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2021.08.20

「なんでも大ごとにしてしまう上司」に欠けた視点|人はネガティブな声ほど過剰な反応をしがち


「問題解決」に焦りすぎる人に欠けている視点と、「問題」の調査の基準を解説(写真:takeuchi masato/PIXTA)

「問題解決」に焦りすぎる人に欠けている視点と、「問題」の調査の基準を解説(写真:takeuchi masato/PIXTA)

たった1つのクレーム。現場が上に報告すると、「すぐに謝罪して、解決策を考えろ」と言う上司がいます。はたしてこれは正しい行動なのでしょうか?

このほど『入社1年目から差がつく問題解決練習帳』を上梓した、日本最大級のビジネススクール、グロービス経営大学院で教鞭を執る岡重文氏が、「問題解決」に焦りすぎる人に欠けた視点を解説します。

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そのクレームは「問題」じゃないかもしれない

ある日、あなたのもとにクレームがメールで届きました。「たまたまではないか」と思いつつ、上司に報告したところ、すぐに謝罪のメールを出し、サービスに問題がないかを点検するようにと指示をされました。

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通常業務に加えて、何が起こっているのか調査し、解決策を検討しなければなりません。しかし、その「問題」は本当に問題なのでしょうか。もしかしたら、たまたま発生しただけかもしれません。その場合、新たに加わった業務は余計な労力になってしまいます。

どうしたらこういった状況を避けられるでしょうか。

ここでは、「問題解決」に焦りすぎる人に欠けている視点を解説します。いずれも基本的なことばかりです。読んでしまえば、当たり前のことと感じる人も少なくないでしょう。ただ基本的なことは、得てして頭ではわかっているけど、ついサボってしまいがちです。そして、いざやってみるとすぐにはできなかったりします。

最初は少し面倒かもしれませんが、慣れるとすぐにできるようになるので、次の2つの視点を意識してみてください。

欠けた視点(1) 「何かが起こる可能性はつねにある」と考えられていない

環境はつねに変化していますので、何かが起こる可能性はつねにあると考えておけることが重要です。何か平常時と違うことが起こるということを想定しておくことで、過剰に反応することを防ぐことができます。平常時の状況をしっかりと認識し、「いつも」と違ったことが起こらないか、その変化を敏感に捉えるよう心がけておきましょう。

欠けた視点(2) 予兆と発生していることを分けて考えられない

しかし、何かが起こっているかもしれないということと、それが本当に起こっているかは分けて考える必要があります。大騒ぎをしてしまう原因はここにあります。

いつもと違う情報=予兆が確認できたら、次は、それは本当に起こっていることなのかをきちんと確認しましょう。最初の1人目の情報は、考えるきっかけを与えてくれるという意味ではとても重要ですが、本当に起こっていることか、たまたま起きたことなのかを見極めなければなりません。

往々にして、1つの事象がすべてであるかのように受け止めて、過剰な対応をとるということが発生します。とくにネガティブな声の場合はその傾向が強まります。予兆は予兆として大切にするものの、騒ぎすぎないよう注意しましょう。

(出所:入社1年目から差がつく問題解決練習帳)

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どう調べればいいのか

それでは、次の例題に取り組んでみてください。

あなたは、1000名の登録会員をもつ、あるWEBサイトを運営しています。今回、サイトのリニューアルを行ったところ、使い勝手が悪くなったという声が会員から上がってきました。予兆として、使い勝手が悪くなったという情報を得たことになりますので、実際に、多くの会員が同じように感じているのか情報を収集するべく、アンケートを実施したいと考えています。さて、何名からアンケートがとれるといいでしょうか。
理想は、1000名全員の情報収集ができることが望ましいです。登録している全員から情報が得られればそれが「すべて」になるからです。

統計の世界でも、全数を調査するというアプローチがあります。しかし、全員から情報を収集することは労力もかかるため、例えば、100名であるとか、300名であるとか、全対象の一部の情報から全体を推測するといった手法もよく使われます。また、時間がなく、費用もかけられない、でも、何も調べないよりはいいので、とりあえず20名に聞いてみるということもあるでしょう。

ここで大切なことは、全員に対して、どの程度の割合の情報を得ているかをきちんと理解していることです。20名の場合は、全体の2%の人の声しか聞けていない、100名の場合は、10%の人の声は聞けているということをしっかりと理解したうえで、調査結果に解釈を加えていきましょう。

例えば、前者の場合は、ある傾向が見えたとしても2%でしかないので、少し慎重に判断をする必要があります。逆に、後者の場合は、全体の10%には聞くことができているので、ある程度見えてきた傾向を信じてもよさそうです。このように全体に対して、どの程度の割合の情報を得ているのかということを押さえて、解釈の程度をきちんと考えるようにしておきましょう。

最後に調査に際して、いくつかの留意点を紹介しておきます。

留意点(1) 対象者は偏らないようにする

一部の人しか調べられない場合は、調べられた人の属性が偏っていないということが重要です。調べたい集団が、年齢層が幅広い集団であるならば、たとえ一部の集団を調査するとしても幅広い年齢層の構成である必要があります。

若手に偏る、年配者に偏るといったことが起こってしまうと、調べた対象は、集団の全体を表しているとは考えにくくなるからです。調べたい集団と同じような構成比になるように選ぶといったことが必要です。乱数を使って、恣意性が働かないようランダムに選ぶといった工夫などがよくなされます。

留意点(2) 何件調べればよいかは母集団の大きさに依存する

全体の母集団が100名の場合の10件と全体の母集団が20名の場合の10件では、10件の意味が異なってきます。前者は、全体の10%、後者は、全体の50%になりますので、同じ10件でも後者のほうが全体を表していると考えてもよさそうです。

このように何件調べればよいのかは、調べたい母集団の大きさによって変わります。詳細な数式などは割愛しますが、類推したい母集団の大きさごとに、調べればよいデータ数は統計的に算出されます。

大体の類推が可能な数は400名弱

何かの比率(例:1年以内に不具合を経験した人の割合)を求めたい場合、許容誤差を5%とすると、95%の信頼性でという前提の下では、100名の母集団を理解するためには、80名、約8割のデータが必要になります。これが、母集団が、1000名の場合は、278名と3割弱、1万名の場合は、370名、4%弱となります。必要なデータ数は、母集団の人数が増えても、それほど増やさなくても大丈夫ということになります。

また、10万名の場合は、383名、100万名の場合は、384名と母集団が10万から100万に増えたとしても、調べなければならない数は1名しか違いません。つまり、400名弱のデータがあれば、逆に母集団がどれだけ大きくなろうとも大体、数的には類推が可能な量であるということを理解しておきましょう。なお、許容誤差を3%、1%とせばめていくと必要な人数が増えることも知っておきましょう。

加えて、確認できる事象自体が希少なものも存在します。何万人に1人といった病気などや異常になることが非常に低い確率でしか発生しないものです。また、年間で1回程度しか発生しないもの、1年単位でしか試行が繰り返せないものなどもあります。

いくつのデータがあればいいのかと考えるだけでなく、そのデータはどの程度発生するのか、扱っている事象はどういう性質のものなのかといったことも合わせて考えるようにしましょう。

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提供元:「なんでも大ごとにしてしまう上司」に欠けた視点|東洋経済オンライン

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