2024.10.30
洋服の「カレー染み」キレイに消す洗濯の"ガチ技"|やってはダメ「漂白剤で最初に付け置き」の理由
今回はカレー染みの付いたTシャツの洗い方。どんな裏ワザがあるのでしょう(写真:ニングル/PIXTA)
洗濯の際に洗い方を決めるときには、「いつ、どんなときにどう着る服か」と、「洗いたいものがどんなものか」を詳細にしていくことが大事になります。
今回は、実際のTシャツを事例にして具体的にお伝えします。
「染み」で見落としがちなこと
お子さんのTシャツで、カレーの汚れが付いてしまったそう。
今回紹介するカレー染みが付いた子ども用Tシャツ(写真:筆者提供)
このとき多くの人の洗濯は、カレー汚れにフォーカスが当たってしまい、洗濯の中心がカレーの落とし方になってしまうことが多いです。
ですが、僕らが提唱している洗濯は、カレーの汚れにフォーカスを当てるのではなく、服にフォーカスを当てる、です。あくまでも、それがどんな服に付いているかをまず明確にするのです。
服には洗える強度の限界がそれぞれあります。
だから、汚れではなく、服を基準に洗い方を決め、服の限界を超えないように、そのなかで目一杯汚れを落とすことを考えます。これにより、服を傷めずに汚れをきちんと落とせるのです。
そこでまずは、このTシャツがどんなTシャツかを明確にしていきます。
Tシャツにあった洗濯絵表示(写真:筆者提供)
Tシャツに付いているケアラベルを見て、素材と絵表示を確認します。素材は綿100%。水には強い素材なので、水洗い自体は問題ありません。
とはいえ、洗濯はただの綿の布を洗うわけではないので、どんな仕立てになっているかをさらに詳細に見ていきます。そのときに参考にするのが洗濯絵表示です。
洗濯絵表示を確認すると…
さっそく洗濯絵表示を確認すると、「40℃以下の水温で、洗濯機の弱コースで洗う」という表示が付いています。
この絵表示だけで見ると、弱水流で洗えばいいのだなと考えてしまうのですが、そうではありません。次に見るべきは、この表示の根拠です。
表示で弱コースでの洗濯を指定しているということは、標準のコースで洗うとTシャツに何かしら不具合が出る可能性があるということ。でも、Tシャツを見ると、弱コースで洗う必要がありそうな箇所は見当たりません。
刺繍と飾りが付いている(写真:筆者提供)
強いていうなら、胸のあたりに本をモチーフにした刺繍と飾りが付いていて、めくれるようになっています。
標準コースで洗うと飾りがちぎれる可能性があるため、これを考慮して表示を付けられているのかもしれません。ですが、おそらく標準コースでも問題なく洗えるのではないかと思います。
そもそもとして、子ども服で普段着として着るTシャツなら、当然こういった食べこぼしが付きやすいことは想定されます。すると、汚れが落ちにくい弱コースでの洗濯では汚れを落としきれず、すぐに捨てなければならないということが容易に考えられます。
ではなぜ弱コースで洗うという表示が付いているのか?
それは、“製品になった状態できちんとテストせず、表示が付けられていることが多い”からです。
きちんとテストで製品を洗ってから絵表示が付けられていれば、弱コースで洗うという表示にはならないはず。いずれにしても、弱コースでの洗濯の指定は、このTシャツを着ることを考えたとき、適切ではないと僕らは考えます。
メーカーさんには製品デザインを、洗濯などのケアの部分も含め設計してほしいですし、購入する側も、洗濯表示の矛盾を見抜く目を持ってほしいです。
結果的に、このTシャツの素材や色、作りから判断すると、今回は以下のような条件で洗ったほうがいいと、僕らなら考えます。
洗濯機のコース:標準コース
洗浄時間:洗い15分、すすぎ3回、脱水3分
水温:40℃(洗いとすすぎの1回目までは40℃、その後は常温)
洗剤:弱アルカリ性の洗剤
注意点としては、この洗い方は洗濯絵表示にある条件に沿わないので、自己責任のもと洗うことになります(なので、本来はそうならないよう購入時に着用シーンを想像し、洗濯表示も確認をしたうえで、快適に着用ができるアイテムを購入することが大事なのです)。
まとめて洗ってOK(写真:筆者提供)
では、実際に洗っていきますが、なにもこのTシャツだけを洗う必要はなく、この洗い方で洗えるものがほかにもあれば(例えばタオルや白いTシャツなど)、一緒にまとめて洗ってOKです。
逆に、黒い綿素材のTシャツとかは同じ洗い方をすると色落ちや色あせにつながるので、分けて洗う必要があります。
一度洗ってみたあとの状態をみると、汚れは残っているものの薄くなっています。
衣類の量はたくさん入れすぎない、水量は節水せず増やす、洗剤は規定量を入れて濃度を確保するという「3つの量」をきちんと確認し、まずは、この洗い方で一度洗ってみて、汚れがどうなったかを確認します。
キレイになればそれでOKですし、もし汚れが残るようだったら、その結果を受けて次の手段を考えていきます。
