2022.08.19
歯周病が認知症の原因に?!その理由と対策を解説
近年、歯周病がさまざまな疾患に関わっていることが明らかにされています。その一つとして、歯周病が認知症の発症・重症化のリスクを高めることをご存知でしょうか?
認知症は脳の老化などによって起こり、理解力や判断力が落ち日常生活にも支障をきたす病気です。日本は高齢化の進展とともに罹患率が上昇し、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。
この記事では、歯周病と認知症の関係性とその対策について詳しく解説します。長く健康でいられるよう、歯周病について正しく理解し、その対策をしていきましょう。
歯周病ってどんな病気?
歯周病とは、歯垢が歯と歯茎の間に入り込むことで歯肉に炎症を引き起こし、歯を支えている骨を溶かしてしまう病気のことです。歯周病は年齢が増すにつれて進行する傾向がみられており、45歳以上では過半数が歯周病に罹っているといわれています[1, 2]。
では、歯周病は何が原因で起こるのでしょうか。
歯周病の原因
歯周病の主な原因は“歯垢(プラーク)”と“歯石”です。つまり、歯磨きが十分にできていないことで歯周病は起こりやすくなります。歯垢が歯と歯茎の間に入り込み細菌が繁殖・毒素を作り出すことによって、歯肉が腫れて炎症を起こします。よって歯と歯茎の間に歯周ポケットといわれる隙間ができてきます。また、唾液に含まれるカルシウムなどのミネラルが結合し歯石といわれる硬い物質が歯の表面に付着します。歯石が作られることで細菌はさらに歯周ポケットの奥深くへと繁殖し、歯を支えている骨を溶かすまで強い炎症を引き起こすのです。そのほかにも、タバコを吸っている人は歯周病に3~8倍罹りやすいといわれています[1]。
一見関係のないように見える歯周病と認知症の間には、どのような関係性があるのでしょうか。
認知症と歯周病の関係性
認知症にはさまざまな種類がありますが、歯周病と関連していることが明らかにされているのは“アルツハイマー型認知症”です。現時点でわかっているアルツハイマー型認知症を発症・進行させる原因の一つに、“アミロイドβ”というたんぱく質の蓄積があります。本来、アミロイドβは分解して体外に排出されますが、何らかの理由で蓄積してしまうと脳の情報伝達に支障をきたし、機能が低下してしまうのです。
このアミロイドβと歯周病の関係については、複数の研究によって検証されています。これらの研究によると、歯周病の進行に関わる細菌がアミロイドβの生成・蓄積に関与することが明らかになっています。つまり、歯周病は認知症の発症・進行のリスクを高めてしまうのです[3,4]。
歯周病は歯を支える骨までも溶かし、加えて認知症の発症・進行に関与する恐ろしい病気と言えます。次項からは歯周病の症状についてご紹介します。
歯周病は痛みが出ない
歯周病では、歯肉が腫れたり、歯磨きしたときに出血したりします。しかし、むし歯と違って痛みが出ないことも多いため、気づかないうちに進行し、歯がグラグラし、自然に抜け落ちてしまうほどの重症になってしまうこともあります[1]。
そうなる前に、まずは歯周病のセルフチェックをしてみましょう!
歯周病セルフチェックしてみよう!
上記のような症状があったら、歯周病の可能性があります。歯科医院で一度検査してみることをおすすめします[5]。
対策はどうしたらいい?
歯周病の原因となる歯垢をしっかりと除去するために、まずは丁寧な歯みがきを心掛けましょう。全体を磨けているかどうかは自分で判断しにくい部分があるため、磨き方や使っている歯ブラシが適切かどうか、歯科医院でチェックしてもらうと良いでしょう。歯石に関しては、歯ブラシでいくら頑張っても取れない汚れなので、歯科医院で歯石除去を定期的に行うことが大切です[6]。
そのほかに喫煙も歯周病のリスクを高めるため、1日に吸う本数を減らしたり、禁煙できるよう専門外来を受診したりするのも一つの方法です。
口の健康は認知症を予防する
歯周病は口の健康を乱すだけではなく、認知症の発症・進行リスクを高める恐ろしい病気です。歯周病は痛みが出ない場合が多いため、重症化する前に定期的な歯科医院でのメンテナンスを行うことが歯周病の早期発見・治療になります。しばらく歯科医院で検査をしていなかったという方は、これを機にぜひ受診してみてくださいね。
【参考文献】(全て2022-05-24参照)※外部サイトに遷移します
[1]厚生労働省:e-ヘルスネット, 歯周疾患の症状・原因・進行
[3]武 洲:歯周病のアルツハイマー型認知症への関与メカニズム解明. 日本女性科学者の会学術誌. 2022. 22(0),36-41.
[4]厚生労働省:知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス, 認知症
[5]厚生労働:e-ヘルスネット, 歯周疾患の自覚症状とセルフチェック
【プロフィール】 歯科管理栄養士×健康・食品ライター 石川 桃子
歯科医院で専属管理栄養士として勤めており、歯の不調をはじめとするさまざまな症状に対し、一人ひとりのライフスタイルに合わせた食事・栄養指導を行っている。加えて、食べる入り口となる≪お口の健康=身体の健康≫を伝えたい、毎日の食事で健康になるための正しい知識を発信したいという想いから、健康・食品ライターとしても活動を続けている。
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記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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