2020.11.06
仕事が楽しくない人に足りない「ファシる」力|会議の円滑化だけではなく仕事の生産性に直結
管理職やプロジェクトリーダーだけでなく、新入社員でも身に付けておくべき「ファシリテーション力」について紹介します(写真:D&M.CLIPs/PIXTA)
ビジネススキルというと、「企画力」や「プレゼンテーション力」にスポットが当たりがちだが、すべての仕事の土台となる最強のスキルは実は「ファシリテーション力」だ、と言うのは、プロファシリテーターで『ゼロから学べる! ファシリテーション超技術』の著者である園部浩司氏だ。
このスキルを身に付ければ、会議がスムーズに進むだけでなく、仕事が圧倒的に楽しくなるという。管理職やプロジェクトリーダーだけでなく、新入社員でも身に付けておくべき「ファシリテーション力」について聞いた。
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問題を解決するために必要な7つのスキル
私は問題を解決するには、7つのスキルが必要だと思っています。
その7つが「企画力」「プレゼンテーション力」「プロジェクトマネジメント力」「ファシリテーション力」「ロジカルシンキング力」「人格力」「コミュニケーション力」です。
企画力とは、問題を発見し解決策を立案する力のこと。その企画した内容をわかりやすく上司や関係者へ説明する。このときに必要なのが、プレゼンテーション力です。晴れて企画が承認されたら、いよいよ仕事がスタートします。仕事のスタート時はチームを編成し、ベクトルを合わせながら、メンバーの力を最大限引き出して成果物を創出する。ここで必要になるのが、プロジェクトマネジメント力です。
では、ファシリテーション力は? これは、「仕事」を遂行するうえでの土台となるスキルです。
企画を立てるとき、1人で解決策は立案できません。みんなで相談して企画立案します。当然会議が必要です。プレゼンテーション資料を作成するときもメンバーから意見をもらうことで完成します。企画がとおり、プロジェクトがスタートし、成果物を創出する間にも、ファシリテーション力は必須です。なぜなら、どのようにやるのか? 進捗はどうなっているのか? など1つの仕事が終わるまで会議の連続だからです。会議の質が仕事の生産性に直結すると言っていいでしょう。
その意味で、仕事をするうえで土台になるスキルがファシリテーション力なのです。
会議中は、いろいろな意見を整理するロジカルシンキング力も必要になります。ただし、これらビジネススキルといういくつもの「力」を発揮しただけでは、人間味のない冷たい印象を与えてしまうかもしれません。私は30代の半ばまでこのビジネススキルを一生懸命勉強しましたが、決定的に足りないものがありました。それが、コミュニケーション力です。
どんなにビジネススキルを磨いても、コミュニケーション力が不足していたらうまくいきません。コミュニケーション力は、人と信頼関係を築かなければ生かせません。さらに身に付けておくべきものは、「この人のためならば一肌脱ぐか」と思ってもらえるような人格力。問題解決を行うにはこの7つのスキルをバランスよく磨くことが必要だと私は思っています。中でも、ファシリテーション力は仕事全体の土台となり、核となる位置づけです。
ファシリテーション力は、メンバーから意見を引き出し、チームの生産性を高めることが求められるような管理職やプロジェクトリーダーはもちろん、それ以外の人にも必須のスキルです。それこそ何かの「問題を解決する」「企画する」「やり方を考える」仕事に携わっている人であれば年齢、役職、性別に関係なく必要なスキルなので、若い人、それこそ新入社員でもこれからは身に付けておくべきスキルであり、仕事の幅が広がるきっかけになるものだと思っています。
ファシリテーション力を高めることは、現在の時代背景にもマッチしています。決められた仕事を決められたやり方(手順)で進める、いわゆる作業・処理系の仕事は、システム化、自動化、さらにはAIの登場によって急速に人の手から離れていっています。こういった時代背景から、誰もが「考える」ことが求められ、チームで意見を出し合い、相乗効果でクリエイティビティーを発揮していくことが大切だと思います。そのためには、やはりファシリテーションスキルが必要なのです。
いい会議を行うための3つの条件
かくいう私も、最初から上手なファシリテーションができたわけではありません。NECグループの会社員時代から数えて、私は年間1000本以上の会議を仕切ってきましたが、ファシリテーションやファシリテーターの本質など知る由もなく、当初は、単なる「会議の進行役」という認識でした。待ったなしで次から次へとやってくる会議をいかにして“さばく”かに必死でした。
当時、自分なりに、ファシリテーションに関する書籍を読み、会議に関するワークショップを見つけては参加するなどしてとりあえずの知識を身に付け、本番に臨み「まとまらなければ、最後は、自分の意見をゴリ押しするしかないな」ぐらいに思っていました。しかし、実際に、そのとおりにしたら社員から猛反発され、部下の女性からは、「園部さんは、人の気持ちがまったくわかっていない。これじゃ誰もついていきたいと思いませんよ」と直談判されました。
「いい仕事がしたい」という目的を持って自分なりにやってきたつもりでしたが、周囲との関係性は希薄だったのだと思い知らされました。しかし、ファシリテーターを任されたおかげで自分自身に向き合うことを余儀なくされ、紆余曲折しながら自分なりの方法で円滑に会議を行うにはどうしたらいいのか少しずつ見いだしていきました。そしてようやく、いい会議の条件は、「時間厳守」「決まる・まとまる」「参加者の納得度が高い」という3つだと確信するに至ったのです。
現在私は、プロのファシリテーターとしてさまざまな企業の会議に携わり、会議のファシリテーションや会議改革のコンサルティングを行っています。また、年間2500人ほどの問題解決力/次世代リーダーなどの人材育成にも関わっています。
管理職やプロジェクトリーダーはもちろん、今は、若手の中でもプロジェクトマネジャーをはじめ、さまざまな年代の人が会議でファシリテーター的な役割を担う可能性があります。ファシリテーション、ファシリテーターの極意をつかめば、急に明日、自分がその役目を任されたとき、参加者全員が納得できる会議が実現できるはずです。
圧倒的に仕事が楽しくなる
もう1つ、ファシリテーションを学ぶと「圧倒的に仕事が楽しくなる」という副次的効果も期待できます。
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事業部の各種施策の会議にせよ、風土改善の会議にせよ、ファシリテーションは正解がどこにあるのかを探ることから始めるような仕事ですから、さまざまな人たちの声をしっかりと聴いていかなければなりません。その過程で、チームのメンバー、関係者などたくさんの仲間を巻き込み、問題解決という1つの目標達成に向かって一緒に突き進んでいくことになります。ここで出し合ったアイデアや意見は、その後、必ず「いい仕事」に結び付き、高い成果を創出できます。
どんなに難解な問題も、自分だけで解決するわけではありません。仲間が自分には思いもよらないアイデアや意見を出してくれます。信頼できる仲間がいることを、ファシリテーションを実践する中で実感できます。仕事において、あらゆる問題を1人で抱え込む必要がないことに気づき、人間関係は円滑に、良好になりました。人によっては仕事に対する価値観が変わるほどのインパクトになると思います。どんな問題がやってきても、「仲間がいるんだから、必ず解決できる」と大きな自信になります。ファシリテーションの習得は、私にとって、仕事だけでなく、人生全般を劇的に変えてくれる力になりました。
今、仕事について悩んでいる人、仕事が楽しくないと感じている人は、ぜひ「ファシリテーション力」に注目し、このスキルを磨いてみてください。違う景色が見えるかもしれません。
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提供元:仕事が楽しくない人に足りない「ファシる」力|東洋経済オンライン