2022.09.05
「運がいい人」に特徴的な不安を感じない性格|運を信じる人はストレスに強く、集中力が高い
幸運な人は不運な人よりも不安感を覚えていないうえ、前頭前野の注意制御システムをうまく活用できるそうです(写真:Claudia/PIXTA)
世の中には「何をやってもなぜかうまくいく人」がいる一方、「何をやってもうまくいかない人」がいる。では、「うまくいく人」には、なぜ幸運が舞い込むのだろうか? 運がいい人と悪い人には、なにか私たちの知らない習慣や行動、考え方の違いがあるのだろうか?
「運」の起源やメカニズムを科学的に検証し、どうすれば「運」を呼び込むことができるのかを解説した、心理学者・神経科学者のバーバラ・ブラッチュリー氏の著書、『運を味方にする 「偶然」の科学』より、一部抜粋・編集の上、お届けする。
『運を味方にする 「偶然」の科学』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
「運を信じる人」は不健全なのか?
昔から、運を信じる人は「物事をコントロールする力は自分の外にある」と考えてきた。つまり「自分ではコントロールできない予期せぬこと」が起こり、それが安定していない場合、その説明として運を利用してきたのである。
『運を味方にする 「偶然」の科学』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
この説から言えば、運を信じていない人のほうが合理的で、確率を計算にいれ、予期せぬ出来事の原因として自分の能力も考慮していることになる。
一般的に心理学の世界では昔から、運を信じない人のほうが信じる人よりも心理学的には健全だと思われてきた。
新たな研究によれば、運を信じる人は運を個人の特徴、つまり個性のひとつと見なしているそうだ。
「自分は幸運だ」と思っている人は、予測できない、偶然起こった問題に直面し、その問
題を克服しなければならない場合でも「自分は幸運なのだから」と信じることで、希望と自信をもっているらしい。
たとえ運は偶然に左右され、自分のコントロールが及ばないものだと認識していても、「自分は運がいい」と考える人は偶然起こる出来事にも耐えやすくなり、予測できない出来事にどう手を打つべきかという答えを割りだしやすい。
この説から見れば「自分は幸運だ」と思っている人は「自分は運が悪い」と思っている人よりも精神状態が健全で、ストレスに対処する能力が高いことになる。
運に関して性格がはたす役割は、なかなか説明するのがむずかしい。
最初のハードルは、性格とはなにかを定義する必要があることで、これひとつとっても一筋縄ではいかない。
性格とは、私たちを独自の人間たらしめている思考、感情的反応、行動パターンであると、心理学者たちは定義している。
外の世界と交流するこうした特徴ある方法は、私たちの内面で生じている。体験を通じて変わっていくことは可能だし、変わることも多いが、それは私たちの一部なのだ。
足し算を覚えたり、動詞を活用させたり、歴史の日付を覚えたりするのとはわけが違う。
そして性格はまた生涯を通じて、ほぼ一貫して変わらない─脳で極端な変化が生じないかぎり、突然変わることはないのだ。
注意制御できる人の脳波
脳波のシータ波/ベータ波の比率からは、性格のほかの側面も見てとれる。注意力をどのように発揮するのか、つまり広大な世界で起こる物事のどこに注意を向けるのかという方法の違いだ。
私たちのなかには、ほかの人より注意制御が得意な人がいる。注意制御の度合いは安定していて、長期的に見れば性格の一部でもある。研究者たちはシータ波/ベータ波の比率が、注意制御の力と負の相関にあることに気づいた。注意制御ができる人はシータ波/ベータ波の比率が低く、その逆もまた同様だった。
こうした性格の特徴は、脳の機能における注意制御のシステムと関係している。
もうひとつ、人によって性格が異なる特徴として、「特性不安」が挙げられる。おそらくあなたの知り合いにも、ほかの人より不安感の強い人がいるだろう。
というよりも、人によっては、不安感が強いのがその人の性格の安定した大きな特徴なのだ――これを特性不安という。
特性不安が強い人は、さまざまな状況に脅威や危険を見いだしやすい。他人には脅威に思えないようなことも脅威に感じるし、一般に不安を生みだす(実際に脅威がある)状況では、この特性が低い人よりも強い不安を覚えやすい。
このように性格の一部として不安感を覚えやすい場合、注意をどこに向けるかという方法にも影響が及ぶし、出来事に対して運を説明に利用する方法やタイミングも変わってくる。
不運な人は不安感が強く気が散りやすい
神経科学者のソニア・ビショップは、特性不安が強い人は弱い人と比べて、背外側前頭前野の活動がきわめて弱いことに気づいた。
前頭葉の機能のこの違いは、完全に集中しなくてもこなせる課題に被験者が取り組んでいる際に顕著に観察された。
目の前の課題に完全に集中していない場合、不安感がきわめて強い人たちは、それほど不安感が強くない人と比べて、無関係な刺激に気が散りやすかった。
特性不安が強い人は、背外側前頭前野の活動が不活発で、なにか気が散ることが起こると、目の前の課題から注意をそらしやすかったのだ。
ビショップは、前頭前野の活動が不活発だからこそ、臨床での治療が必要なほどの不安感を訴える患者は集中することが困難なのだろうと示唆している。
もし、幸運であるためには注意力を効率よく采配しなければならないのなら、ビショップの研究結果によれば、幸運な人は不運な人よりも不安感を覚えていないうえ、前頭前野の注意制御システムをうまく活用できることになる。
(翻訳:栗木さつき)
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:「運がいい人」に特徴的な不安を感じない性格|東洋経済オンライン