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2021.01.08

化粧水が「肌の奥まで浸透できない」納得の理由|「美容常識」のウソを形成外科医が深く解説


化粧水は本当に「肌の奥まで浸透」するのでしょうか?(写真:byryo/PIXTA)

化粧水は本当に「肌の奥まで浸透」するのでしょうか?(写真:byryo/PIXTA)

「今大注目の〇〇美容法」「〇〇が新しく開発した新成分」「シミやシワに本当に効くのはこれ!」――テレビCMや美容雑誌、コスメサイトなどにはいつも新しい単語が並んでいます。しかし、新しい美容法や成分が本当に効果があるのか見抜くのは困難です。巷に流れる美容情報をどう正しく読み解くか、現役の形成外科医であり肌の構造に精通している落合博子氏が解説します。

形成外科医から見るといまの美容常識は時々疑問

形成外科医の観点から、いま世の中にあふれているさまざまな美容情報を眺めていると、「なんでそんなことをする必要があるんだろう?」「効果があるとは思えないな」と感じることが、本当にたくさんあるのです。

たとえば、とても単純な例でいうと、わたしの場合「肌をイメージしてください」といわれたら、断面図を思い浮かべます。ちょっと怖いかもしれませんが、日々皮膚を切ったり縫ったりしているので、肌の断層が浮かぶのです。

でも、みなさんはおそらく、肌の表面をイメージするのではないでしょうか。肌表面の下がどんな構造になっているのか、肌の仕組みがわかると、美容情報の見え方もガラッと変わってきます。まずは肌の仕組みを正しく知ること。

それが、美肌を手に入れるためのいちばんの近道です。正しく知れば、巷の宣伝広告に乗せられることもなくなるでしょう。あなた自身が情報のウソホントを見極められるようになります。けっしてむずかしいことではありませんので、どうぞ安心してください。

ひとつ、みなさんに質問です。化粧品のCMなどで見聞きする「肌の奥まで浸透する」の「奥」とは、いったいどこのことでしょうか? 答えは「角質層」です。「角質層まで浸透してプルプルのお肌に」などの宣伝文句もお馴染みなので、ご存じの方も多いと思います。

ただ、わたしがここで質問するポイントは、この角質層がどれくらい「奥」にあるかという点。じつは、わたしたちの肌のいちばん表面にあるのが、この角質層(=角層とも呼ばれます)です。

「あれ? どういうこと?」と思うかもしれません。角質層まで浸透するといわれると、なんだかものすごく奥のほうまで染みわたってお肌によいような気がしてしまいますが、角質層というのは、肌表面の厚さ0.01から0.03ミリの部分を指します。

死んだ細胞の表面をうるおわせているだけ?

ここで肌の構成についてお話ししておきましょう。わたしたちの肌――皮膚は、真皮と表皮からなりたっています。そのうちの表皮が肌表面にあたる部分で、厚さは平均0.2ミリほどです。

記事画像

この肌の表面(=表皮)はさらに分類され、外側から順に「角質層」「顆粒層」「有棘(ゆうきょく)層」「基底層」の4層から構成されています。つまり、いちばん外側にあるのが角質層です。

そして、この角質層は、表皮の第4層目にあたる基底層が絶えず分裂をくりかえすことで押し上げられた“死んだ細胞”からつくられています。少々ショッキングな表現かもしれませんが、肌の表面は“死んだ細胞”で覆われているのです。

イメージ図をご覧いただいてもわかるように、角質層の次にある顆粒層より下の部分には細胞核の点が見えますが、角質層にはありません。細胞が生きていないので、血液中から栄養が補給されることもないのです。化粧水などの薬物が浸透するのは一般的に、この死んだ角質細胞で形成されている「角質層」まで。その下で細胞分裂している肌の「奥」に、届くことはありません。

また、角質層はいちばん外側にあるので、見た目の美しさを左右します。それゆえ、この角質層を一生懸命ケアしようとするわけですが、角質層はそもそも、しばらくすれば垢となって剥がれる運命なのです。実は、化粧品の管理をおこなっている「薬事法」という法律でも、化粧品が角質層(=角層)よりも奥まで浸透するという広告は禁じられています。

ですから、どんなに効果があるように思える宣伝広告でも、よく目を凝らすとかならず、「浸透するのは角(質)層まで」とどこかに明記されているはずです。多くの人が、このたった0.01~0.03ミリの死んだ細胞の表面をうるおわせるために、化粧水をせっせと使っている、ということになるわけですが、果たして意味があるでしょうか。

