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2020.10.13

フランス人「旅行の仕方」はこんなにも変わった|海外で長期バカンスから一転、国内旅行を満喫


毎年バカンスを楽しむフランス人は、コロナ禍の今夏はどのようにして休暇を過ごしたのでしょうか?(写真:samael334/iStock)

毎年バカンスを楽しむフランス人は、コロナ禍の今夏はどのようにして休暇を過ごしたのでしょうか?(写真:samael334/iStock)

多くのフランス人にとって「バカンス」は、1年の中で最も重要なときです。フランス人は休暇のために働いていると言っても過言ではありません。とくに夏には、家族連れで少なくとも2、3週間、あるいは1カ月もの間どこかに出かける「グランドバカンス」(7月か8月)があります。

通常、8月のパリにはパリジャンはいません。ほとんどのフランス人は海外旅行が大好きで、最近ではヨーロッパ以外で最も人気の行き先として日本が挙げられており、私は非常にうれしく思っていました。

フランス政府が求めたこと

ですが、今年はこの光景が様変わりしました。

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新型コロナウイルス関連の規制によって、旅行ができるのかどうか、休暇に出かけられるのかどうか、直前までまったくわかりませんでした。ロックダウン中には旅行・移動がまったくできなかったうえ、その後は自宅から100キロ以内という移動範囲の制限が課せられていたのですから。

いまだ規制は続いており、ウイルスもはびこっているなか、人々はこのバカンスという非常に大切な時間に関する決断を土壇場で行いました。政府は国民に、フランス国内にとどまりフランスの地方に旅行すること、「ブルー、ブラン、ルージュ(青、白、赤)」(トリコロール、フランス国旗つまりフランスを意味する)の旅をするよう求めました。

この理由の1つは、ウイルスの状況が悪化した場合にすぐに対応するため、そしてもう1つは、直接フランス経済を支援するためです。結果、フランス人の半数以上にあたる53%が7、8月に休暇旅行に出かけました(2019年は71%)。さらに旅行に出かけた人の94%がフランス国内を旅行しました。

フランスは30年以上にわたり、外国人観光客を最も多く受け入れている国として知られています。フランスの人口がわずか6500万人のところ、2019年の外国人観光客は9000万人以上でした。

外国人観光客がフランスを好む理由は、その多様な景色にあります――パリのような都市や美しい田舎、地中海、山――フランスはどこを訪れてもフォトジェニックです。それだけでなく歴史的、文化的、芸術的遺産(城、教会、博物館など)があり、もちろん美食もあります。とくにパリはつねに外国人観光客に愛される世界随一の都市でもあります。

しかし今年は、パリはからっぽでした! 普段は街中で見かける中国人、アメリカ人、ドイツ人など海外からの観光客の姿はどこにも見えませんでした。もちろん、ホテル業界――とくに高級ホテル――には悲劇的でした。いくつかのホテルは改装を終えて公式に「パレス」として認められたばかりだったのです。

ルーヴル美術館、ヴェルサイユ宮殿、エッフェル塔(昨年同時期に比べ訪問者数が3分1以下となっています)、凱旋門……といった誰もが知っているパリの名所も、今年は訪れる人の数が激減し、静まりかえっています。

パリジャンたちは地方を目指した

一方、フランスのいくつかの地方は、海外に行けなくなったフランス人観光客の間で非常に人気を博しました。かの有名なモンサンミッシェルは、昨年の訪問者数の8割をフランス人だけで達成しました。ただ、お土産を買ってくれる日本人観光客の存在なしには、地域の産業が生き残るのはなかなか難しいものがあります。フランス人にはあまりお土産を購入する習慣がないのです。

フランス国内の親戚や友人を訪ねる人も少なくありませんでした。フランスでは親戚を家に招くことはよくあることです。感染リスクを下げるために、ホテルに滞在するより一軒家を借りたほうがいい、という人も非常に多く、エアビーアンドビーの需要も高かったようです。とくにプール付きの家が好まれました。

