌がいいね」といわれることでしょう。

80歳を過ぎたら、残存能力を最大限に活用しながらさらにやりたいことを続けましょう。きっと、「いつもお元気ですね」と言われるでしょう。90歳を過ぎて、たとえ認知症になっても、やりたいことをやればいいのです。老人になっても楽しく生きることは十分に可能です。

年をとったからといって守りの姿勢で生きる必要はありません。そのような生き方は、気力も体力も時間もたっぷりある今の高齢者には不向きだと思います。また、そのような生き方をすると、結果的に健康でいられる年数を縮めてしまいます。もっと積極的に生きましょう。それが、人生の終盤における介護の期間を短くして家族の負担を軽くし、社会の負担も軽くすることになるのです。

やりたいことをやりましょう。このように提案すると「お金が……」と反応されてしまうことがたびたびあります。高齢になると、少なくない人がお金の心配をするようになります。それは当然のことです。稼ぎがなければ、お金が減っていく不安にストレスを強く感じるものだからです。

ただ、お金にまつわる不安はあるけれど、それでも預金や持ち家などある程度の財産はもっているというのが、現代日本社会の多くの高齢者の現実ではないでしょうか。将来はわかりませんが、今の日本の高齢者は臨終を迎えたとき、思ったよりも多くの財産を残す人が多いと思います。

なかには年金が少ないという人もいると思いますが、今の高齢者の持ち家率は高く、その家を売却すれば、老人ホームに入居してそこで暮らし続けることができます。仮に老人ホームに入居して、年金でまかなえない分が月5万円になる場合でも、家を売却して得たお金と老人ホームの入居資金の差額が1000万円(首都圏や京阪神ならもっと多い人が少なくないでしょう)とすると、およそ200カ月間は穴埋めすることができます。

お金の心配を必要以上にしない

お金は必要な分だけあればいいのです。それこそ認知症になって重度の症状になると、お金を使うことができなくなります。認知症を患っていても入居できる施設もあります。そこに入れば、出費はほぼ施設に払うお金だけです。家を売却したお金が底をついても、年金がありますし、年金が生活保護の基準額より少なければ、生活保護を申請すれば適用されることが多いでしょう。

必要以上にお金の心配をする意味はありません。家族に多くのお金や財産を残したいと思っているなら話は別ですが、そうでなければ〝今〟の自分のために使ってもいいのではないかと思います。自分が機嫌よく生きられれば、周りの人も楽しい気持ちになりますし、応援してくれるようになるはずです。

他人のお金ではなく、自分のお金を使うのであれば、それは本来誰からも口出しされるものではありません。もちろん、無計画に使えば家計は破綻しますが、投資など巨額の金を使わなければ意外にそういうことは起こりません。お金の心配をあまりしないようにうまく段取りして、自分が少しでも自由に行動できるように使いましょう。そして自分らしく意欲的に生きてみましょう。

蓄えが少なく、お金の目減りにストレスを感じるのでしたら、アルバイトを検討してはいかがでしょうか。高齢者の働き手を求めている企業は多くあります。なるべくストレスがかからない仕事を探してチャレンジしてみましょう。

働けばお金が入ってくるのでお金の不安が減ります。また、人の役に立っている、あるいは社会の役に立っていると思えれば、人生のQOLも上がります。「65歳を過ぎてもアルバイトをしなくてはいけないのか」「70歳を過ぎても働かなくてはならないのか」と思う必要はありません。多少の仕事の不満は人生のスパイスと考えて、前向きに働くのがよいのではないでしょうか。

そうして稼いだお金のうち、好きなことに費やせる額や割合を決めればいい。年金で生活費がまかなえるのであれば全額だって誰にも文句を言われません。やりたいことのために自由に使いましょう。人生に潤いを与えるようにお金を使っていくのです。

例えば、好きなアーティストのコンサートに行ったり、お気に入りの車でドライブをしたり、あるいは楽器を弾きたいなら、その楽器を買って練習しましょう。気ままな旅に出たいなら、ぜひそうしましょう。アルバイトなら、休みもとりやすいはずです。

少しわがままに生きるために思い切って使う

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やりたいことを毎日一つずつするというのもいいと思います。お金があまりなくても、1杯のラーメンや1つのケーキ、1杯のコーヒーに払うお金ならあるという人は多いのではないでしょうか。

例えば、おいしいと評判の店にいろいろと行ってみるのです。行列ができていたとしても、時間の余裕はあるのですから、ゆったりとした気持ちで並んでいられます。待っている間に、本や雑誌を読んだり、スマートフォンでネットサーフィンをしたり、友人にていねいなメールを書いたりするのもいいかもしれません。

ストレスがたまるほどお金をセーブしても、それで得られるリターンはどれくらいあるのでしょうか。残された人生で得られるものはそう多くないと思います。それなら、少しわがままに生きるために思い切って使ったほうが、自分の人生が充実します。

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和田秀樹「要介護になる人・なりにくい人の差」

提供元:和田秀樹「高齢者はお金に過度な心配が不要な訳」|東洋経済オンライン

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