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2021.05.24

「1時間超の昼寝は死亡リスク3割上昇」の衝撃事実|大人に昼寝は本来不要、夜寝の質向上が重要


良質な睡眠をとる方法を解説します(写真:Fast&Slow/PIXTA)

良質な睡眠をとる方法を解説します(写真:Fast&Slow/PIXTA)

よい睡眠を確保することが重要だということは多くの人に知られていますが、昼寝を1時間以上する習慣のある大人は、習慣のない人に比べて死亡リスクが高まるという研究結果が出ているのをご存じでしょうか。

そもそも「昼寝は子どもの成長には必要だが、もう十分に体が大きくなっている大人は、夜間の睡眠だけで十分」と内科医の橋本将吉氏は指摘します。新著「心と体のあらゆる不具合を最先端医学でみるみる解決 ドクターハッシー流 すぐ元気MAXになれる61の科学的法則」を上梓した橋本氏が、よい睡眠をとる方法を解説します。

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昼寝は1時間以内にとどめるほうが安全

睡眠に関して興味深い研究報告を1つ紹介しましょう。2020年8月に開催されたヨーロッパ心臓病学会で、中国の広州医科大学が、昼寝と心血管疾患および全死亡リスク(すべての原因による死亡率)との関連を検討した20件の研究論文を総合的に解析した結果を発表しました。

この研究によると、昼寝を1時間以上する習慣のある人は、昼寝の習慣のない人に比べて心血管疾患の発症リスクが34%、全死亡リスクが30%も高いことが明らかになったのです。

夜間の睡眠時間を考慮して解析すると、夜間の睡眠時間が6時間以上の人においてのみ、1時間以上の昼寝が全死亡リスクの上昇と有意な関連があることが判明。全体では、昼寝の時間の長さに関係なく、昼寝の習慣がある人では、習慣がない人に比べて、全死亡リスクが19%増加したのです。

この関連性は、特に女性と65歳以上の高齢者において顕著で、昼寝の習慣のある女性全死亡リスクが22%、高齢者では17%増加していました。

研究チームは、昼寝がどのようなしくみで体に悪影響を及ぼすかは不明としながらも、昼寝と高血圧や糖尿病の発症、全体的な健康レベルの低下との関連性などを示した先行研究があることを紹介。「われわれの研究成果から言えることは、昼寝をするのであれば1時間以内にとどめるほうが安全だということだ」と結論づけています。

この研究で特に注目したいのは、「なぜ1時間も昼寝をしてしまうのか」という点です。「寝る子は育つ」ということわざがあり、保育園ではお昼寝の時間が設けられていることからもわかるとおり、子どもにとって昼寝は必要です。子どもは体が大きく成長するためにエネルギーをガンガン使うので、夜だけではなく昼にも寝て、体が休んでいる間にセーブしたエネルギーを成長のために使うのは、理にかなっています。

しかし、もう十分に体が大きくなっている大人は、夜間の睡眠だけで十分。昼寝は基本的に必要ありません。無駄にダラダラと長く昼寝をしてしまう最大の理由は、夜間の睡眠の質が低く、夜にちゃんと眠れていない可能性が高いです。

睡眠の質が低いと、人並みに睡眠時間をとっていても体の疲れが抜けず、日中に眠気が押し寄せて昼寝をしてしまう。長く昼寝をすると、夜になっても眠くならず、体のリズムも乱れて、さらに睡眠の質が落ちてしまう――。長く昼寝をする人は、こうした悪循環に陥っているケースが多いのではないかと予想できます。

つまり、長く昼寝をしてしまう根本的な原因を夜間の睡眠の質の低下と捉えると、質のよい睡眠をとれていないために、睡眠中に行われるべき心身の休息や体のメンテナンスがきちんと行われず、健康面でもいろいろな弊害が生じる。その結果、心疾患リスクや全死亡リスクも上昇する、と読み解くこともできるわけです。

良好な睡眠を得るための5つの習慣

では、睡眠の質を上げるには、どうすればよいのか。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、良好な睡眠を得るための5つの習慣を推奨しています。僕も大いに共感できることばかりなので、解説を加えながら紹介しておきましょう。

(1)規的な就寝・起床時間を決める

毎日の就寝・起床時間がまちまちな生活を送っていては、睡眠リズムが乱れ、睡眠の質も低下します。日勤と夜勤をくり返すシフト勤務の人はしかたがありませんが、就寝と起床の時間をきちんと決め、毎日それを守ることが大切。

睡眠リズムを安定させるには、同じ時刻に起きることが特に重要です。夜ふかしをした翌朝も、昼まで寝ていても平気な休日も、極力いつもと同じ時刻に起きること。眠ければ、その夜は早めに寝て帳尻を合わせればいいのです。シフト勤務の人も、夜勤明けはすぐに寝てしまわず、日中も普段どおりに過ごし、眠くても短時間の仮眠にとどめておくと、夜の睡眠への影響が少なくてすみます。

(2)睡眠に関わる脳内化学物質が増加する、自然光をたっぷり浴びる

睡眠と覚醒のリズムを調節する脳内物質の代表格が、脳の松果体と呼ばれる部分から分泌されるメラトニンというホルモンです。朝起きて光を浴びるとメラトニンの分泌がストップし、体は活動モードに切り替わります。

