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2022.11.09

漢方が伝授「寒暖差疲労」を根本解決するツボ2つ|豆乳や白ごまなど「白い食材」が元気をもたらす


気温差から生じる寒暖差疲労の、漢方的対策をご紹介します(写真:Ushico/PIXTA)

気温差から生じる寒暖差疲労の、漢方的対策をご紹介します(写真:Ushico/PIXTA)

寒暖差が大きい日が続き、体調を崩す人が増えています。ストレスというと精神的なものを思い浮かべるかもしれませんが、気圧や温度の変化も人体にとって大きなストレスです。

漢方の書物には、自然界と調和して無理なく生活するために、気象が人体に与える影響について詳細に記載されています。

四季のなかで最も変化が激しいのが秋

漢方の基本となる理論の1つに「陰陽理論」があります。この理論では1年のなかで暖かい春や夏を「陽」の季節、寒い秋や冬を「陰」の季節としています。季節の変わり目に体調を崩す人が増えますが、特に夏から秋にかけては陽から陰へと切り替わる時期なので、体にとっては最も厳しい変化といえます。とくに今年の秋がそうですが、暖かくて半袖でよい日もあれば、急に冷え込む日もあるなど、寒暖差が激しいのが特徴です。

また、1日のなかで7度以上温度差があると寒暖差疲労を感じやすいといわれます。このところ日によっては15度以上の差がある日もあり、いつもは元気な人でもだるさや眠気を感じることがあります。

今回は、そんな厳しい環境の変化に対処する漢方の知恵をお伝えしたいと思います。まずは、寒暖差疲労のポイントについてご紹介します。以下に当てはまる項目があるか、チェックしてみてください。

□ 暑さ、寒さに弱い
□ 風邪を引きやすい
□ 気圧が低い日や温度差が大きい日に頭痛やめまい、だるさ、神経痛などさまざまな症状が現れる
□ 冷え症である
□ 脱水気味で熱中症になったことがある
□ 運動不足
□ 体がむくみやすい
□ 更年期症状(ホットフラッシュやほてりなど)がある

いかがでしたでしょうか。チェックの数が多い人ほど寒暖差疲労を起こしやすい、あるいは起こしている人となります。

では、これらの症状に対応する方法をご紹介する前に、中国の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』に書かれている理想的な秋の過ごし方をみてみましょう。

〈秋の三カ月は容平という。天気は涼しく風の音は強く急であり、地気は静粛として、万物は色を変える。この季節には、鶏の寝起きのように、早く寝て早く起きることであり、心を安らかにして、精神を落ち着かせて、秋の気が身体を損なうことのないようにし、やたらと動きまわって、肺を冷やさないようにする。これが秋の季節に調和した養生法である。もし、これに背いて、精神を動揺させたり、秋の冷えにあたり肺を冷やしたりすると肺気を損傷し、冬になって下痢をしたりする。〉

これは黄帝内経の「四気調神大論(しきちょうしんたいろん)」篇で、四季の養生について書かれています。黄帝内経は漢の時代に書かれた漢方医書で、体の仕組みや治療法だけでなく、病気にならず健康でいるための方法(養生)について多く書かれています。

漢方の古典に習う養生法を紹介

病気になる前に察知して防ぐ「未病治(みびょうをちす)」という言葉が出てくるのもこの黄帝内経です。現代にも生かすべき智恵の宝庫と言えます。次からは、この黄帝内経を参考にした養生法となります。

(1)早寝早起きをする

漢方でいう生命力「気」が充実していれば、寒暖差に耐えることができ、疲れにくい体にしてくれます。先に記したチェックシートはほぼすべて、気の不足である「気虚(ききょ)」が原因です。

気の不足を補うには、陽気を取り入れることが大事です。自然界の陽気はまさに太陽光が与えてくれるエネルギーであり、体内で働くさまざまな気の材料になります。

秋から冬にかけては日が短くなっていくので、自然界の陽気を取り入れる時間が少なくなります。そのため、就寝時間を早めにシフトして、にわとりの起きるぐらいのタイミング――遅くとも6時半くらいまでには起きて、陽気を取り込みたいところです。今の時期は夏の疲れを引きずっていることが多いので、夜は10時、遅くとも11時までには就寝しましょう。

同じ8時間睡眠でも、夜10時からの8時間と夜12時からの8時間とでは、睡眠の質が違ってくると漢方では考えます。とくに陰が極まる夜11時から翌朝3時までは熟睡していないと、血液や体液をしっかり充実させて日中に備えることができません。

疲れているのに夜更かしをしている方もいますが、そのような人は寝不足が日常的になっているため、寝不足に気付いていないことが多いです。睡眠不足は眠りでしか補えませんので、まずは少しでも早く就寝することを心がけてください。秋の夜長といいますが、夏の疲れをとって冬に備えるには、意識して体を休めたほうがいいのです。

