2021.05.12
1日8時間、何をどれだけ食べてもよいの?管理栄養士が話題の“8時間ダイエット”を解説!
ここ数年、ブームが続いている“ファスティング”。みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?酵素ドリンクやサプリメントなど、さまざまな関連商品も広く販売されており、すでに実践経験がある方も増えているようです。
そこで今回は、改めて“ファスティング”の基本を確認するとともに、最近話題の“16:8間欠的ファスティング(8時間ダイエット・オートファジーダイエット)”について解説をしていきます。
今さら聞けない“ファスティング”の基本
そもそも“ファスティング”を日本語に直訳すると“断食”になることから、この2つ
が混同されがちですが、これらの違いはご存知でしょうか?
広辞苑によると、“断食”とは“宗教上の慣習として、また祈願・抗議などをする時に、一定の期間食物を食べないこと”を言います。つまりは、イスラム教徒が行うラマダーンに代表されるような、基本的には水以外は何も口にしない自発的な絶食行為のことを指すようです。
それに比べ、“ファスティング”には今のところ明確な定義はなく、さまざまな実践方法があります。例えば、最もよく知られているのは、数日間連続したファスティング期間をとり、その期間は絶食するわけではなく、固形物を食べない代わりに酵素ドリンクなどで栄養を補給する方法です。この方法では、身体への負担を軽減するために前後に準備期、回復期を設けます。ほかにも、週に何日か絶食日を作る方法や1日のなかで絶食時間を決める方法のような“間欠的ファスティング”も最近メディアなどで話題に上がることが増えています。
“ファスティング”を取り入れる目的は、ダイエットだけにとどまらないようですが、摂取エネルギーが減り、減量効果を狙えることから、ダイエッターに人気を博しているようです。
しかし、本当に“ファスティング”は減量効果が期待できるのでしょうか?やり方によって効果が異なることが想定されるため、今回は“ファスティング”のなかでも、別名“8時間ダイエット”、 “オートファジーダイエット”としても最近注目を集めている“18:6間欠的ファスティング”について、取り上げてみたいと思います。
今、“16:8間欠的ファスティング”が注目されている理由とは!?
一般的に知られている“16:8間欠的ファスティング”とは、1日24時間のうち16時間食べない時間を作り、8時間の間で1日の食事を済ませるというもの。食べる時間だけを意識すれば良いシンプルでわかりやすいダイエット法である点や、比較的制限が少なく継続しやすい点から、ダイエッターの中で爆発的な広がりを見せているようです。
ダイエット効果は本当にあるの?
“16:8間欠的ファスティング”の効果を検証するために、人を対象に行われた研究の数はまだ僅かであり、エビデンスとしては十分ではありませんが、過体重または肥満の数名〜十数名を対象とした小規模な研究では、1日の摂取エネルギーを減少させ、体重・体脂肪を減少させる可能性があることが示唆されています[1-4]。
一方、米国の過体重または肥満の成人約120名を対象に行われた臨床試験では、正午〜午後8時までの8時間の間で全ての食事をとった群では、時間制限を行わなかった群と比較して、12週間後にわずかな体重減少が見られたものの、効果があるとは言えない結果となりました[5]。
このように、研究結果がばらついているため、ダイエット効果の有無に関して結論は出せませんが、このダイエット法で減量を成功させるために最も気を付けるべきなのは、8時間のなかで何をどれだけ口にするかだと考えられます。
ネット上では、8時間の間であれば何をどれだけ食べてもOKといった甘いセリフが並んでいますが、実際のところはそうではありません。
ダイエットの際の基本ではありますが、取り組む際には特定の食品ばかりを食べる、または避けたりするなど、極端な食事をするのではなく、主食・主菜・副菜のそろった食事を基本にバランスを整え、調理法や菓子・アルコールなどの摂り方も見直すことが大切です。また、食事を摂らない16時間の間にしっかりと水分補給をすることを忘れないようにしましょう。その際の飲み物には、清涼飲料水や乳飲料ではなく、水や無糖の炭酸水、お茶、コーヒーなどのカロリーがないものを選ぶことを忘れずに[6]。
ダイエット目的で“ファスティング”を実践する際の注意点
“ファスティング”にかかわらず、どんなダイエット法であっても共通して言えることではありますが、健康を損なわないためには、実践する前に次の2つを確認しておくことが大切です。
(1)自分にとって本当に必要なダイエットなのか確認する
ファスティングを始める前に、自分にとって本当に必要かどうかチェックをしてみましょう。
体重管理の目標とするBMI(※)が、適正な範囲内(18~49歳:18.5~24.9、50~69歳:20.0~24.9、70歳以上:21.5~24.9)であり、特に健康診断で腹囲や血圧、血糖、血中脂質などの異常が見つからなかった場合は、食事を大きく変える必要はありません。しかし、体力や気力が以前より減ったと感じる方は、食事の内容や生活の質を見直してみても良いでしょう[6]。
※BMI(Body Mass Index:ボディマス指数):体重(kg)を身長(m)の2乗で割って算出した値
(2)無理な目標設定をしない
イメージしている減量目標に無理はありませんか?極端なダイエットは、一時的には効果が出たとしてもリバウンドしやすいだけでなく、健康を損なう恐れがあります。
特に近年、若い女性の「やせ(低体重)」が問題視されています。細身のモデル体型を目指すあまり、極端に体重を落としすぎてしまうと、卵巣機能の低下や低出生体重児を出産するリスクだけでなく、高齢期の要介護の原因に繋がる可能性があるため注意が必要です[6,7]。
自分に合ったダイエット法を見つけましょう!
今回ご紹介をした“ファスティング”のほかにも、さまざまなダイエット法が次から次へと出てきますが、流行りのダイエット法を手当たり次第に試すのではなく、まずはその方法が本当に自分に合っているのかを、一度落ち着いて考えてから取り入れるようにしてみましょう 。どのような方法であっても、即効性を求めすぎずに、無理のない範囲で継続することが大切です[6]。
【参考文献】(2021年4月30日閲覧)
[6] 厚生労働省「e-ヘルスネット|健康的なダイエット」 ※外部サイトに遷移します
[7] 厚生労働省「e-ヘルスネット|ダイエット」 ※外部サイトに遷移します
【プロフィール】管理栄養士 藤橋ひとみ
I’s Food & Health LABO. (アイズフードヘルスラボ)代表
毎日の食事で心身のトラブルを予防・改善できる社会の実現を目指し、フリーランスの管理栄養士として活動中。 東京大学大学院、医学博士課程在籍。EBN(科学的根拠に基づく栄養学)の考え方を大切に、コラム執筆・監修、メディア出演等、健康情報を伝える活動や、食と健康の専門家のスキルアップ支援を行う。大の大豆・発酵好きで、国内外にてその魅力を発信している。著書「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ」
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記事提供:リンクアンドコミュニケーション
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