そして、朝の光を浴びてから14~16時間ほどたって周囲が暗くなると、再び脳内でメラトニンの分泌が始まり、眠気を覚えます。つまり、朝シャキッと目覚めるには起きたらまず寝室のカーテンを開け、自然光を浴びるのが効果的なのです。

(3)適度な運動

たくさん運動した日の夜、ぐっすり眠れた経験は誰にでもあるでしょう。定期的な運動は、良質な睡眠を得るために欠かせない条件の1つ。

ただし、心拍数を上げてしまうような運動は自律神経の交感神経を活性化させ、体も興奮状態になってしまうため、睡眠を妨げてしまうことに。就寝の1~2時間前は、激しい運動はやめておきましょう。

(4)就寝前に人工光を浴びないようにすること

睡眠を促すメラトニンは夜に向けて分泌が増えていきますが、明るい光を浴びると分泌が停止します。アメリカのハーバード大学の研究では、夜に100ルクスの光を浴びただけで、メラトニンが88%も減少したとの報告もあります。トイレの照度基準(室内の全体照明に必要な明るさ)が50~100ルクスですから、100ルクスはやや薄暗く感じる程度の明るさです。

光の中でもとりわけ影響が大きいのはブルーライトで、ブルーライトを含む光を浴びると脳は「昼だ」と勘違いして、メラトニンの分泌を抑制します。就寝1~2時間前は、明るい室内照明やテレビ、パソコン、スマホなどの人工光をできるだけ浴びないようにすることが、快眠への近道です。

明るい部屋で眠ると肥満になる可能性が高くなる

ちなみに、明るい部屋で眠る女性は、肥満リスクが高いことがわかっています。特に、寝室の照明やテレビをつけっぱなしで寝ていた人たちは、暗い寝室で寝ていた人たちに比べて、5年間で体重が5kg以上増える確率が17%高く、肥満リスクは33%も高いという結果に。

睡眠不足や睡眠障害は自律神経や内分泌(ホルモン)系の調節機能を乱れさせ、肥満のリスク因子の1つになります。就寝前や睡眠中に明るい光を浴びると睡眠の質が低下して、肥満になる可能性も高まってしまうのです。

(5)寝室を涼しく、暗くし、静けさを保つ

安眠には寝室の環境も重要。寝室の温度は、夏は26~28度、冬は16~21度、湿度は季節を問わず50~60%程度が理想的とされています。

人間の深部体温(体の中心部の体温)は夕方の4~6時ごろが最も高く、眠る時間が近づくにつれて徐々に体温が低下して、体がお休みモードへと切り替わっていきます。寝室が暑いと皮膚からの放熱がうまくいかず、体温が下がらないので眠りにつきにくいのです。

寝室を暗くしたほうがよいのは、前項で説明したとおり。騒音も睡眠の妨げになります。睡眠中は騒音に対して敏感になりやすく、脳は眠っている間も音は聞こえている状態にあるといわれています。運転音が静かな家電を選ぶなど、寝室はできるだけ静かな環境になるように工夫しましょう。

僕の師匠である先生が、高齢者の患者さんたちによく言っていたのが、「睡眠は昼間に頑張って体を動かした人への『神様のご褒美』なんだよ。だから、ちゃんと運動してね」という言葉。これは名言だと思います。

睡眠の役割は、起きている間に蓄積した疲労を回復し、エネルギーをチャージすること。人間の体は、動いて疲れたぶん、休息をとるようにできています。昼間に活発に動いて疲れた人ほど、夜ぐっすり眠れるのです。

不眠の悩みで受診される患者さんたちに「運動してる?」と尋ねると、多くの方が「あまりしてないです」と答えます。僕は毎回のように「何でもいいから運動をして日中に体を動かせば、よく眠れるようになるよ」とアドバイスするのですが、「眠れないから睡眠導入剤を処方してほしい」と言われるばかりで、なかなか聞き入れてもらえません。

エネルギーを循環させることが最強の秘訣

僕が思う理想の睡眠は、昼間は活発に動き回って、夜は疲れて電池が切れたようにバタンと眠りにつくこと。ゲームでいうHP(ヒットポイント)が限りなくゼロに近づくまでエネルギーを消費したほうが、良質な睡眠がとれるのです。

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きちんと食べてエネルギー源を補充し、しっかり動いてエネルギーを消費して、きっちり寝て休んでエネルギーを回復する。そうやってエネルギーをぐるぐると循環させていくことが、最高の体調を実現する最強の秘訣だと思うのです。

現代人は、頭は疲れていても体は疲れていないので、意識的に運動する必要があります。昼間はできるだけ活発に過ごして、日中の運動量・活動量を増やすように心がけるのがいいと思います。

3階分くらいの移動であれば、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を利用する。バス停1つ分くらいの距離ならば歩く。電車では座らずに立つ。デスクワーク中も座りっぱなしで過ごさず、休憩がてらこまめに立ち上がって軽く体を動かす。外出したときは、ちょっと寄り道をして歩く時間を増やす。

ウォーキングや筋トレなどの運動を習慣にするのがベストですが、運動が嫌いでも、そんなふうにポイントをコツコツ積み重ねるようにして、日常生活の中で昼間の活動量を増やしていくことをオススメします。

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寝ても疲れがとれない人がすべき「3つのこと」

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提供元:「1時間超の昼寝は死亡リスク3割上昇」の衝撃事実|東洋経済オンライン

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