2022.10.19
糖尿病予備軍を正しく知ろう 〜症状・血糖値の仕組み・予防をわかりやすく解説〜
「糖尿病予備軍と言われた…」
生活習慣や環境の変化に伴い、かかる人が増えている2型糖尿病。糖尿病予備軍は、2型糖尿病の一歩手前の状態のことを言います。
実は糖尿病予備軍の人は、数年以内に糖尿病になりやすいと言われているのです。しかし、いざ糖尿病予備軍と言われても、ピンとこないのではないでしょうか。
今回は、糖尿病予備軍について、わかりやすくお伝えしていきます。
症状や検査方法だけではなく、「糖尿病予備軍を遠ざける方法」までご紹介していますので、最後までお読みいただければと思います。
それでは、まいりましょう。
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糖尿病予備軍って病気?
糖尿病予備軍とは、「血糖値が正常より少し高いものの、糖尿病と診断される値よりは低い状態」のことを言います。
つまり、糖尿病になりかけている状態ですが、糖尿病予備軍の段階ではまだ病気ではありません。
参考記事:糖尿病とはどんな病気?〜症状・原因・治療などをわかりやすく解説〜 ※外部サイトに遷移します
糖尿病予備軍=境界型糖尿病?
糖尿病は、血糖値によって「正常型」 「境界型」 「糖尿病型」 の3つに分けられます。
境界型糖尿病は診断で付けられる名称、糖尿病予備軍は通称(一般的に通用している言葉)で、両方とも同じ状態を意味します。
要するに、糖尿病予備軍が境界型糖尿病です。
どうして糖尿病予備軍になる?甘いものとの関連
糖尿病予備軍になる理由は、何だと思いますか?
その答えは糖尿病と同じで、血液の中のブドウ糖(血糖)が多くなり、血糖値が正常より高くなるからです。
私たちの体は、インスリンという膵臓から出ているホルモンにより、血糖値が一定の範囲内になるよう調整されています。
ところが食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、肥満などに体質や年齢が重なると、インスリンの働きは悪くなってしまいます(インスリン抵抗性)。すると血液中のブドウ糖をうまく体内に取り込めず、血液中にブドウ糖が多く存在する状態となってしまい、血糖値は高くなるのです。
つまり糖尿病予備軍となる要因は、【遺伝的な体質や年齢+慢性的な食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、肥満など→インスリンの働きが悪くなる→血液中のブドウ糖が多くなる→血糖値が高くなる】という流れによります。
また血糖値やブドウ糖に「糖」という文字があることから、甘いものが原因と思われがちですが、お菓子の食べ過ぎやジュースの飲み過ぎだけが関わるわけではありません。
参考記事:糖尿病に間食&おやつはダメ?現役栄養士が徹底指導 ※外部サイトに遷移します
確かに甘いものには砂糖(糖質)が多く含まれます。
糖質は血糖値を上げやすい栄養素ですが、ご飯やパン、肉や魚などの食べ物も、体の中で分解された後は血糖値の上昇に関わります。
「甘いものを食べる≠血糖値が上がる」ですので、食事や運動など全体的に見直すことが大切です。
症状について
糖尿病予備軍では、自覚症状はありません。
痛みもかゆみもないため、糖尿病予備軍と言われても「糖尿病になりかけている」という意識が薄くなりがちです。
しかし放っておくと、糖尿病になるリスクが非常に高い状態ですので注意しましょう。
糖尿病予備軍の診断基準と検査方法
血糖値を確認する代表的な検査には、HbA1c、空腹時血糖値、75g経口ブドウ糖負荷試験(※)の3つがあります。
(※)75g経口ブドウ糖負荷試験とは75gのブドウ糖液を飲み、30分後、1時間後、2時間後に採血を行い、血糖値を測定するもの
糖尿病予備軍は 「HbA1cが6.5%未満かつ空腹時血糖値110-125mg/dlまたは75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間後の血糖値140-199mg/dl」 に当てはまる場合に、境界型として診断されます。
通常の血液検査で、HbA1cと空腹時血糖値は測定できます。ですから75g経口ブドウ糖負荷試験を行わなくても、この2つの結果のみで診断されるケースもあります。
しかし、空腹時血糖値が110-125mg/dlやHbA1cが6.0-6.4%の場合は正常より高値であり、糖尿病の疑いがある状態です。
血糖値は常に変動しています。そのため時間や条件を合わせた上で、血糖値の変化を詳しく見る必要があり、75g経口ブドウ糖負荷試験の実施が推奨されるのです。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、10時間以上の絶食後に75gのブドウ糖液を飲み、意図的に高血糖状態を作りだす検査方法です。
ブドウ糖液を飲むと、ブドウ糖が体内で吸収されて血液の中に入り、血糖値が上がります。
健康(正常)であればすぐにインスリンが分泌されて、血糖値は下がっていきますが、インスリンの働きが悪くなっている(インスリン抵抗性)状態では血糖値は下がらず、2時間後も140mg/dl以上となってしまうのです。
正常型なのか、糖尿病か境界型なのかは75gブドウ糖負荷試験の結果ではっきり分かります。
なお、血液検査の結果で血糖値が高かったり尿検査で(+)だったりした場合、糖尿病もしくは境界型糖尿病が疑われますので、一度診察を受けることをお勧めします。
糖尿病予備軍の治し方〜糖尿病にならないための予防方法〜
糖尿病予備軍から糖尿病にならないために大切なことは、インスリンの働きを悪くする要因を取り除くことです。つまり、食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足、肥満を解消することで、糖尿病を遠ざけることができます。
それでは今日から簡単に出来る、食事や運動のポイントをお教えしましょう。
摂取カロリーを抑える
食べ過ぎや飲み過ぎでお腹周りを中心に内臓脂肪が貯まると、インスリンの働きを低下させるホルモンが分泌され、血糖値が上昇します。
まず、摂取カロリーを抑えるようにしましょう。
摂取カロリーを減らすと内臓脂肪や体重が減り、インスリンの効きを正常な状態に戻すことができます。そして、糖尿病を遠ざけることができるのです。
腹八分目の食事量を心がけ、清涼飲料水やジュースよりお茶や水を飲むようにしましょう。
体を動かす習慣をつける
インスリンの働きを低下させる内臓脂肪は、運動することで減らすことができます。
運動もまずは続けることが大事なので、いきなり無理しないように。そこでなのですが日常生活の中で、今より10分多く体を動かしてみませんか?
