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2021.01.13

「ストレスを放置する人」が招く最低最悪の結末|いくら体が丈夫でも「異常行動」に走るケースも


人はストレスを我慢や放置し続けるとどうなるのか?(写真:Ushico/PIXTA)

人はストレスを我慢や放置し続けるとどうなるのか?(写真:Ushico/PIXTA)

人生に「ストレス」はつきもの。できることなら「ストレスはないほうがいい」と思う人も多いでしょうが、ストレスは心や体の不調を示すアラームの役割を担っています。では、もしストレスを我慢や放置してしまうと人はどうなってしまうのか? 福島県立医科大学医学部の大平哲也疫学講座主任教授による新書『感情を“毒”にしないコツ』から一部抜粋・再構成してお届けします。

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落ち込んでいるときや疲れているとき、風邪を引きやすいことを実感している人も多いのではないでしょうか。「そういうときは免疫力が落ちているからだ」といってしまえばそれまでですが、実はそれを実証したアメリカの実験があります。

18〜54歳の健康な男女334人を対象として、ポジティブな気持ちをスコア化したうえで、全員の鼻に風邪のウイルス(ライノウイルス)をたらし、その後の風邪の発症状況を見たのです。

ポジティブな人ほど「風邪をひかない」

その結果、ポジティブな気持ちが少ない人に比べて、ポジティブな気持ちが多い人ほどその後風邪になる頻度が少ないことがわかりました(Cohen S, et al. Psychosom Med,2003)。

さらに、インフルエンザウイルスを用いた実験でも、同様の結果が得られました。ちなみに、この研究では、参加してくれたボランティアに対して1人あたり800ドル支払ったそうです。この金額をもらったら、読者のみなさんなら喜んで実験に参加しますか?

話を戻しますが、以上のことから、気持ちが前向きな人、ポジティブな気持ちを持っている人が、免疫力を上げて風邪を予防するといわれているのは確かだということがわかりました。

こういうケースは、私たちの日常生活でもよくあります。例えば、仕事が順調なときには風邪を引かないのに、仕事でミスをしたときに風邪をひいてしまったり、熱が出たりすることがあります。疲れが関係しているケースでは、普段は元気なのに、年末になると寝込んでしまったり、お子さんを産んで職場復帰をしたお母さんが、平日は仕事と子育てと家事をバリバリやっているのになぜか週末になると寝込んでしまうといったこともあります。

したがって、ある程度緊張感を持ってその状態を持続させることも、免疫力を上げるといえます。逆にいうと、気持ちが緩んだときに免疫力が下がって、病気になりやすくなるということです。

「ストレスがないほうが健康」といえば簡単ですが、私たちが生きている以上、ストレスがゼロになるということはあり得ません。実はストレスには、いいストレスと悪いストレスがあります。

試験や仕事のプレッシャーといった適度な刺激のストレスは、それを乗り越えることで自分が成長できたり人生を豊かにしてくれたりします。一方で、ハードワークや人間関係のトラブルといった不快なストレスが多くなってくると、心にも体にもダメージが出てきます。

ストレスがかかったとき、それがメンタル面に出る人と、体に出る人がいます。これは昔からよくいわれていることですが、みなさんのまわりにもどちらかのタイプがいませんか。

ストレスが体に与える影響

ストレスというと、どうしても心に影響が出る印象が強いかもしれませんが、メンタルが強い人、あるいは感じにくい人というのは確かにいます。そのような人は、得てして体に影響が出る場合が多いようです。

ストレス関連疾患は、急に出ることもありますが、自分でも気がつかないうちに少しずつあらわれることがありますので注意が必要です。例えば、会社に行くときに気持ち悪くなって吐いてしまう、電車のなかでめまいがして立っていられなくなるといったことが起こります。最初は我慢できる程度で無理して会社に向かいますが、徐々に症状がひどくなってきます。調べても体の異常はなく、最終的にはメンタルの問題だったとわかるのです。

また、ストレスや怒りを感じにくい人もいます。怒りが循環器疾患につながることは繰り返しお話ししました。怒ると血管がキュッと締まります。一方で、怒りの感情が外には出ていなくても、血管が締まってくることがあります。これは生体反応の1つです。

血管が締まってくると頭痛が起こったり、肩こりが起こったりして、怒りの感情は自覚していないのに、体の症状として強く出ることがあります。怒っているつもりはないのに、それなりに体には影響が出てしまうのです。

また、怒ることにはエネルギーを必要とします。怒りを覚える出来事があり、繰り返し怒ったあと、怒ってもどうにもならなくなってくると、「もう怒っても無駄」と思うようになります。そうすると、脳はむしろ怒らないように働きます。要は感情がなくなってくるのです。

一見いいことのように思われるかもしれませんが、感情が鈍麻した状態は脳のエネルギーが減っていることと関連するため、これがうつの要因になることもあるので、注意が必要です。

なかには、もともと自分の感情に気づきにくい人、そして自分の感情を表現することが苦手な人もいます。これは「失感情症」といって、対人関係がうまくいかずに心身症になりやすいタイプといわれています。

それとは逆に、自分の体の状態に気づきにくく、また自分の身体の状態を表現するのが苦手な人もいます。こちらは「失体感症」といって、失感情症と同様に心身症になりやすいタイプということが知られています。

病気や不調は「人の弱点」を狙う

病気や不調というのは、その人の「弱いところ」を突いてきます。気持ちが弱ければ気持ちに、体の弱いところがあればその箇所に出てきます。

例えば、心理的なストレスがあると末梢の血管が締まることが多く、筋肉が少ない女性のほうが、末梢の血流が関係する冷え性や肩こりの影響を受けやすいのです。

ちなみに肩こりはかなりストレスと関連が深いことがわかっています。肩こりと年齢との関連を見ていくと、ストレスが高いといわれている年代に圧倒的に多いことがわかります。年をとってくると、逆に肩こりは少なくなってきます。

では、体も心も強い人にストレスの負荷がかかった場合、最終的にはどうなるのでしょうか? こういった人は、最後は行動に異常が出てきます。お酒を飲む、たばこを吸う、買い物中毒になる、暴力をふるう、ギャンブルにはまるなど、行動に変化があらわれるのです。

いずれにしても、ストレスの影響はどこかに出てくるものです。どのような症状が出るのかは人それぞれですが、自分の不調がどこに出やすいかという傾向を知っておくと、それをストレスアラームとして活用することができます。

「ああ、今ストレスがかかっているから、少し休もう」など、先手を打つことができるのです。

ストレスの放置は「命にかかわる」

問題はそういった体や心の変化に自分で気づかないこと。先ほどの失体感症の人のように、自分の体のアラームに気がつきにくい人の場合に特にそうなりやすいのですが、ストレス信号を放っておくと、ある日突然、心筋梗塞になる、うつになるなど、病気と直結してしまいます。

『感情を“毒"にしないコツ』(青春出版社)

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自分の体の声に耳を傾け、自分の体を感じ取る力を上げる必要があります。そうした自分の気持ちや体の変化に鈍感な人は、血圧でも脈拍でも体重でもいいので、客観的な数値をチェックするようにする(家で毎朝血圧を測る、健康診断を受けるなど)のもおすすめです。

自分のことを健康にできるのは、自分しかいません。日頃から自分の心と体の状態に意識を向けることが、大病を小病に、あるいは未病にすることにつながるのです。

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提供元:「ストレスを放置する人」が招く最低最悪の結末|東洋経済オンライン

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