一方、注意したほうがいい眠りは、横になった状態でする昼寝です。気を取り込む臓器である「肺」は、秋と深い関係があります。昼間に横になって長く眠ると、この肺の気が虚す(衰える)といわれます。肺が弱いと気を巡らせる力が弱くなり、息苦しい、疲れやすい、風邪をひきやすい、冷えやすい、うつっぽいなどの症状が出やすくなります。どうしても眠いときは横にならずに座ったまま、10~20分程度の昼寝をしましょう。

(2)新しいことを始めない

次に、黄帝内経が秋の象徴として表現する「容平(ようへい)」について解説します。

「容」は収容や包容の意味で、空の枠に物を入れることを表し、「平」は平穏や平定を意味します。秋になると、夏の燃え上がる炎のように盛んであった陽気が、外に出ていく状態から内に収められる状態に変わることを示しています。必要なものが残され、不要なものはそぎ落とされます。秋になると葉が枯れ落ちた枝に真っ赤な柿がなっているのを見かけますが、「容平」とは、このような実りを収穫するイメージです。

そのため、この時期は種をまくような、何か新しいことを始めるのは相応しくなく、ゆっくりと物事を仕上げたり、整理したりするのにふさわしい季節なのです。実際に始めようとすると肺を傷めることにもなり、気の巡りが悪くなって、体調を崩して寒暖差疲労につながります。

(3)冷えに気をつける

養生は前の季節の影響を受けるので、今冷えが強い人は夏の養生が十分ではなかったといえます。それを挽回して冬に備えるには、まずはこれ以上冷えを悪化させないことです。

冷えを予防するには3つの首(手首、足首、首)をガードすることが重要です。夏の延長で足首以下の短い靴下を履いている人もいますが、ハイソックス、レッグウォーマーなどを活用してほしいですね。首にはスカーフやストールを巻くとよいでしょう。女性はできれば秋から冬は肩につくくらいに髪を伸ばすのがおすすめです。髪で首回りが温まります。髪は縛ったり上げたりせず、おろしたままにしておきましょう。

また、急な気温の変化に備えて重ね着をするのをおすすめします。厚着しすぎて汗をかくのも結果的に冷えにつながります。

冷えが強いときに摂りたい食材

冷えが強い場合は、温める性質を持つネギやショウガ、シナモン、コショウを適度に摂るのもおすすめです。ただし、摂りすぎると体が乾燥してしまうので要注意です。特にニンニクやトウガラシ、山椒など熱性の強いものは適度に取り入れ、汗をかくほどは食べないようにしましょう。

入浴は40度以下で10分程度温まると、リラックスして自律神経が整います。熱い湯や長風呂は肌の乾燥や脱水を招きますので、これからの時期はとくに避けてほしいところです。

(4)皮膚をケアする

漢方では肺と皮膚は深いつながりがあるとされていて、皮膚の乾燥は肺の働きを弱めます。入浴後はオイルや乳液で保湿をするのがいいでしょう。オイルマッサージで適度な圧をかけてマッサージすれば、皮膚が鍛えられて肺にもよい影響を与えます。

また、肺は大腸とも関係が深いので、皮膚の乾燥は便秘につながることもあります。秋になって便秘がちになっていたり、便が硬くコロコロしていたりするようであれば、乾燥に気をつけてみてください。

(5)白い食材を摂る

乾燥に弱い肺はつねに潤いを必要とします。肺が元気に働くためには、肺を養い潤す食材を意識して摂りましょう。

この時期は「豆乳鍋」がおすすめ

秋は、燥の邪気「燥邪(そうじゃ)」が体に入りやすくなります。燥邪は乾燥をもたらし、肺を傷つけます。秋は“白いもの”を食べるとよいとされていますが、梨や豆乳、白ごま、松の実、白きくらげ、豚肉といった食材は体を潤す作用があります。豚肉や白キクラゲを入れた豆乳鍋などがおすすめですね。

(6)ツボ

肺の経絡は鎖骨の下にある「中府(ちゅうふ)」から始まり、「雲門(うんもん)」でUターンし、腕の内側を通って親指の爪際で終わります。寒暖差疲労を感じたら、この経絡に沿ってマッサージするのもいいでしょう。

中府、雲門は、デスクワークで前屈みの姿勢が多い人で、とくに流れが悪くなりがちです。作業の途中で腕をうしろで組んでグーっと胸を開くようにするといいでしょう。中府、雲門を気持ち良い程度の強さで押し揉むのも効果的です。

・寒暖差疲労を回復させるツボ

雲門(うんもん) 鎖骨と肩の間のくぼみ
中府(ちゅうふ) 鎖骨と肩の間のくぼみから指幅1本下がったところ

イラスト:ナミッコ/PIXTA

イラスト:ナミッコ/PIXTA

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提供元:漢方が伝授「寒暖差疲労」を根本解決するツボ2つ|東洋経済オンライン

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