出勤前にラジオ体操をしたり、オフィスで階段を利用したりするだけでもOKです。
1年継続すると、1.5-2.0kgの減量効果が期待できることがわかっています。たった10分、されど10分。忙しくても1日10分、体を動かしましょう。
食べてはいけないものはある?
糖尿病予備軍だからといって、食べてはいけないものはありません。しかし気をつけたほうが良いものがあります。
体内への吸収が早い果物の飲み物に注意
糖質には種類があります。
単糖類は単純な化学組成をしているため、体の中に素早く吸収されます。一方、多糖類は複雑な化学組成で何度も分解を繰り返して吸収されるため、吸収されるスピードはゆっくりです。
そのため果物たっぷりのスムージーやフルーツジュースなどを飲むと、血糖値は跳ね上がってしまいます。さらに糖分が豊富な蜂蜜が入っていると、血糖値はなおさら急上昇してしまうのです。
また、ミキサーにかけることで果物の食物繊維や果肉がつぶれ、一気に吸収されやすくなってしまいます。
しかしながら、果物にはビタミンやミネラル、食物繊維など、私たちの体の調子を整える栄養素が含まれおり、1日80kcalを目安に取り入れて欲しい食材です。
なのでスムージーやジュースは控え、果物そのままの味を楽しむことをお勧めします。
参考記事:糖尿病に果物は良い悪い?血糖値をあげにくいフルーツの食べ方を紹介 ※外部サイトに遷移します
運動するなら何が良い?
糖尿病にならないためには、インスリンの効きが良くなる体つくりが大切です。
インスリンの効きは内臓脂肪が原因で悪くなっていますので、脂肪をしっかり燃やすトレーニング、つまり無酸素運動(=筋肉トレーニング)が効果的と言えます。
そこで、どこでも簡単にできるスクワットはいかがでしょう。ゆっくりの膝の曲げ伸ばしをすることで、太ももの筋肉である大腿四頭筋が鍛えられます。
大腿四頭筋は私たちの筋肉の中で最も大きな筋肉です。鍛えることで代謝が上がり、効率的に脂肪を燃焼することができます。
まず10回から始めてみませんか?慣れてきたら1日30回を目安に行ってみましょう。
サプリや健康食品はどう?
血糖値が気になる方に向けた、サプリメントや健康食品も多く見かけますよね。
血糖値を下げるために、サプリメントを取り入れたほうが良いのでは..そう思う方もいらっしゃると思います。しかし予備軍から糖尿病にならないためには、食生活の改善(食事)や体を動かすこと(運動)が基本の柱です。
サプリメントや健康食品は、足りない栄養素を補助的に取り入れる目的なら良いでしょう。
とはいえ、どうしても使用したい場合は医師や薬剤師に相談してみてください。
まとめ
糖尿病予備軍は糖尿病になりかけている状態で、血糖値が正常より高くなっていることが分かりましたね。
そのままにしておくと、糖尿病になるリスクが非常に高いのが糖尿病予備軍です。糖尿病にならないために、食事では腹八分を心がけ、1日10分体を動かすことをお勧めします。
また果物のスムージーやジュースは控えめにし、スクワットを取り入れてみるのも良いでしょう。
今回は、糖尿病予備軍についてご紹介しました。
当記事を参考に、糖尿病の予防に役立てていただければ嬉しいです。
参考文献
厚生労働省 平成30年国民健康・栄養調査 第2部 基本項目 第1章 身体状況及び糖尿病等に関する状況
一般社団法人日本臨床内科医会 わかりやすい病気のおはなしシリーズ14 糖尿病予備軍〜血糖値が気になり始めたら〜 2010年5月発行
日本糖尿病療養指導士認定機構編・著 糖尿病療養指導ガイドブック2018 P22〜P24 3.診断
厚生労働省 e-ヘルスネット 糖尿病
厚生労働省 e-ヘルスネット アクティブガイド
執筆者:副編集長 白石香代子
山口県立大学家政学部栄養学科卒業後、人材業界を中心にセールスやコンサルタントとして交渉力・語彙力など幅広いコミュニケーションスキルを培う。その後、中国大連にて日系企業のフードアドバイザー、日本人学校の食育セミナー講師として活動。現在、H2株式会社とクリニックでの栄養士業務、特定保健指導を兼任。その他、中国高齢者施設の栄養監修なども手掛けている。管理栄養士、東京糖尿病療養指導士の資格を保有。
記事提供:H2株式会社
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提供元:糖尿病予備軍を正しく知ろう 〜症状・血糖値の仕組み・予防をわかりやすく解説〜|【シンクヘルスブログ|H2株式会社】