2021.01.26
仕事のできない人は文章の「型」がわかってない|書くのが苦手で遅いと悩んでいる人への処方箋
「文章を書くのが苦手」は思い込み! 短時間でわかりやすい文章を書く2つの秘訣を伝授します(写真:buritora/PIXTA)
企画書や提案書、報告書や日報、プレゼン資料、あるいはメールやチャットなど、仕事で文章を書かなければいけない機会は多くあります。
一方で、「書くのが遅い」「とにかく苦手」「なるべくなら書かずに済ませたい」という方もいるのではないでしょうか。
『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』の著者の1人、藤吉豊さんが、100冊の書籍に書かれてあった内容をもとに、「文章が苦手」「速く上手に書きたい」という人に、「伝わる文章」をスピーディに書くためのコツを解説します。
『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
とにかく速く書くためには?
文章には書き手の個性が強く出ることもあって、書く技術は職人的なものだと思われがちです。
ですが実際は、小説家たちの個性的な文章ですら、「共通のノウハウ」が意外に多くあります。「共通のノウハウ」とは、ライターのAさんも、作家のBさんも、ジャーナリストのCさんも、編集者のDさんも大切だと思っているコツのことです。
「誰でも、速く、上手な文章を書く」ための「共通ノウハウ」の中から、特に文章に苦手意識を持っている方に向けて、
「最短時間でわかりやすい文章を書くための2つのコツ」
を紹介します。
【最短時間でわかりやすい文章を書くための2つのコツ】
・「型」にあてはめる
・接続詞は「2段階」で使う
「とにかく自分は、書くのが苦手」
「書き出しで手が止まってしまって、最初の言葉を書くのに10分も20分もかかってしまう」
そんな方にオススメしたいのが、「文章を“型”にあてはめて書く」ことです。
「型」とは、「書き出しから書き終わりまでのパターン」です。
僕たちがチェックした100冊のうち、約40%の本に、
「文章は、型にあてはめて書きなさい」
と記されていました。
スタイル、フォーマット、テンプレートなど、さまざまな呼び方はありますが、文章のプロの多くが「型」を大切にしています。
型を使うメリットは、次の6つに集約できます。
1 どの内容を、どの順番で書けばいいのか迷わない
2 書くスピードが速くなる
3 文章の流れが良くなる
4 情報の過不足がなくなる
5 論理展開が破綻しにくい
6 結論がはっきりする
頭の中に浮かんだことを浮かんだ順番で書くより、型に合わせて書いたほうが、伝わりやすい文章になります。
「文章のプロの多くが使っている型」はいくつかありますが、今回はその中から、あらゆるビジネスシーンで使える
「逆三角形型」
をご紹介しましょう。
「逆三角形型」で「結論」から書く
・逆三角形型……「(1)結論 (2)説明(経緯など) (3)補足(個人の意見など)」の順に書く。
新聞記事、ビジネス文書、実用文向き。
この型の基本は、
「結論→説明」
です。
出来事の流れに沿って書くのではなく、「一番伝えたいこと」 (=読者が知りたいこと)を最初に書きます。
次に結論に至った経緯、理由、根拠、補足事項を説明します。
たとえば、会議の報告書を「逆三角形型」で書くと、次のような文章になります。
-----
【例文】
今期は、プランAを採用し、プランBについては来期に見送ることにします。
そもそもプランAは、当社のメインストリームである○○の事業に関連するもので、今期、収益化するための道筋がすでに立っております。
一方プランBは、新しい××という技術をもとにしたもので、販路拡大の可能性はあるものの、調査が追いついていないという問題がありました。
そこで、昨年12月末に各部の長で検討したところ、プランBについては時期尚早であると決定した次第です。
ただし、この決定に関して、△△部長は「プランBについては、来期の採用に向けて、なおいっそう調査を進める」とおっしゃっていました。
-----
簡単な報告書の一例ですが、この報告書を読んだ人は、真っ先に大事な情報(プランAが採用になり、プランBは延期になったという結論)を知ることができます。
途中で読むのを止めても、最低限の情報は共有されます。
書き手側も、「結論→説明→補足」の順番を意識して書いていけばいいので、必要な情報を端的に伝えることが可能です。
「文章が苦手」と思っている方の多くは、「わかりやすく書こう」という思いから、時系列で書いてしまったり、「プランA」や「プランB」の内容やいきさつなどを最初に記したりして、かえって読み手に伝わらない文章にしてしまいがちです。
