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2021.05.25

食事の“組み合せ”で高血圧を防ぐ!話題のDASH(ダッシュ)食を管理栄養士が解説


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高血圧は、生活習慣病による死亡リスクを高める要因の一つです。実は、日本の成人の二人に一人は高血圧であることはご存知しょうか?2011年に医学誌ランセットに報告された研究論文では、もし日本人の高血圧が完全に予防できれば、年間10万人以上の死亡を防ぐことができると推計されています。

日本人の食生活は、高血圧の大きな原因となる“食塩”が多い傾向があり、高血圧の予防には、減塩が欠かせません。そのほかにも、肥満、飲酒、運動不足、ストレスや遺伝的体質などが組み合わさって起こると考えられています。食事を含めた生活習慣の改善は、高血圧の改善・重症化予防のみでなく、発症予防においても重要です[1, 2]。

そこで、今回は高血圧の予防に効果的であると、近年注目を集めている“DASH(ダッシュ食)食”について、どのような食事内容なのか、日本人が取り入れる場合はどのようにするのが好ましいか、などについてご紹介します。

“DASH食”って、一体なんなの?

DASH食とは、Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事方法)の略語で、米国保健福祉省の米国国立衛生研究所に属する国立心肺血液研究所が、高血圧を予防・治療するために考案し、推奨している食事療法のことです。血圧を下げる効果について数多くのエビデンスがあり、さまざまな国の高血圧治療ガイドラインで取り上げられています。

具体的には、全粒穀物、野菜、果物、低脂肪乳製品、魚、鶏肉や豆類、種実類の習慣的な摂取を心がけ、脂肪の多い肉、全脂肪乳製品、飽和脂肪が多い食品、砂糖入り飲料・菓子をなるべく控える食事パターンのこと。DASH食は血圧を下げるだけでなく、骨粗しょう症、がん、心臓病、脳卒中や糖尿病の予防といったほかの健康上のメリットもあることが明らかになっています[3]。

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“DASH食”の高血圧予防の鍵を握る栄養素

DASH食では、減塩をしながら、血圧を下げる働きがあるカリウム、カルシウム、マグネシウムの3つのミネラルが豊富な食品を積極的に摂ることを奨励しています。そして、食物繊維、タンパク質も積極的に摂りたい栄養素とされています。脂質の種類についても重視されており、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸、総脂肪の摂取を控え、魚油由来の n-3系脂肪酸〔エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)など:別名オメガ3〕を多く摂ることを勧めています。単独では血圧低下効果が弱い栄養素でも、組み合わせて摂取することによって、大きな血圧低下効果を示すと考えられています[3, 4]。

☆美腸にも〇 オメガ3を上手に取り入れるコツはこちらから

毎日の食生活に取り入れるにはどうしたらいい?

DASH食は、身近な食料品店で入手できる一般的な食品を使用して簡単に実行できる食事法です。ここでは、米国の国立心肺血液研究所が推奨している、DASH食を取り入れる際の流れを簡単にまとめてお伝えします。

☆DASH食のガイドラインについて詳しく知りたい方はこちら(英語サイト) ※外部サイトに遷移します

(1)自分の性別・年齢・身体活動レベルから、1日に必要なカロリー(エネルギー)確認する。
(2)1日に必要なエネルギー量に合わせた、各食品群の摂取目安量を確認する。
※食品群には、穀物、野菜、果物、無脂肪または低脂肪の乳製品、赤身の肉・鶏肉・魚、種実類・豆類、油脂、お菓子・砂糖の8つのカテゴリーがある。
(3)各食品群の目安量と食品例を確認し、目安量に沿って1日の食事にそれぞれの食品を取り入れる。

ここで注意しないといけないのは、DASH食はアメリカ人の食事を想定して作られており、日本人の食事において同様な効果が期待できるとは限らないことです。「日本人の食事摂取基準」や「高血圧治療ガイドライン」など日本人向けに作成されたガイドラインも併せて参考にすることが大切になるため、すでに高血圧と診断されている方や他の疾患がある方は、医師や管理栄養士に相談したうえ、食事の改善に取り組むことをおすすめします[3]。

なるべく早く、高血圧の予防に意識を向けて

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高血圧は自覚症状がほとんどなく、自分ではなかなか気がつけないのが恐ろしい点の一つです。そのため、毎年健診をきちんと受ける、血圧計を購入して自宅で定期的に測るなどして、早めに異変に気づけるようにすることも予防の観点から重要です。

また、DASH食は、心臓の健康に良いライフスタイルの一部にすぎません。DASH食に加えてほかのライフスタイルの改善と組み合わせると、高血圧の予防・改善に一層役立てることができます。そのためには、喫煙や過度な飲酒を避け、適度な運動、十分な睡眠、ストレス軽減、肥満予防にも目を向けましょう。

無理せずできることから取り入れ、日々の食習慣の乱れを少しずつでも改められるよう、意識をしてみてくださいね[5]。

【参考文献】(2021年5月14日閲覧)

[1] 厚生労働省「e-ヘルスネット|高血圧」 ※外部サイトに遷移します

[2] 厚生労働省「e-ヘルスネット|栄養・食生活と高血圧」 ※外部サイトに遷移します

[3] National Heart, Lung, and Blood Institute. DASH eating plan. ※外部サイトに遷移します

[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版|高血圧」 ※外部サイトに遷移します

[5] 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン 2019」 ※外部サイトに遷移します

【プロフィール】管理栄養士 藤橋ひとみ

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I’s Food & Health LABO. (アイズフードヘルスラボ)代表
毎日の食事で心身のトラブルを予防・改善できる社会の実現を目指し、フリーランスの管理栄養士として活動中。 東京大学大学院、医学博士課程在籍。EBN(科学的根拠に基づく栄養学)の考え方を大切に、コラム執筆・監修、メディア出演等、健康情報を伝える活動や、食と健康の専門家のスキルアップ支援を行う。大の大豆・発酵好きで、国内外にてその魅力を発信している。著書「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ」

I's Food & Health LABO. ※外部サイトに遷移します

ブログ ※外部サイトに遷移します

記事提供:リンクアンドコミュニケーション

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