今夏、もう1つ人気だったのが、「ホームエクスチェンジ」です。キャメロン・ディアスとケイト・ウィンスレット主演の映画『ホリデイ』を見た人は知っているかもしれませんが、ホームエクスチェンジとは文字どおりお互いがお互いの家を交換して一定期間滞在すること。家を「交換」するため、お金がかからないので、現在のような経済危機の時期にはとてもいいアイデアです。

このホームエクスチェンジの行き先として人気だったのが、プロヴァンスやブルターニュ、ヌーヴェル=アキテーヌなど。つねに人気の南フランス(コート・ダジュール)はフランス人観光客で過密状態でした。

銀行員のマルクは、妻と3人の子どもと共にタイで3週間過ごす休暇を計画していましたが、旅行の中止を余儀なくされました。代わりに、マルクはフランスのコルシカ島を探検することに決め、家族全員とても楽しみました。

教師のローランスは、夫と子どもと共にフランス中部のオーヴェルニュ地方に出かけ、先史時代の洞窟巡りや(暑さのためとても人気)、ハイキング、カヌーカヤックに興じました。彼女はいつもなら3週間の休暇をアメリカなどヨーロッパの外で過ごしますが、今回は世界最古の先史時代(紀元前4万年)の洞窟、ユネスコ世界遺産のショーヴェ洞窟を家族で訪れました。

こうした狭い地域での多様性は、フランスの地方都市の魅力の1つです。こうした場所、とくに普段は大自然が有名な場所は観光インフラが整っていないことが多く、今夏は予約でパンク状態だったようですが、多くのスタッフは再び仕事ができることを喜び、普段より接客が丁寧だったとか。ご存じのとおり、フランス人のウエイトスタッフは態度がよくないときがありますが、多くが顧客を満足させる姿勢を見せていたようです。

一方、フランス人の一部は、「非ヨーロッパ人観光客」がいないという、またとない時期を利用して、フランス以外のヨーロッパ諸国を旅行することを選びました。9歳と7歳の2人の子どもを持つ建築家のベルトランはイタリアを旅行しました。誰もいないヴェネツィアのサンマルコ広場を楽しみ、わずか150ユーロでプレジデンシャルスイートに泊まったと言います。

パトリックと妻はイタリア好きで、イタリア中を旅行し、これまで想像もできなかったような形でローマを堪能したといいます。サンピエトロ寺院にはほぼ誰もおらず、システィーナ礼拝堂の絵画を眺めるのは天国のようだったと言います。そして、どこにいっても最上の形で歓迎を受けたそうです。より大胆な人たちはギリシャ、とくにギリシャの島に向かい、新型コロナのストレスをまったく感じずに過ごしたと言います。

スイスもまたフランス人にとって人気の近距離の旅行先の1つでした。ピエールとエレーヌはローザンヌに2週間滞在し、山や文化、スイスの清らかな環境を楽しみました。マスク着用の義務はありませんでしたが、レストランを利用する際には追跡が必要になったときのために備えて電話番号と名前を申し出る必要があったと言います。

フランス人が見つけた「新たな旅の仕方」

今回の「特別な夏」で実は、フランス人は新たな旅先を発見しただけでなく、新しい旅の仕方も見つけました。もっとゆっくり、もっと近距離で、より本格的で、自然に近いもののよさを見つけたのです。

あなたがワインに詳しいなら、こうした考えが理解できるかもしれません。フランスでは、地方の特性にリンクしたテロワール(terroir)というコンセプトがあり、それは気候や習慣、歴史、信頼性……そしてもちろん、地元産の製品や食品、産業とつながっています。

例えば自転車で、とくにロワール川やアルザス地方のワインヤードを巡るという旅行。実際、「サイクリングツーリズム(cyclotourisme)」はいま、非常に人気があります。

