2022.05.13
目安は1日○パック!骨を丈夫にするための納豆の食べ方
健康志向が高まるなか、低カロリーでヘルシー、美容に役立つなどの理由から大豆製品を意識して食事に取り入れている方は多いのではないでしょうか。
大豆製品は“畑の肉”と呼ばれるように、身体を作るために必要な良質なたんぱく質源です。さらには腸内環境の改善に役立つこと、強力な抗菌物質をもつことなどのさまざまな魅力があり、テレビの健康情報番組や雑誌などのメディアでもたびたび取り上げられています。
今回は、大豆製品のなかでも特にさまざまな面で健康に良いと言われている“納豆”に注目し、その魅力をご紹介します。
優秀な大豆製品、納豆のここがすごい!
健康維持に役立つことで知られ、豆腐、豆乳などさまざまな種類がある大豆製品。そのなかでも“納豆”は積極的にとりたい優秀な大豆製品であることをご存知ですか?今回、納豆の魅力をご紹介するにあたり特に注目したいのは、年齢を重ねるうえで気になってくる骨の健康との関連です。骨の健康にカルシウムが大切であることは世間に広く認知されていますが、それだけではなく納豆特有の栄養素が骨を強くするために重要な役割をしているのです [1-3]。
そこで、納豆がほかの大豆製品と比べてどう優れているのか?
納豆と骨の関係について最近の研究結果に基づき解説したいと思います。
“骨を丈夫にする”納豆特有の栄養素とは
納豆には、骨形成に重要な役割を果たすビタミンKが豊富に含まれています。ビタミンKは数種類に分類されますが、そのなかでも納豆特有のビタミンKである“MK-7”には、骨の質を維持するというエビデンスがあるのです。
まず、閉経後の日本人女性1,417名を対象に、習慣的な納豆摂取量と骨粗鬆症性骨折のリスクとの関連を調べたコホート研究があるのでご紹介します。この研究では、納豆を週1~6パック(1パック:約40g)摂取する人と、週7パック以上摂取する人は、1パック未満の人と比べて、骨折しにくいという結果が示されています。
この研究において、豆腐やほかの大豆製品の摂取頻度は骨粗鬆症性骨折のリスクとは関連がなかったことから、大豆製品のなかでも納豆が骨粗鬆症の予防に役立つ可能性があると考えられています。
さらに、デンマークの骨粗鬆症クリニックで142人の閉経後の女性を対象に行われた試験では、1日375μgのMK-7を摂取することで骨梁骨構造(内部から骨全体を支える役割をする)が維持されることを示唆しています。
納豆1パックにはMK-7が約350μg含まれているため、1日1パックの納豆を食べる習慣は、骨の健康維持に役立つ可能性があると考えられます[4, 5]。
納豆に関する2つの注意点
ただし、納豆を食べるうえで気をつけていただきたいことがあります。
次の2つを確認しておきましょう。
(1)薬との飲み合わせ
ビタミンKには抗血栓薬ワルファリン(血液をさらさらにする薬)の効果を減弱させる作用があります。そのため、服用している方は、納豆をはじめとするビタミンKを多く含む食材の摂取を制限されています。自己判断はせず、医師、薬剤師に必ず確認しましょう[6]。
(2)食べる量
納豆だけでなくほかの食材でも言えることですが、どれだけ体に良いと言われる食品でも食べ過ぎには注意が必要です。大豆製品に多く含まれる大豆イソフラボンの安全な1日摂取目安量の上限値は70〜75mg/日とされており、納豆1パックには約36mgの大豆イソフラボンが含まれています。2パックでも上限値内には収まりますが、ほかの大豆製品も取り入れさまざまな栄養素をとる必要があるため、納豆は1日1パックを目安に食べることをおすすめします[7]。
骨粗鬆症予防におすすめの食べ合わせ
骨粗鬆症予防の観点からは、新しい骨を作るために重要なカルシウム、カルシウムの代謝を助けるビタミンDおよびビタミンKを積極的にとることが推奨されています。納豆にはビタミンKが豊富に含まれるため、カルシウム、ビタミンDをほかの食品で補えるといいですね。
カルシウムが多い食品はチーズや小魚、ビタミンDが多い食品は魚介・きのこ類や卵が挙げられます。納豆と一緒に食卓に並べたり、納豆と和えたりして手軽にいただくこともおすすめです。
一方で、食品添加物や肉類に多く含まれる“リン”というミネラルは、多くとり過ぎるとカルシウムの吸収を阻害するため、インスタント食品や加工食品、肉類ばかりに偏らないよう注意が必要です。また、食塩のとり過ぎも骨粗鬆症の要因となりますので、普段から濃い味付けを好む方は減塩にも意識を向けておきましょう[2, 8, 9]。
伝統的な食材のパワーをとり入れてより健康的な毎日に
昔から日本人の健康を支え親しまれてきた納豆。その健康機能は研究が進むにつれてどんどん明らかになっており、今後も愛され続ける食品の1つと言えるでしょう。
今回は納豆の優れている点をお伝えしましたが、ほかの大豆製品にも良い特徴がたくさんあるため、さまざまな大豆製品を積極的に食事に取り入れてみくださいね。骨粗鬆症の予防には、食事だけでなく、運動、適度な日光浴、禁煙を心がけ、お酒やコーヒーの飲み過ぎを避けることも重要です。日々、これらのことを意識して骨の健康を守りましょう。
【参考文献】(全て2022年4月5日閲覧)※外部サイトに遷移します
[1]須見 洋行: 世界に誇る納豆 : その効能成分(<シリーズ>教科書から一歩進んだ身近な製品の化学-和食の化学-), 化学と教育 2015; 63(7): 358-359
[2]厚生労働省:e-ヘルスネット|骨粗鬆症の予防のための食生活
[6]厚生労働省:e-ヘルスネット|食物と薬の相互作用(理論編)
[7] 内閣府 食品安全委員会:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
【プロフィール】管理栄養士 村上加織
「食の力で大切な人を健康にしたい!笑顔にしたい」という想いを実現すべく、管理栄養士の資格を取得。急性期病院に勤務し、給食管理や栄養指導を経験後、フリーランス管理栄養士として独立。特定保健指導やコラム執筆などの活動を通して、食と健康に関する情報を科学的根拠に基づき発信している。
記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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