2022.05.11
「肝臓をいたわる食事法」、7つのマスト常備食材|糖質制限で脂肪を減らしてタンパク質を摂取
肝臓をいたわる食事に欠かせない、7つのマスト常備食材とは?(写真:kazuhide isoe/GettyImages)
長野県の佐久市立国保浅間総合病院「スマート外来」では、患者の8割が3カ月で約5kgの減量と脂肪肝の改善に成功しています。その減量ノウハウとはーー。
肝臓外科医・尾形哲氏が上梓した『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』から一部抜粋・再構成してお届けします。
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増え続ける脂肪肝の原因は、「糖質」の摂りすぎです。それによって肝臓に脂肪が増えますが、その前に体で起こることーーそれが「高血糖」。糖尿病の原因です。実は脂肪肝と糖尿病は、お互いの状況をさらに悪くする“負の連鎖”を招きかねないのです。
脂肪肝の約半数に「糖尿病」あり
糖尿病を簡単に言えば、“血糖値が高くなる病気”です。ご飯やパン、ラーメンなどの糖質を食べると、そのほとんどが消化されてブドウ糖となり、小腸から吸収されて血液の中に入るため、食後は血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなります。
誰でも食事をすると血糖値が上がりますが、健康な人はすい臓から「インスリン」という血糖値を下げる働きをするホルモンが出て、正常値まで下げられます。しかし、インスリンが十分に分泌されなかったり、うまく働かなかったりすると、血中にブドウ糖があふれて、血糖値が高い状態が続きます。これが「糖尿病」です。
話は変わりますが、リビングが荷物だらけで、突然の来客があったら、あなたはどうしますか? たぶん、お客さんが入らない部屋にとりあえず荷物を押し込んで、リビングだけが片付いた状態にするのではありませんか。
実は、それと同じことが体の中でも起こっています。まず、細胞内のブドウ糖がいっぱいになると、ブドウ糖は肝臓でグリコーゲンという形に変えられて、肝臓と筋肉に押し込まれます。
それでもさらにブドウ糖が押し寄せてくると、ブドウ糖はインスリンの働きで中性脂肪に変換されて、肝臓に脂肪として蓄積されるのです。こうして「脂肪肝」が進んでいきます。
インスリンは別名「肥満ホルモン」と呼ばれます。インスリンの働きは、ブドウ糖を細胞の中に取り込むことですが、余ったブドウ糖を中性脂肪に変えることもまた重要な役割。わかりやすく言えば、インスリンが大量に出ると“太ってしまう”のです。
そもそもの原因が同じといえる「脂肪肝」と「糖尿病」は、とても仲良しですが、“たちの悪い悪友”と呼べる関係です。糖尿病があると脂肪肝は悪化するし、脂肪肝があると糖尿病も悪化します。脂肪肝があると、インスリンの作用が弱まって、さらに高血糖がもたらされやすくなるのです。
実際、脂肪肝の人の約半数が、境界型糖尿病(糖尿病の一歩手前の病態)や糖尿病を患っています。脂肪肝を指摘されているならば、同時に糖尿病の入り口に立っていることも知っておきたいことです。
発症の10年前から血糖値スパイクが始まる
糖尿病の怖さは、「神経障害」「眼の網膜症」「腎臓病」という3大合併症を併発したり、脳卒中や狭心症、心筋梗塞という重篤な病気の引き金になったりすることです。脳卒中も心筋梗塞も「動脈硬化」が原因で、動脈硬化によって、脳や心臓の血管は詰まりやすく、破れやすくなります。
とくに“食後の高血糖”が動脈硬化の進行を早めます。食後に急激に血糖値が上がると、インスリンが大量に分泌されて、たちまち血糖値が下がります。これを「血糖値スパイク」と呼びます。
スパイクにはトゲという意味がありますが、血糖値スパイクが起きているときの血糖値の上がり下がりをグラフにすると、まさにトゲのような急勾配になっています。
まず高血糖というだけで、血管壁はダメージを受けています。そこに血糖値スパイクという刺激で、本来は体を守る働きである活性酸素が大量に発生します。異常発生した活性酸素は正常な細胞や遺伝子も攻撃。血管をさらに深く傷つけます。
対して、血管のほうも応戦すべく修復作業を進め、その過程で、血管の壁が厚く、硬くなっていくのです。これが「動脈硬化」。血糖値スパイクが繰り返されるたびに動脈硬化が進み、ひいては脳卒中や心筋梗塞に至るリスクを高めます。
しかも血糖値スパイクは、糖尿病になってからではなく、なんと糖尿病発症の約10年前から起きているといわれています。
常備すべき「神・タンパク食品」とは?
脂肪肝改善のためにも、糖尿病予防にも、血糖値の急上昇を防ぐことが重要で、それには肝臓をいたわる食事に変えることが大切です。
主食を半分にし、加糖飲料をやめれば、食後の血糖値の急上昇が抑えられ、「血糖値スパイク」を起こさない食べ方になります。
糖質とは炭水化物から食物繊維を抜いたものになりますが、肝臓をいたわる場合は、「炭水化物=糖質」と思ってもらってかまいません。ご飯はお茶碗1膳で約150g、含まれる糖質量は53.4g。
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シュガースティックで換算すれば18本分です。食後の血糖値を急激に上げないためには、1食あたりの糖質は40g程度が望ましいので、ご飯をお茶碗半分の70gにすれば、糖質量は25g。そして、食事で減らすのは基本的に主食だけ。主食を減らした分、満足感を得るために、おかずの量は増やしても大丈夫です。
「スマート外来」では、3カ月で体重を約6kg減量していく食事プログラムを勧めていますから、最初の1カ月はまず糖質の摂取を控えて余計な脂肪を減らすことに重きを置いています。
しかし、それだけでは体は弱ってしまい、筋肉が落ちて痩せにくくなります。そのため筋肉量を減らさない、できれば増やすようにしていくのが次の段階の食事方法です。
ゆるやかな糖質制限は継続しながら、毎食タンパク質が摂れるおかずを加えます。そうするとお腹も満たされるので、空腹対策にもなります。といってもタンパク質は、一度に多量に摂っても消化吸収できませんから、毎食20g以上30g以下なるようにします。
卵1個、納豆1パック、豆腐3分の1丁、無糖ヨーグルト150gは、それぞれタンパク質量が7gなので、この中から3つ選べば、タンパク質量が21gになる計算です。
なお、タンパク質摂取のために手軽に食べられる「納豆」「豆腐」「ゆで卵」「サラダチキン」「ツナ缶」「さば缶」「チーズ」は、常備しておきたい“神セブン”です。
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提供元:「肝臓をいたわる食事法」、7つのマスト常備食材|東洋経済オンライン