自転車人気の背景には、昨年12月から今年1月まで続いた交通機関のストライキで通勤などに新たな移動手段が必要になったこともあります(「『長期間スト』にフランス人が怒らない根本理由」)が、この夏はこの動きが一段と加速しました。なかには、日帰りだけでなく、1週間まるごとの本格的なサイクリング旅行をした、という人も。

サイクリングは言わずもがな、いい運動になるほか、環境にも優しいですし(ecoloと言います)、ソーシャル・ディスタンシングを守ることもできます。

「『長期間スト』にフランス人が怒らない根本理由」 ※外部サイトに遷移します

近年、電動アシスト自転車が普及していることで、丘や山にも登ることができるようになりました。

こうしたなか、今年は海外旅行に行けない人々が、「フランスにとどまるんだったら、何か新しいことを始めよう」と決意したいのです。旅行代理店は、自転車レンタルや、旅行中の荷物の移動、ホテルの事前予約など、オールインクルーシブな新たなパック旅行を提案するようになりました。

この夏はキャンピングカーも人気でした。自動車で移動するので旅行の自由度が増すうえ、宿などの事前予約がいらないので予定をギリギリで決めたり、変更できたりする気軽さもあるからです。

近年、フランスでは「グリーンツーリズム」に注目が集まっていますが、キャピングカーであれば移動中に景色を満喫することもできますし、キャンプ場や海辺など、禁止されていないところならば、自然の「中」に駐車して滞在することができます。

実際、今年のキャンピングカーのレンタル数は昨年の夏に比べて60%増えました。初めての人は2、3週間レンタルするパターンが多いですが、どこにでもいける「第2の家」として購入を検討する人も増えているようです。

コロナで芽生えた「暮らしの美学」

この特別な夏のバカンスを通じて、フランス人が改めて発見したことが2つあります。1つは誰もがリラクゼーションを求めていたということ、そしてもう1つは「今を楽しみたい」「何もしないこと(farniente)を楽しみたい」ということです。

それは前述のとおり、ゆっくりしたペースで観光スポットなどを訪れ、1日をアクティビティーでいっぱいにしないという旅の仕方です(どのみちいまは、有名観光スポットに行くには事前予約が必要です)。そして、これは非常にフランス人らしいと言えるのですが、こうした柔軟な旅の仕方が「暮らしの美学(art de vivre )」となりました。

見通しがつかない状況が続くなかで、観光関連業界もこの新たな美学に柔軟な姿勢を見せています。いまでは、列車の乗車券や航空券は変更や払い戻しが以前よりできるようになりました。ホテルはキャンセルポリシーを、レストランはテーブルセッティングの見直しを迫られています。

フランス人の旅行先や旅行の仕方が変わるなかで、旅行代理店からホテル、ベッド&ブレックファストから地方都市、有名観光スポットなど多くがより多くの人を惹きつけるようなホームページに作り変えました。興味深いことに、これは個々でやっているように見えて、実はそれぞれがその土地でどこを訪れるべきかなどアイデアを出し合っており、それぞれを「助け合う」形になっているのです。

フランス経済にとって重要である旅行業界を支援しようという思いは政府も同じです。フランス政府は12月末までこの産業の「部分的失業(chômage partiel )」について、一時的に解雇されているスタッフの給与を支払うという形でサポートすることを決めています。

フランス人が特別な夏を通じて新たな旅先や旅行の仕方を見つけた背後には、この産業の未来を支えたいという意思もあります。これによって旅行産業は希望を取り戻しつつありますが、それでも外国人観光客の不在をいつまで埋めることができるのでしょうか。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

パリの家には、なぜ「カーテン」がないのか

日本人とフランス人「休み方」はこんなにも違う

「客は二の次」のフランスに日本が学ぶべき事

提供元:フランス人「旅行の仕方」はこんなにも変わった|東洋経済オンライン

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