2020.11.12
コロナで爆売れ中「観葉植物」を本気で選ぶコツ|「初心者でも簡単」育て方をプロに聞いてみた
コロナで爆売れする観葉植物。始めるならどこからがいいでしょうか?(撮影:梅谷秀司)
「キャンプで自然を満喫したいけど、人気で予約がとりにくい」「数年ぶりに植物園に行ってしまった」──。
先日久々に会った友人たちとのおしゃべりは、いかにこのコロナ禍で自然と触れ合うかというテーマで盛り上がった。思うように外出できない生活となってから、「自然」や「緑」を求める人が増えていると感じる。
こうした中、「観葉植物」の需要が急増しているという。ここ数年、「インテリアグリーン」などとも呼ばれ、部屋を彩るアイテムとして定番化した感もある。手軽に室内を緑化でき、切り花よりも長く楽しめるので、ステイホームを機に改めて人気が出たのには納得だ。
しかし、植物と親しむ機会がなかった人でも簡単に育てられるものなのだろうか。住宅事情によっても最適な品種は変わりそうだ。
そこで今回、観葉植物専門店「ワールドガーデン西小岩店」(東京都江戸川区)のマネジャー・力石徹さんに、聞きに行ってみた。長年「飾るなら切り花派」だった筆者のような初心者は、一体どこから手をつけたらいいものだろうか。
5月は1000組以上が来店したという観葉植物の専門店「ワールドガーデン」(撮影:梅谷秀司)
実は、観葉植物ブームは終息していたが…
──ここ数年、観葉植物がブームとなっていますね。吊るすタイプの流行など飾り方も広がり、珍しい品種を楽しむ層も増えている印象です。
もともと引っ越し等を機に買う方が多く、毎年春先が繁忙期となります。そんな中、プラントハンターの西畠清順さんのご活躍などにより植物全般に注目が集まり、観葉植物も4~5年前からブームが起き始めたと記憶しています。
個人消費はもちろん、法人需要も年々増え、業界全体は右肩上がりで成長しました。当店も平均客単価が30%上がり、大型植物から高価格帯のレア植物まで幅広く売れ、輸入品も人気が出てきていた。しかし、その活気も昨年に終息。ブームは終わったと思っていました。
ところが、新型コロナの影響でライフスタイルに制限がかかり始めた頃から再び需要が一気に高まったのです。春先から売上げは前年対比160~180%で推移し、5月は約1000組のお客様が来店しました。当店に限らず観葉植物の分野は全体的に好調です。10月に入り少し落ち着きましたが、一定期間でみるとここ数年のブームを超える勢いです。
「ワールドガーデン西小岩店」(東京都江戸川区)のマネジャー・力石徹さん(撮影:梅谷秀司)
──売れ筋や購買層に変化はありましたか。
当店は100種類ほどの観葉植物を扱っていますが、一番人気は大型サイズ。しかしコロナ禍では、小型サイズの需要も高まり、ありとあらゆる品種が売れましたね。
それまでは車で遠方からお越しになる30代のファミリー層が多かったのですが、初めて観葉植物を買う若い方や、近隣にお住まいの方、休校で毎日が暇なお子さんに買い与える人が増えました。
──最近はいろいろなお店で観葉植物が買えますが、お店を選ぶうえで注意点はありますか。
ちょっとしたアクセントで飾りたい場合には、どこで購入してもさほど変わりはないと思います。
ただ、根がしっかりと張られていない未完成の状態で出荷する生産者もいますので、シンボルツリーとなるような観葉植物をお探しの場合には、やはり専門店がよいかと思います。品質や品ぞろえ、丁寧なアドバイスが期待できますから。例えば当店では仕入れは現物チェックを原則とし、不備があった生産者との継続取引はしないようにしています。
ネットで購入する場合は、可能なら掲載画像の実物が届くのかどうかを確認されたほうが安心かと思います。
一方で最近では管理の行き届いたホームセンターなども増えています。見極めは難しいですが、やはり葉っぱが生き生きとした商品が多いお店を選ぶとよいと思います。
住宅事情が悪くても育てやすい品種は?
──初心者でも管理がしやすい品種は?
