2021.02.01
ノートPCでメモを取ると学習効率が下がる理由|脳トレーナーが教える「頭がよくなる」ノート術
勉強やビジネスで役立つ効率的なノートの取り方のコツを紹介します(写真:scyther5/iStock)
人の話や講義の内容をノートに取る。この行為は学生のうちだけでなく、社会に出ても続けることになる。最近ではノートPCでメモを取る人も増えてきた。そのほうが早くてデータとして保存できるので便利と言う意見もあるだろう。
だが、専門家はノートPCでノートを取る行為に「弊害がある」と警鐘を鳴らしている。Googleやナイキ、ハーバード大学を法人顧客に持ち、『LIMITLESS 超加速学習 人生を変える「学び方」の授業』の著者でもある脳トレーナー、ジム・クウイック氏の、科学的に正しい効率的なノートの取り方をを紹介する。
『LIMITLESS 超加速学習 人生を変える「学び方」の授業』 ※外部サイトに遷移します
ノートを取る目的を理解する
最高の条件で勉強すると思い出す力が飛躍的にアップする。勉強の下準備としても勉強の効率を上げるためにも、ノートを取る力(ノート力)を高めるのはすこぶる有益だ。
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ノートを取ることの究極のメリットは、自分の語彙や考え方に合わせて情報をカスタマイズできることだ。質の高いノートは、情報を後で使いやすい形に整理したり、加工したりできる。
しかし多くの人は、効率のいいノートの取り方をしていない。やりがちなのは、ノートを書くのに気を取られて肝心の情報を聞き逃す、聞いたことを残らず書こうとする、後で使えない形で書いてしまう、といったことだろう。こうした落とし穴は、気づきさえすれば避けるのはたやすい。ここから、ノート力を強化するためのコツを順に説明しよう。
例えば同じノートを取るにしても、学期半ばの授業と試験前の復習の授業とでは、取る目的がかなり違う。同僚との週例ミーティングで取るノートと、大事な取引先へのプレゼンを控えた週のノートもおのずと異なるだろう。
ノートを取る目的がはっきりすれば、自分に必要な情報とそうでない情報の区別もつけやすくなる。
僕の作家の友人は、文字起こしのサービスを使うほうが時間の節約になるとわかりつつ、すべてのインタビューの文字起こしを自分ですることにこだわる。自分ですれば、「使える」部分だけを起こせるので、本筋と関係ない会話にその部分が埋もれてしまうのを避けられるという。
その結果、残るのは核心に近い内容だけだ。同じように、目的を意識しながらノートを取れば、取るノートすべてが自分に必要なものになる。
目的がはっきりしたら、積極的にノートを取る。必要な情報をピンポイントで聞き、後で思い出しやすい方法で書く。略語や短縮形を使うときは、なじみのあるものにすること。自分にも解読できないノートを書いてしまうことだけは避けたい。
先にも述べたが、ノートを取るときのやりがちなミスに、全部を書こうとすることがある。これには2つの明らかなデメリットがある。1つは、人間は話す速度で文字を書けないこと。平均的なアメリカ人は、1分間に10~12語を手書きし、同じく1分間に100語前後を話す。キーボードを使っても(すぐに説明するが、この方法はお勧めしない)話したことの半分ほどしか記録できない。
だがもう1つ、もっと根本的なデメリットがある。誰かの言葉をそのまま書いたら、その情報を自分のものにできないのだ。何しろ学習の最も貴重な瞬間に、脳の大部分を使って書き取りの作業をしているのだから。けれども自分の言葉でノートを取れば、情報をそしゃくし出すので、はるかに深く学習できる。
ノートPCでノートを取るな
また、書くことについて言えば、ノートは手書きをお勧めしたい。タブレット機器を(ノートを保存する目的で)使うなら、電子ペンで書こう。手書き文字をテキスト変換してくれる便利なアプリがある。ただしその場合にも、手で書くことは最も重要になる。情報をその場でそしゃくする力がつくし、そのほうが効果的であるとも証明されている。
「本研究が示しているのは、ノートパソコンは、ノートを取るだけのために使ったとしても、情報の取り込みが浅くなるので学習効果を損なう可能性があることだ」と、この問題を調査したパム・A・ミュラーとダニエル・M・オッペンハイマーは書いている。
「ノートパソコンでノートを取った学生は、手書きでノートを取った学生に比べて、概念理解に関する問題の正答率が低かった。つまり、ノートを取ること自体は有益だが、自分の言葉で要約せずに教師の言葉をそのまま打ち込んでいくパソコン利用者の傾向は、学習に弊害をもたらすのである」
そして何より、ノート力を上げるいちばんの秘訣は「真剣に聞くこと」だ。あなたは秘書としてそこにいるのではない。後で使う情報を受け取るためにいるのだ。強調されたポイントをノートに取ろう。話の主旨を理解できているかどうか確かめ、チャンスがあれば質問しよう。情報を受け取ることと、それを記録することに少なくとも同程度の注意を払えなければ、真剣に聞けたとは言えない。
ノートの取り方でお勧めなのは、僕が「キャプチャ・アンド・クリエート」と呼ぶ方法だ。紙の真ん中に線を引き、左半分でキャプチャする、つまりノートを取る。そして右半分でクリエートする、つまりノートを作る。キャプチャしたことへの気づき(これはどう使えるのか、なぜ使わなければならないのか、いつ使えるのかなど)を書き出すといい。
ひととおりノートを取ったら、すぐに見返そう。何日も放っておくより記憶の定着率が段違いに高まる。頭の中の情報がまだ新しいので、書き逃したことを補える利点もある。
ノート力を高めるコツ
ノート力をいつでもフルに活用したければ、次のTIP(コツ)を覚えよう。
・Think(考える)
ノートを取る前に、その時間から何を最も得たいかを考えよう。考えることで、目的に沿った価値の高い情報をより分けやすくなる。
・Identify(見極める)
示された情報によく耳を傾け、目的と照らし合わせて、最も重要な部分を見極めよう。前にも言ったが、全部を書こうとすると情報をそしゃくし切れないので、勉強が難しくなる。いちばん必要な情報を見極めてノートに取ろう。
・Prioritize(優先する)
書いたノートを見返しながら、最も自分のためになる情報を優先的に抜き出そう。必要ならメモを足したり、要点をまとめたりしてもいい。
この記事を読み終えたなら、早速新しいノート術を試そう。この記事をもう一度、ノートを取りながら読んでみるのはどうだろうか。TEDの動画を見ながら取ってもいい。
学んだスキルを使って、よりよいノートの取り方を習得しよう。
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提供元:ノートPCでメモを取ると学習効率が下がる理由|東洋経済オンライン