2022.09.02
脂肪肝とは〜原因・症状・改善方法をシンプルに解説〜
「脂肪肝だから痩せるように言われたけど、正直、何が悪いかよく分からないんだよね」
脂肪肝は肝臓の現代病とも言われます。実は人間ドック健診では、受けた人の約30%が脂肪肝ということが分かっており、その数は年々増加傾向にあるそうです。
初期の段階では、痛くも痒くもない脂肪肝。
そこで「あなた、脂肪肝ですよ」と言われたところで重く受け止められないかもしれません。しかし放っておくと、行き着く先には大変な病気が待っているのです。
今回のブログでは、脂肪肝について分かりやすくお教えしていきます。
さらに脂肪肝の改善に役立つレシピもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
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脂肪肝は肝臓のサイレントキラー
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が溜まった状態のことです。
最初は何も症状がありませんが、進行すると肝炎を起こし、ひどい場合には肝硬変(肝臓の本来の機能が出来ない状態で肝がんの手前)になることもあります。
肝臓は、おおよそ2,500億個の細胞が集まった体の中で最大の臓器です。そして肝臓は生命活動に欠かせない働きを担っています。
主な働きは、
・栄養素をエネルギー源に変える
・アルコールや薬など体に有害なものを処理・排出する
・免疫(病原菌から体を守る力)を調整する
などです。
脂肪肝は静かに進行します。そして肝機能は少しずつ低下していきます。そこで脂肪肝は別名、肝臓のサイレントキラー(沈黙の殺し屋)とも呼ばれるのです。
なぜ起こる?脂肪肝の原因
脂肪肝の原因は、お酒の飲み過ぎだけと思っていませんか?もちろん、アルコールは脂肪肝の原因なのですが、実はお酒を飲まない人でも脂肪肝は起こるのです。
肝臓には、糖分や脂質をエネルギーに変える働きがあります。
そのため食べ過ぎや飲みすぎ、さらには運動不足などで摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ってしまうと、使いきれなかったものが中性脂肪(※)として肝臓に過剰に蓄えられてしまいます。
(※)中性脂肪とは血液の中にある脂肪の一つです。
そして徐々に脂肪肝へと進行していくのです。
・肝臓の数値はココをチェック
健康診断でわかる、3つの項目を紹介します。肝機能検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの検査を行うのが一般的です。
AST(別名GOT)とは肝臓や筋細胞などに含まれる酵素のことで、ALT(別名GPT)はASTより肝臓に多く含まれる酵素のことを言います。肝細胞が傷つくと酵素が血液中に出てしまい数値が上昇します。
γ-GPTはたんぱく質を分解する酵素で、アルコールが原因で上がりやすい数値です。
経過観察にあたる数値では、肝臓の働きが弱くなり始めていると考えられます。脂肪肝には特に注意が必要な数値です。
糖尿病との関係
意外かもしれませんが、糖尿病の合併症による死因の1位は肝疾患です。つまり、糖尿病は肝臓病の一部と言っても過言ではないのです。
肝臓に脂肪がつくとインスリン抵抗性(※)が起こり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなります。そして、糖尿病の悪化につながるリスクが高くなるのです。
(※)インスリン抵抗性とは運動不足や食べ過ぎにより、インスリンは分泌されているが効果を発揮できない状態のことです。
参考記事:糖尿病とはどんな病気?〜症状・原因・治療などをわかりやすく解説〜 ※外部サイトに遷移します
症状について
すでにお伝えしたように、脂肪肝にはほとんど症状がありません。しかし脂肪肝になると、なんとなく不調を感じる場合があります。
なぜなら徐々に肝臓の細胞の働きが鈍り、栄養素が上手く代謝されず、全身の細胞に栄養が補給されなくなるからです。
そのため、疲れやすい、体がだるいといった症状が出ることがあります。
基本の治療とは
脂肪肝の治療は、「運動」「食事」が基本です。減量を行い、肝臓に付いている脂肪を落としていきます。