基本をおさえればたいていのものは育てられますが、当店で一番人気の「フィカス」のほか、「パキラ」「シェフレラ」「ツピタンサス」「ドラセナ」「サボテン」などは管理しやすいでしょう。先日お子さんに「オリーブ」を購入された方がいましたが、これも育てやすいです。
育てやすく、ワールドガーデンで一番人気だという「フィカス」(撮影:梅谷秀司)
手ごろなサイズの「オリーブ」などが人気だ(撮影:梅谷秀司)
──狭いお部屋におすすめなものは?
最近若い方を中心に人気だったのですが、ガジュマルやサボテンなど小型のものでしょうか。あるいはあまり葉が広がらない「ドラセナ」「ユッカ」「サンセベリア」「ポリシャス」「コルジリネ」なども置きやすいでしょう。
サボテンは種類も豊富で楽しい(撮影:梅谷秀司)
狭い部屋でも育てやすいとアドバイスいただいた「サンセベリア」(撮影:梅谷秀司)
──日当たりが悪い部屋ではどんなものを選べばいいですか。
「モンステラ」「ドラセナコンパクタ」「シダ植物」「フランスゴム」「ポトス」などは耐陰性があるといわれていますが、暗すぎる環境はNGです。光は大切なので、耐陰性が強いといわれる品種でもできるだけ明るい場所に置いたほうがいいです。
──マニアが好む品種とは?
ここ数年男性ファンを増やしているのが、個性的な形が特徴的な「コーデックス(塊根植物)」。10万円以上するものも少なくありません。ほか、「ブラックボーイ」「ビカクシダ(コウモリラン)」「ユッカ(ロストラータやアロイフォリアなど)」「サンセベリア」や「アガベ」の中でも希少性の高い品種など、通が好むものはいろいろあります。
流通量が極端に少ない品種ほどマニアが好み、高値で取引されます。例えば輸出制限がかかってしまった植物。制限前に仕入れた種で育てられた植物は、マニアの間で取り合いになります。
また、建築士や富裕層の方は、盆栽やアートを選ぶように、木の曲がり方や葉の付き方などをじっくり見て購入される方が多いです。
昨今、男性に人気のあるコーデックス(撮影:梅谷秀司)
人間やペットと同じ「生き物」という視点
──基本をおさえればたいていのものを育てられるとのことですが、観葉植物を上手に育てるポイントを教えてください。
観葉植物とは、熱帯・亜熱帯地方などに自生する植物を観賞用に鉢植えしたものです。本来は自然界で生息する生き物。観賞用に作られているとはいえ、決して室内で管理可能な改良を加えているわけではありません。人間や犬や猫と変わらない「生き物」であることを前提に、季節の変化に応じて管理の仕方を変えてあげることが大事です。
──水やりの目安を教えてください。
鉢底から水が出るまでたっぷりとあげます。ただ、水をあげすぎても枯れるので、土が乾いたら水をあげるようにしましょう。
水はたっぷりと。特に夏はバシャバシャかけてあげるとよいそうだ(撮影:梅谷秀司)
──光が大切とおっしゃいましたが、日光には当てたほうがよいのでしょうか。
光は大切なのですが、観葉植物はビニールハウスの遮光された環境で育てられているので、直射日光には当てないほうがいい。室内ではレースのカーテン越しなどに飾るのがベストです。
──風通しについてはいかがですか。
はい、「風」も重要です。風通しが悪いと害虫発生や葉落ちなどが起きます。室内で管理する場合は、できるだけ換気をして空気を流してあげること。
とくに30℃を超えると観葉植物もバテるため、真夏は締め切った部屋におかず、日陰の屋外に避難させると安全。不在にする場合は、扇風機を上に向けるなどして室内の風を流してあげてください。ただし、エアコンの風は苦手で、直接あたると水分を失い枯死します。
もう1つ。熱帯地方のものが多いので、本来は外での管理に向いていますが、日本の寒さには弱いです。冬は外に出しておくと寒さで枯れるので、10℃をきる日はお部屋に入れてあげましょう。
植物が持つエネルギーを借りたい
「人間はどれほど便利で快適な都会暮らしができても、自然に触れたいという本能はこの先も消えることはないのではないでしょうか」と、力石さん。筆者も切り花を飾ったりベランダで花を育てたりしているが、シビアなニュースが多い中、植物が放つ生き生きとしたエネルギーに救われる部分は大きいと改めて感じている。
コロナ問題の収束は見えないが、私たち人間が自然の恩恵に今一度感謝する好機ととらえながら、植物との暮らしを楽しみたい。
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提供元:コロナで爆売れ中「観葉植物」を本気で選ぶコツ|東洋経済オンライン