型は、誰もが再現できるように一般化された知識です。型を身につけ、それに従って書くだけで、誰でもスピーディに「わかりやすい文章」 が書けるようになります。
文章が苦手という方にオススメしたい2つめのコツは、接続詞は「2段階」で使う――つまり、「とにかく一気に書いて、あとから不要な接続詞を削る」です。
文章術のベストセラー100冊の中には、「接続詞」について説いた本が20冊以上ありました。
接続詞は、文章の論理展開をはっきりさせ、わかりやすい文章を書くために、とても便利な言葉です。
【接続詞を多用するメリット】
・接続詞で文をつなぐことで、論理展開を意識しながら書くことができる
・接続詞を使ったほうが、論理が破綻しにくくなる
・接続詞のあとの文を強調できるため、伝えたいことが明確になる
一方で、「接続詞はなるべく少なくすべき」と主張する方もいます。
接続詞を多用すると、
・文章の流れがさえぎられる
・まどろっこしい印象を与える
・堅苦しさにつながる
からです。
書き慣れていない人は、
・最初は、論理展開が破綻しないように、接続詞を気にせずに書く
・読み直したときに、「なくても意味が通じるな」と思った接続詞は削除する
ようにしてみてください。例文を見てみましょう。
-----
【例文】
1月15日(金)に、全社説明会が開催され、今年はプロジェクトBに力を入れるとの話がありました。
説明会では、まず社長が登壇し、前年の業績と、そして今年の予算についての説明がありました。
その話によると、前年はプロジェクトAの成長が140%と好調で、その結果、業績は昨対110%となったそうです。しかし、プロジェクトAのような○○を顧客とする事業の成長は例外的であり、そのため、今年はプロジェクトAではなく、Bのほうに力を入れるとのことです。……
-----
必要のない接続詞を削ってみると?
この文章を見直し、必要のない接続詞(や、役割の似た言葉)を削ると次のようになります。
-----
【例文】
1月15日(金)に、全社説明会が開催され、今年はプロジェクトBに力を入れるとの話がありました。
説明会ではまず社長が登壇し、前年の業績と、今年の予算についての説明がありました。
前年はプロジェクトAの成長が140%と好調で、業績は昨対110%となったそうです。
しかし、プロジェクトAのような○○を顧客とする事業の成長は例外的であり、今年はBに力を入れるとのことです。……
-----
文章を接続する言葉を見直しただけで、ずいぶんスッキリと読みやすくなったはずです。
接続詞を削ってもよいか見分けるポイントは、大きく「2つ」あります。
(1)順接は削り、逆接(前の文と逆のことを言うとき)は残す
例文でいえば、最後の文の「しかし」が逆接にあたります。逆接の接続詞は、「次の文では、前の文とは違うことを言いますよ」という予告になるため、削ると文意が伝わりにくくなります。
一方、「そして」「その結果」など、順接の接続詞の多くは、なくても文意が伝わります。
『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP社)
『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
順接の接続詞は、文章を書く際には「次の内容を導くナビゲーター」の役割を果たし、スピードアップに貢献してくれます。しかし、読み手にとっては「なくても意味が伝わる」「ないほうが、すらすら読める」ものも多いのです。
そのため、接続詞を多用して一気に書き、書き終わったら順接の接続詞を削ると、スピーディに読みやすい文章を書くことができます。
(2)削るかどうか迷ったら、残す
ただし、削りすぎて論理関係がわからなくなってしまっては、元も子もありません。
「削ったら文章がわかりにくくなるかも」と思ったら、順接の接続詞であっても、「残す」ようにしましょう。
「文章の苦手意識は思い込み」と断言できる理由
・型に則って、一気に書き上げる。
・書いた文章から、不必要な接続詞を削る。
この2つのステップを意識するだけで、誰でも、わかりやすい文章をスピーディに書くことができます。
僕たちが、セミナー等で「型とは何か」を簡単に説明するだけで、ほとんどの方がブログのような「テーマを自分で決めなければいけない」「長い」文章を書きあげることができます。
ビジネス文章を書く場合「何を書くか」(テーマ)は決まっていると思います。テーマが決まっていれば、あとは型に則って書いて、最後に接続詞を削る。それだけで、わかりやすい文章が書けるようになります。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:仕事のできない人は文章の「型」がわかってない|東洋経済オンライン