アルコールが原因の場合は、お酒を控える(節酒)もしくは禁酒が必須です。
運動は筋トレが先決
脂肪肝の脂肪を燃やすには無酸素運動、つまり筋トレが効果的です。中でもオススメはスクワットです。
スクワットで負荷のかかる下半身には、全身の筋肉の60-70%が集まっていると言われています。
下半身を鍛えると、体全体の筋肉量が増え基礎代謝が上がり、霜降りの肉のような肝臓の脂肪を燃やすことが出来るのです。
食事でのポイント
脂肪肝の原因となる中性脂肪が増えすぎないような食事を意識しましょう。ポイントは糖質を摂りすぎないことです。
糖質は私たちの体を動かすエネルギー源ですが、過剰分は中性脂肪に変わります。そこで、ご飯やパン、麺などの主食は今より少なめを意識しましょう。
例えばご飯なら、今の10%少なくするようにします。すると、ひと月で500gの減量ができ、2ヶ月後には2キロの減量が可能です。これだけでも内臓脂肪が減らせ、無理なく脂肪肝の改善につながります。
そのほか、肉類の選び方にもコツがあります。脂身がたっぷりの肉類は高カロリーです。バラ肉よりヒレ肉やもも肉を選ぶとカロリーを減らすことができます。
そして調理法にも一工夫してみましょう。同じ食べ物でも調理法でカロリーが大きく変わります。
「揚げる/炒める」より、「蒸す/茹でる」方法で調理を行うようにしましょう。
薬が処方される場合
まれではありますが、肝臓に脂肪が貯まるのを防ぐ薬が処方されることもあります。しかし脂肪肝は食事と運動が基本の治療です。
薬について、気になる場合は主治医に尋ねてみてください。
脂肪肝を改善する食事を紹介
肝臓のほとんどは、たんぱく質でできています。そして、肝細胞が働くために必要な酵素(※)の原料もたんぱく質です。そこで、良質なたんぱく質を補うことが大切なポイントとなります。
(※)酵素は消化・吸収など私たちが生きていくための生命活動をサポートし、反応を早める働きのあるものです。
またビタミンは肝細胞の修復のために必要な栄養素です。野菜やキノコ、海藻などもしっかり取り入れたいですね。
とっておきのレシピを公開
それでは、脂肪肝改善にオススメなレシピをご紹介します。高たんぱく質食材の鶏むね肉と、ビタミンをバランスよく含む豆苗を使った簡単レシピです。
【鶏むね肉と豆苗のバンバンジー】
【作り方】
(1)豆苗は根を切り落とし、3等分に切る。
(2)鶏胸肉はフォークで裏表ともに数カ所穴をあける。
(3)耐熱ボウルに②の鶏胸肉を入れて料理酒大さじ1をかけ、ふんわりとラップをかける。電子レンジに入れて600wで5分加熱する。中まで火が通ったら、そのまま冷ます。
(4)調味料を混ぜ合わせる。
(5)(3)の鶏胸肉を手で細かく割く。
(6)豆苗と鶏胸肉を器にもり、調味料をかけて完成。(お好みで輪切りの唐辛子をのせる)
参考記事:豆苗の栄養成分と効能~栄養を逃さない効果的な食べ方も解説~ ※外部サイトに遷移します
納豆は肝臓に良い
納豆には「レシチン」という成分が含まれています。このレシチンには、肝臓の機能を保護する作用があります。また、肝臓から中性脂肪を運び出す手助けもしてくれるのです。
そのため、納豆を食べることは脂肪肝改善に効果的と言えるでしょう。
参考記事:納豆は血糖値の抑制や血栓の予防などに有効?効果的な食べ方やレシピを紹介 ※外部サイトに遷移します
飲み物ではコーヒーがおすすめ
コーヒーには脂肪肝の発生を抑える可能性があります。これは、10年に渡り、コーヒーを飲むことでの脂肪肝発生の影響についての調査報告に基づきます。
報告によると、肥満気味でコーヒーを飲む量が少ない人は、痩せていてコーヒーをよく飲む人に比べると脂肪肝が多いという結果だったそうです。
つまり、肥満度は脂肪肝に関係していて、コーヒーはその脂肪肝の発生を抑えている可能性があると報告されています。
参考記事:コーヒーを飲んだら痩せる?〜ダイエット効果・飲み方・オススメの一品を紹介〜 ※外部サイトに遷移します
おやつにはハイカカオチョコレート
チョコレートのカカオポリフェノールには、アルコールが原因の脂肪肝を改善することがわかっています。さらに肝細胞の劣化を防ぎ、肝臓を守る効果も期待されている成分です。
ですから口寂しい時や小腹が空いた時には、ハイカカオチョコレートが良いでしょう。