1度目の洗濯のあと(写真:筆者提供)
皆さんはこの状態を見て「落ちていない」と判断する人が多いのですが、そうではないのです。落ちていないのではなくて、少し落ちた=この洗い方は効果があり、“一度の洗濯で落ちるぶんの汚れが落ちた”と僕らは考えます。
逆に、一度に汚れを落とそうとして、闇雲にさまざまな汚れ落としの方法を試す人もいますが、それは効果がうまく出なかったり、洋服を傷めてしまったりするなど、リスクの高い方法を取っていることも少なくありません。
僕らのような洗濯のプロでも、一撃必殺で汚れを落とすことは結構難しいです。処置した方法に対して結果がどうだったかを見ながら、次の汚れの落とし方を考える。そうやって何度か洗い直しをするということは、プロでも普通にしています。
ですので、このTシャツも次の洗濯のタイミングでもう一度洗ってみました。するとすこーし薄くなったもののあまり変化がなく、やはり黄色い色素が残っています。
意外と知らない「正しい漂白剤の使い方」
ここで、洗剤で落とせる汚れの限界と判断し、初めて漂白剤の使用を検討しました。酸素系の漂白剤を40℃程度のお湯に溶かし、30分程度付け置きします。
追加の作業:約40℃のお湯に溶かした酸素系漂白剤で約30分付け置き
付け置きの様子(写真:筆者提供)
漂白剤は、洗剤では落ちない色素汚れに対して使うものです。そのため、「洗剤で落とせる汚れをしっかり落とす」→「それでも残った色素に漂白剤を使う」という使い方が基本となります。
要するに、漂白剤は毎回の洗濯で使う必要はなく、必要なときにだけ使うのが正解なのです。多くの人は漂白剤を多用しすぎです。漂白剤をなんとなくやみくもに使うので、色落ちや変色といったトラブルが起こってしまうのです。
また、「漂白剤で付け込んでから洗濯する」という使い方をする人も最近はよく見かけますが、本来の使い方と逆です。
洗剤で汚れをきちんと落とす前にいきなり漂白剤を使うのは、漂白剤のムダになりますし、これもまた変色や色落ちなどのトラブルも起こしやすくなります。
繰り返しになりますが、まずは洗剤で落とせる汚れをきっちり落とします。それでも、今回のように色素が残った場合に初めて漂白をします。
こうすることで、変色などのリスクも減らせますし、ムダに漂白をしないですみます。また、色素に対する漂白自体の効果も出やすくなります。
結果「カレー染み」はこうなった!
漂白後は、もう一度洗濯をして終了です。いかがでしょうか。
洗濯前と後。キレイにカレー染みは取れている(写真:筆者提供)
洗濯をする服は、どんな素材か?色か?仕立てになっているか?を詳細にしていきます。
こうすることで、服を傷めない範囲が明確になり、そのなかで目一杯汚れを落とすことを考えられるので、服をおかしくすることなく、キレイに汚れを落とすことができるようになります。
服には、それぞれ洗える強度の限界があります。だから、汚れにフォーカスをするのではなく、必ず服を中心に洗濯を考えていくことが大事です。
そしてもう1つ大事なのは、「いつ、どんなときにどう着る服か」をまず考え、洗濯がいいのか、クリーニングがいいのかをきちんと仕分けをすることです。もう1つの例をご紹介します。
ビジネス用はクリーニングが望ましい(写真:筆者提供)
どのように着るか?をお聞きすると「仕事で使いたい。ジャケットの下に着る感じ」と教えていただきました。
現代のTシャツは肌着として着るというより、このTシャツのようにビジネス着として着るケースが珍しくありません。そうであれば、特に、色柄や清潔感を保った洗い方と、きちんとしたプレスが必須です。
カジュアル化が進んだからといって、ヨレヨレでもよくなったわけではなく、着るシーンを考えれば、身だしなみは整える必要がある。すると、「クリーニングが向くTシャツ」ということになるのです。
このTシャツのクリーニング代は、いわばビジネスをするうえで必要経費です。
Tシャツをクリーニングは「必要経費」
「Tシャツをクリーニングする?そんなのもったいない」と思うのは古い感覚だと僕らは考えます。
今の時代の服の着方や役割を考えたとき、Tシャツは下着や肌着としてではなく、外着として着るものも多いからです。そうであれば、Tシャツをクリーニングし身だしなみを整えるということは当たり前で、至極真っ当な行動だからです。
服に対する認識をアップデートしていきましょう。
身だしなみを整えると見え方も違います。周りにシワシワのシャツを着ている人はいませんか? その人はどう見えますか? そうならないためにも、同じTシャツといえども、「いつ、どんなときにどう着る服か」を考えて、洗い方をしっかり見定めてほしいと思います。
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提供元:洋服の「カレー染み」キレイに消す洗濯の"ガチ技"│東洋経済オンライン