2022.06.29
【ポジティブ・エイジング養生訓】加齢は止められないが、老化はコントロールできる
肩がこる、疲れがとれない、食欲がない・・・とお悩みのみなさん!いつまでも明るく元気な「健康現役人」を目指すには、日頃からの“養生”が肝心です。漢方と、西洋医学を駆使する木村容子先生が、現代の養生訓を指南します。
男性は8年ごと、女性は7年ごとに節目を迎える
日々、診察をしていて、最近でこそ20代の女性患者さんも多いですが、基本的には男女を問わず40代後半以降の方々が主な患者さんとなります。「年をとったら、不調が多くなる」――当然のことのように思える事象ですが、漢方では、その理由が明快です。
漢方では、男性は8年ごとに、女性は7年ごとに、それぞれ心身の節目を迎えると考えます。これは、中国の前漢時代の医学書(ざっと2千年前)の「黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)」にすでに記されています。男性の場合、40歳(8歳×5)で抜け毛が目立つなどの老化の兆しが訪れ、48歳(8歳×6)で白髪が目立ち、56歳(8歳×7)で性機能が衰え、64歳(8歳×8)で老年期を迎えます。
一方女性は、老化のサインが男性よりも少し早めに訪れます。35歳(7歳×5)で容姿の衰えが見え始め、42歳(7歳×6)で白髪が目立ち、49歳(7歳×7)で生理が終わります。このように、男女ともにピークを過ぎ、40歳以降から、いろいろと加齢に伴う老化によるトラブルが生じてくるために、病院に通う頻度も多くなってきます。
未病を治療する漢方
さらに、通う先として漢方を専門にうたう病院を選ぶにあたっては、「近所の(西洋医学の)病院に行ってもなかなか調子が良くならない」「いろいろと検査をしたが、特に悪いところもない。しかし、まだ何となく調子が悪い」といった理由を挙げる方が多いです。
西洋医学の場合は、検査値に異常があったり、明らかな病名がつくときには診断基準がはっきりしています。しかし、それ以外の場合、例えば「腰が痛い」「肩がこる」「何となく気分が落ち込む」といった自覚症状がありながら、検査をしても特に問題がないケースなどは、漢方のほうが向いているといえます。
それはなぜか、というと、漢方は「病気未満な健康ではない状態」を「未病」の1つと考え、「病気」と同様に、れっきとした治療対象としているからです。この「未病を治療する」という考え方は、予防医学に通じます。予防の効用は、患者さんにとっては計り知れないものです。いったん病気になると、肉体への直接のダメージはもとより、通院する時間や費用から、精神的な影響に至るまで、さまざまな負担を抱えることになります。
しかし、病気になる前の不調の程度が軽いうちに対処すれば、その負担が全くなくなることはないにせよ、大いに軽減できる可能性が期待できます。そして、老化の速度を遅くしたり、波を穏やかにすることにつながるのです。
ポジティブ・エイジングのすすめ
病気になる前に対処すること、つまり予防こそが、まさに「養生」そのものです。養生というと、「おとなしく寝ていること」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、「病気にならず、健康で長生きして人生を楽しむための知恵」という意味もあります。
先の図「男性の曲がり角は8年周期」を例にとると、養生をしないと、ピークを過ぎてからは黄色線のように老化が加速してしまいます。また、「女性の曲がり角は7年周期」の図で言えば、青色線のようになります。養生で男性なら青色線、女性ならオレンジ色線のままで年齢を重ねられるようにしていきましょう。
漢方には、長い治療の歴史の中で、養生のノウハウが蓄積されています。このコラムでは、養生を皆さんの日常生活で生かせるよう、毎回ご紹介します。そして、健康現役人として目指していただきたいことは、積極的に養生を実践する、「ポジティブ・エイジング」という年齢の重ね方です。
アンチ・エイジングという言葉を耳にしたことがあるかと思います。「アンチ」とは、抵抗する、対抗するという意味です。前述の「8年・7年サイクル」のように、人間は年を取り老化する運命にあります。それならば、エイジング(加齢)に抵抗するよりも、ポジティブに(積極的に、前向きに)対処して老化の波を穏やかにしていこう、と発想の転換をしたほうが、養生を実践するにしてもやる気がでるのではないでしょうか。私は、その思いを込めて、「ポジティブ・エイジング」という言葉に置き換えて、老化に対処するようお薦めしています。
加齢は止められませんが、老化は養生次第でコントロールできるのです。
著者:木村容子(東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長)
お茶の水女子大学を卒業後、中央官庁入省(国家公務員I種)。イギリス・オックスフォード大学大学院に留学中、漢方に出会う。帰国後、退職して東海大学医学部に学士入学。2002年から東京女子医科大学附属東洋医学研究所に勤務。現在、同研究所所長。日本東洋医学会認定 漢方専門医、指導医。内科学会認定医。日本東洋医学会理事。人生100年時代に向けて、漢方治療を通じて各自に合わせた“ポジティブ・エイジング”を推進。
著書:『太りやすく、痩せにくくなったら読む本 医師が教えるほんとうのダイエット』(大和書房)
『ストレス不調を自分でスッキリ解消する本』(さくら舎)
『女50歳からの「変調」を感じたら読む本』(静山社文庫)
『漢方の知恵でポジティブ・エイジング』(NHK出版生活人新書)
他多数。
記事提供:介護・福祉の応援サイト「けあサポ」
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提供元:【ポジティブ・エイジング養生訓】加齢は止められないが、老化はコントロールできる|けあサポ