ただし、1日の中で何度かに分けて食べるのがお勧めです。なぜならポリフェノールは効果の持続時間が短いからです。
例えば「朝昼晩+午前午後のおやつ」というように、1日5回に分けて食べます。そしてカロリーオーバーを防ぐためにも、1回あたり1枚(5g)をお勧めします。
参考記事:チョコレートはダイエットに良い?〜カカオの効果やお勧めランキングも紹介〜 ※外部サイトに遷移します
食べてはいけないものはあるのか
脂肪肝の食事で、食べてはいけないものはありません。
しかしすでにお伝えしたように、糖質の摂りすぎには気をつけてください。さらに果物の食べ過ぎに注意が必要です。
果物には健康的なイメージがあると思いますが、脂肪肝の観点ではあまりオススメできません。
と申しますのも、果物に含まれる果糖は分解・吸収の早い糖質で、吸収されるとすぐに肝臓で80-90%が中性脂肪に作り替えられてしまうからです。
そのため果物を食べすぎると肝臓に中性脂肪がたまり、「脂肪肝」に直結することになります。
バナナの食べ過ぎに注意
果物の中でも、バナナの食べ過ぎには気をつけた方が良いでしょう。
バナナの果糖は100g中2.4gとさほど多くはないのですが、ショ糖は10.5gと他の果物より多く含まれています。このショ糖は分解されるとブドウ糖と果糖になり、結果として中性脂肪を増やす原因になります。
バナナは1日1本までにすると安心ですね。
参考記事:バナナを食べると太る・太らない?〜糖質などの栄養から効果まで徹底解説〜 ※外部サイトに遷移します
サプリは良いのか
日々忙しいと、食事や運動を工夫する時間が取れず、つい手軽なサプリに目がいくこともあるかもしれません。
しかしサプリは食品です。薬ではないので、サプリのみで脂肪肝の改善効果は得られにくいでしょう。
ご自身ができる範囲で食事や運動を行いながら、補助としてサプリを取り入れるとよいと思います。
まとめ
以上、脂肪肝とは肝臓の細胞に中性脂肪が溜まった状態で、原因にはアルコールと肥満の2つあることがお分かりいただたと思います。
脂肪肝には症状がほとんどないため放っておきがちですが、ひどい場合は肝硬変や肝がんに進行するケースもあります。決して楽観的に考えてはいけません。
そして脂肪肝の改善ポイントは「運動」「食事」での減量、アルコールが原因の方は節酒か禁酒です。
なお、納豆やコーヒーなど脂肪肝に役立つ食品もありますので、日々の生活の中に上手く取り入れていただければと思います。
当記事によって脂肪肝に関する知識が深まり、生活習慣の見直しにつながると嬉しいです。
参考文献
人間ドック健診における脂肪肝 -最近の話題- JA北海道厚生連 帯広厚生病院 健診センター長 新智文 人間ドック32:7-16,2017
厚生労働省 e-ヘルスネット 脂肪肝
全国納豆協同組合連合会 納豆PRセンター 納豆の健康効果
一般社団法人全日本コーヒー協会 コーヒーと健康 毎日飲むコーヒーが脂肪肝を抑制する
長期縦断的調査からみたコーヒーの脂肪肝発生と臨床検査値への影響 公益財団法人三越厚生事業団三越総合健診センター 船津和夫ら 人間ドック34:572-580,2019
Oxidative stress during development of alcoholic fatty liver: therapeuticpotential of cacao polyphenol, K. Suzuki et al. Biosci Biotechnol Biochem. 2013, 77(8): 1792-4.
MSD株式会社 肝機能障害の方のためのやさしい食卓 女子栄養大学 栄養クリニック教授 蒲池桂子監修
執筆者:副編集長 白石香代子
山口県立大学家政学部栄養学科卒業後、人材業界を中心にセールスやコンサルタントとして交渉力・語彙力など幅広いコミュニケーションスキルを培う。その後、中国大連にて日系企業のフードアドバイザー、日本人学校の食育セミナー講師として活動。現在、H2株式会社とクリニックでの栄養士業務、特定保健指導を兼任。その他、中国高齢者施設の栄養監修なども手掛けている。管理栄養士、東京糖尿病療養指導士の資格を保有。
記事提供:H2株式会社
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提供元:脂肪肝とは〜原因・症状・改善方法をシンプルに解説〜|【シンクヘルスブログ|H2株式会社】