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2022.03.07

一流人も実践「コミュ力を高める」たった1つの事|松下幸之助、盛田昭夫も「話を聞く人」だった


今もなお精力的に取材を行うジャーナリストの田原総一朗氏が実践するコミュニケーション術とは……(撮影:坂本禎久)

今もなお精力的に取材を行うジャーナリストの田原総一朗氏が実践するコミュニケーション術とは……(撮影:坂本禎久)

取引先との盛り上がらない商談、同僚との疲れる会話……。会話やコミュニケーションがうまくいかず、ストレスを抱える人は多いでしょう。「そんなコミュニケーションの悩みを解決する方法がある」と言うのが、ジャーナリストの田原総一朗氏です。

田原氏は多くの政治家や起業家、専門家らと接するなかで、コミュニケーションにおいて大事なことを学んだと言います。それはいったい? 氏の新刊『コミュニケーションは正直が9割』をもとに、3回にわたって解説します。今回は1回目です。

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多くの人がコミュニケーションを、単なる会話としか考えていないのではないでしょうか。コミュニケーションは、もちろん会話が必要です。でもその前に、もっと大事なことがあります。

それは、相手に対する向き合い方、スタンスです。どういう目線で、どういう立場で相手と向き合うかで、相手の見え方が変わってきます。自ずと会話の中身が変わってくるでしょう。

陳情に来たすべての人の話を聞いた田中角栄

たとえば、元首相の田中角栄さんは官僚の名前、誕生日、出身地まですべて頭に入っていたといいます。驚くべきは田中さんの頭脳ではなく、彼の官僚たちに対する向き合い方であり、スタンスでしょう。

田中さんは陳情に来た人すべての話を聞き、帰るときには玄関まで見送りに出たそうです。あるとき、地元新潟のおばあちゃんが1人でやって来ました。そのときも話を聞いた後、見送りに出ました。秘書の早坂茂三さんがその姿を見て、「おばあちゃんの見送りぐらい秘書がやるから、オヤジはそのぶんの時間をほかに回してくれ」と言うと、田中さんが一喝したというんですね。

「あのおばあちゃんは、地元に帰って『角栄が自分のためにわざわざ見送りに出た』と、近所の人たちに吹聴するだろう。俺の代わりに票を集めてくれるんだ。政治家にとって、それがどれだけ大事なことかわからないのか!」

早坂さんは目からうろこが落ちると同時に、田中さんの凄さを再認識したそうです。

田中さんは印象的な演説で、多くの人の心をつかみました。それは事実ですが、口先だけのテクニックであれほど多くの人の心をつかめるでしょうか? 彼は掃除係の1人ひとりにも挨拶をしていたそうです。

そんな人に対する向き合い方、スタンスが滲み出ているからこそ、彼の言葉に耳を傾け、多くの人が心を動かされたのです。だから日本で一番優秀な頭脳集団の大蔵省(当時)の官僚たちが、全員、小学校卒業の田中角栄にコロリとやられてしまうわけです。

議員立法を33本成立させた影に官僚あり

彼は議員立法を33本成立させました。この記録は断トツであり、おそらくこれを破る政治家は今後出てこないでしょう。それは彼の能力もありますが、必死になって田中角栄をサポートした官僚たちがいたからこそなんですね。

それに比べると、昨今のリーダーたちの態度はどうでしょうか? 官僚の思惑に流されないという姿勢はいいとしても、人事などの力で押さえつけ、彼らを無視して政治を進めます。それではもともとプライドが高く、保身と出世が第一の役人が、本来の能力を前向きに発揮しようとは思わないでしょう。

「政府も与党も、官僚に対していい向き合い方をしていません」と田原氏(撮影:坂本禎久)

「政府も与党も、官僚に対していい向き合い方をしていません」と田原氏(撮影:坂本禎久)

下手に自分が前に出たり、政治家にアドバイスしたりしたら、火の粉が自分に降りかかって来かねないわけです。官僚はもはや政治家が何をしようが、失敗するまで黙っています。そして心の中で、「そら見たことか」とほくそ笑んでいるんですね。

残念ながら、政府も与党も、官僚に対していい向き合い方をしていません。同時に官僚も政治家に向き合っていません。お互いに相手に対するリスペクトだとか、存在を認めて受け入れるというスタンスが乏しいわけです。もはやコミュニケーションが成立しておらず、これでは政治も行政もうまくいくはずがないでしょう。

そもそも相手に向き合っていないのですから、口先だけの美辞麗句を弄しても、相手に響くことはありません。政治家と官僚の関係を例にとるまでもなく、親と子、先生と生徒、職場の上司と部下、仲間や友達同士……私たちの人間関係はすべて同じことです。

コミュニケーションの達人になるには、話し上手になるより、聞き上手になることです。面白いことに、雄弁で知られる政治家や経済人ほど、ふだんは聞き上手の人が多いのです。

かつて総理大臣だった中曽根康弘さんを初めて取材したときのこと。当時私はまだ40代であり、中曽根さんから見れば青二才のジャーナリストにすぎませんでした。ところが中曽根さんは私の話を聞き、大学ノートを取り出すと、深く頷きながらメモを取り始めました。一国の総理大臣が私の言葉をメモしている。そう考えただけですっかり舞い上がってしまいました。

中曽根さんはどちらかというとワンマンで、自分の意見を押し通すタイプに見られがちです。そのギャップと意外性に、すっかり中曽根さんに対する印象が変わってしまいました。

成功している経営者の人たちも、聞き上手な人が多かった。「経営の神様」といわれていた松下幸之助さんもその1人です。いまから40年ほど前になりますが、その松下さんから、「今度松下政経塾を作るのだけれど、あなたの意見を聞かせてほしい」と頼まれました。

そこで京都のPHP研究所に行って話をしましたが、当時松下さんは80歳を超えていて、私は40代でした。ところが松下さんは子ども以上に年の離れている私の話を、真剣に聞いてくれました。東京に帰って来て、「もう一度あなたの話を聞かせてくれませんか」と依頼があり、再度京都で講演した記憶があります。

「相手の話をよく聞くこと」で情報を得る

ソニーの創業者の1人である盛田昭夫さんも、実に話を聞くのがうまかった。飛行機や新幹線などで乗り合わせると、わざわざ私の隣の席の人に「席を譲ってもらえませんか」と交渉するんですね。それで私の横に座ると、「いまの政治はどうなのか?」「どんな人物がキーパーソンか?」「その人物の魅力は?」などと矢継ぎ早に質問してきます。もはや私が取材を受けている感じでした。

政治家にしても経営者にしても、成功している一流の人たちほど人の話をよく聞きます。相手の話をよく聞くことで情報を得るわけです。それだけでなく、「この人は真剣に自分の話を聞いてくれる」という、相手からの信頼を得ることができるのです。

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コミュニケーション力を高めるならば、まず相手の話をよく聞くことから始めることでしょう。その際には、相手の話に対して相槌をしっかり打つことが大事です。そして場合に応じてしっかりとメモを取ります。

さらに相手に話を促す場合には、「つまり○○○ということですか?」「それは○○ということでしょうか?」などと、話を自分なりに解釈して再び相手に投げかけると効果的です。すると、相手は「自分の話をよく聞いて、しっかり考えてくれているな」と感じ、さらに話したくなるのです。

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提供元:一流人も実践「コミュ力を高める」たった1つの事|東洋経済オンライン

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