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2022.04.12

日本人が無意識に「呼吸の異常」に陥る背景事情|過度のストレスや不規則な生活がもたらす影響


日常的に浅くて速い呼吸になっている現代人(写真:buritora/PIXTA)

日常的に浅くて速い呼吸になっている現代人(写真:buritora/PIXTA)

実は誤解をしている人が少なくない、正しい「呼吸」と「姿勢」。不調に悩まされている場合は、この2つの要素が関係しているかもしれません。呼吸器の専門医である奥仲哲弥医師の著者『不調の9割は「呼吸」と「姿勢」でよくなる!――専門医が教える自律神経が整う「呼吸筋トレ」』より一部抜粋して紹介します。

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人間には適正な栄養摂取量があり、過食が肥満を招き健康を害することがあるように、呼吸にも適正な量や質があります。

現代人はストレスや不規則な生活から、日常的に浅くて速い呼吸=「呼吸過多」になっている人が多いと言われます。

次のチェックのような症状が一つでもあれば、呼吸過多が疑われます。

「呼吸過多」危険度チェック

【症状】

□激しい運動もしていないのに、呼吸が苦しいことがある
□静かにしていても自分の呼吸音が聞こえる
□1分間の呼吸数が25回を超えている
□あくびが多い
□気づくと口で呼吸をしている
□ため息が多いと指摘されることがある

【姿勢・体動】

□口が少し開いていることが多い
□呼吸をするときに肩が上下する
□呼吸するときにお腹も胸も動かない
□呼吸するときにお腹よりも胸の動きのほうが大きい

呼吸の乱れが続くと何が起こるのか

多くの生物にとっての「呼吸」とは、酸素を取り込み、不要となった二酸化炭素を排出するのと同時に、体の細胞に酸素を届けることを指します。生き物は酸素がなければ生きられませんし、体を動かすことができません。

また、酸素は脳にとっても必要不可欠な栄養なので、酸素の供給が滞れば脳の活動は低下します。つまり、呼吸の乱れが続けば、身体的なパフォーマンスが低下するばかりでなく、脳の働きを鈍らせ、体をコントロールする中枢としての機能や思考能力を低下させることにも、つながってしまうわけです。

呼吸や呼吸に関連する器官の働きは、その時々の体の状況や必要性を判断した、脳の中の呼吸をつかさどる神経である、「呼吸中枢」からの指令で調整されています。普通に生活している安静時に、無意識に行われる呼吸のことを「安静時呼吸」と言い、病などで息があがっているときの呼吸を「努力性呼吸」と言います。

安静時呼吸時における成人の正常呼吸は、呼吸数が1分間あたり16~20回、1回の換気量(1回の呼吸で吸ったり吐いたりする量)は400~500mLで、ほぼ規則正しいリズムをきざんでいます。医学的にこれ以外の状態は「異常呼吸」とされ、大きく以下の3つに分けられます。

「異常呼吸」の3分類

(1)呼吸回数の異常
無呼吸、徐呼吸のほか、比較的よく見られるのが「頻呼吸」です。1分間あたりの呼吸数が25回以上になり、1回換気量が低下します。ハァハァといった呼吸で発熱時や興奮時、不安な心理状態のときなどに見られます。

無呼吸の代表的なものは「睡眠時無呼吸」です。眠っている間に、肥満などが原因で上気道がふさがって、息ができなくなります。息が止まっているので、ハラハラしていたら、いきなり「グオォォォ~!」と、大きく息を吸うような、いびきをかくのが特徴です。

睡眠時無呼吸のなかでも、閉塞性は肥満の人や中年男性に多いと思われていますが、東アジア人はあごが小さく、もともと気道が狭い人が多いことから、女性でも起こりえます。

(2)呼吸の深さの異常
一番よく知られているのは「過呼吸(過換気)」でしょうか。過呼吸は、無意識に呼吸回数が増える状態で、1回の換気量は少し多くなるか、あまり変わらないという特徴があります。