では、角質層のさらに奥まで届くものがあるのかといえば、特殊な医療技術を用いない限り基本ありません。というのも、皮膚本来の機能を考えると、それはあってはならないことだからです。わたしたちの肌は、そもそも何のために存在するのでしょうか? 肌の最大の役割は、「からだを守ること」。異物が体内に侵入するのを防ぐ「バリア」の役割を果たしているのが、皮膚なのです。

そのバリア機能のおかげで、わたしたちの細胞や血管、神経が守られています。全身の約16 パーセントの皮膚にやけどを負うと、致命的だといわれます。そして忘れがちですが、皮膚はわたしたちの臓器のひとつ。皮膚は体重の約30パーセントを占める、人体で最大の臓器です。

肌の持っている4つの役割

外の世界に直接触れる臓器ですから、さまざまな役割を持っているわけですが、おもには、①水分の喪失や侵入を防ぐ、②体温を調節する、③微生物や物理化学的な刺激から生体を守る、④感覚器としての役割を果たす、の4つ。

いずれも生命を維持するために必要不可欠な機能です。また、「からだを防御する」機能として、最表面にある角質層がもっとも重要な役割を果たしています。この角質層の厚さは平均0.02ミリしかありませんが、健全であれば同じ厚さのプラスチック膜と同じくらい、水分を通しにくい性質があります。

もし、角質層がバリア機能を失って何でもかんでも浸透させてしまうようになると、局所だけでなく全身が危険にさらされる可能性があるということです。実際に皮膚にバリアを超えて異物が侵入したことで、アレルギー症状を引き起こした例も報告されています。

お肉の切り身を想像してみてください。肌にバリア機能がなければ、お肉の切り身のように塩や胡椒や醬油などの下味をすり込めるということになるでしょう。そんなことが肌に起こったら大変です。肌は外界の異物からからだを守っています。そのバリアに対して、外からすり込んだり、押し込んでみたり、温めてみたり、ラップをしてみたりとがんばっても、バリアより奥深くに成分が届くことは、そもそもないのです。

そして、「からだから逃がさない」機能としても、皮脂のバリアが重要です。健全な皮膚の表面は皮脂で覆われ、脂質や天然保湿因子・水分が逃げないように守られています。しかし、一旦バリアが破壊されると保持されるべき物質が角層から外に流出し、乾燥を引き起こすのです。

肌へ化粧品の成分を浸透させようと思うと、バリアを破壊する必要があります。しかし、バリアを破壊すれば肌の大事な成分が保持できなくなり、頻回に化粧品をつけても乾燥するという悪循環を生みます。大事なのは、正常なバリア機能を邪魔しないこと。化粧品を浸透させるのではなく、バリアとなる皮脂を補強するような化粧品の使い方を意識することです。

バリア機能さえ壊さなかったら肌は美しくなる

ここまででもおわかりかと思いますが、巷にあふれている広告はとても魅力的ですが、文字どおりほとんどが「宣伝」です。たしかにさまざまな研究が進み、新しい成分がつぎつぎに登場し、あらたな効能のエビデンス(検証結果)がとれているものもあるかもしれません。しかし、肌トラブルが生じたときにいつも立ち返って思い出していただきたいのは、肌本来の役割。そう、バリア機能です。

『美容常識の9割はウソ』(PHP研究所)

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このバリア機能をしっかり維持することができれば、肌はおのずと美しくなる力を備えています。肌トラブルが生じたとしても、わたしたちの体内では絶えず細胞が生まれ変わっていますから、少し待っていれば新しい肌に生まれ変わるのです。

手術で皮膚をどんなにうまく切り貼りし、美しく縫合する技術を施せたとしても、傷が最終的にキレイに治っていく過程は、人体の自己再生力なくしてはありえません。そして、どんな肌にも、その力は備わっているのです。

ちなみに、表皮のターンオーバーは約28~30日間サイクルでおこなわれるといわれています。ですから、ちょっと乱暴ないい方をすれば、40日間肌の機能を邪魔しないように何もせずに待てばいいのです。もちろん、食べものや生活習慣、ストレスなども肌の状態に影響しますが、肌に関する正しい知識を持っていれば、何をして何をしなくていいかが、わりとスッキリ見えてくると思います。

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提供元:化粧水が「肌の奥まで浸透できない」納得の理由|東洋経済オンライン

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