「過換気症候群」は精神的な不安や緊張などを感じているときに、自分の意志とは無関係に換気量の大きな呼吸(過呼吸)を、速くたくさんしてしまう結果、引き起こされる病と言えます。

(3)呼吸様式の異常
代表的なのが、「起座呼吸」です。横になって寝ているよりも、座ったほうが呼吸するのがラクな状態を指します。

座った姿勢のほうが胸郭(肋骨などで構成される肺や心臓を守る部分)の稼働範囲が広くなり、肺の下にある横隔膜が動きやすくなるためで、気管支喘息の発作時や心不全、肺うっ血のある患者さんにみられます。

ストレスやプレッシャーがもたらす「浅くて速い呼吸」

さて、病的な異常呼吸とまではいかないまでも、現代人は、安静時にも呼吸が浅く速くなる「呼吸過多」が増えているようです。

さらに昨今のコロナ禍では、長期にわたる自粛生活で活動量が低下し、過剰な衛生思考、メディアやSNSで流れてくるネガティブな情報、在宅ワーク等による環境の変化で、いままで以上にストレスが溜まっている人も、多いのではないでしょうか。

私は時々埼玉の病院まで、手術のお手伝いをしに行くことがあります。東京から埼玉に向かう電車は下りなので席はガラガラです。

好きな漫画雑誌を買ってルンルンと乗り込み、吊り広告を眺めたり、風景を眺めたりしながら、到着するまでの数十分の至福の時間を、ゆうゆうと楽しむことにしています。

ところが、乗ってくる人たちを観察していると、ほとんどの人がずっとスマホを見ています。スマホの情報は、高速道路で事故が起きたとか、これからどこかでゲリラ豪雨が降りそうだとか、誰それが金メダルを取ったとか、自分に直接関係のない情報がバンバン入ってきます。

現代では、いらない情報のほうが、こちらを追いかけてきて、つねに情報を知っていないといけない脅迫観念に、つねにかられてしまう……そんな状況が日常になっているのだと思います。このストレスやプレッシャーは、浅くて、速い呼吸をもたらします。

呼吸が浅く、速くなってしまう理由として、

(1)自律神経の乱れによる心身の緊張状態の持続

(2)スマホやパソコン作業による長時間の前かがみ姿勢

(3)マスク生活での不快感、閉塞感、息苦しさから来る口呼吸

などが、主に考えられます。

過度のストレスや不規則な生活は、自律神経のバランスを崩し、呼吸が乱れる原因となるのです。

自律神経は生命維持に欠かせない、呼吸、血液循環、体温調節などを司る神経です。体の働きを促す交感神経と、休ませる副交感神経から成り、自然に私たちの体を守ってくれています。

長時間のデスクワークがもたらす影響

人はストレスに直面すると、それに対抗しようと交感神経が優位な状態となり、肩や首の筋肉が緊張するため呼吸筋が拘縮し、比較的ラクに空気を吸える胸を使った呼吸や口呼吸を優先するようになります。

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『不調の9割は「呼吸」と「姿勢」でよくなる!: 専門医が教える自律神経が整う「呼吸筋トレ」』(あさ出版 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

・イライラを鎮めようと大きなため息を何度もつく。

・落ち着こうとして、大きな呼吸を何度もする。

・いつの間にか口を開けている。

このようなときは、だいたい口と胸を使った呼吸で、換気をしすぎている状態です。これらはすべて、息を「吐き切る」ことが苦手で、肺の中にいつも空気が残っているため、浅い呼吸しかできなくなります。浅くしか吐けないので、次の息をすぐ吸いたくなり、速い呼吸になってしまうという悪循環に陥っているのが呼吸過多です。

また、長時間のデスクワークや緊張状態がまねく猫背や巻き肩、スマホ首や反り腰、脚組みなどは、骨格をゆがませ、呼吸機能にまで影響を与えることがよく知られています。

呼吸というのは、単に空気中の酸素を取り込みやすいのか、そうでないのかだけでなく、姿勢や体型、心身の健康状態にまで影響を与えていることがわかります。呼吸は、体、心、脳と、切っても切れない関係にあるのです。

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