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2020.10.12

若いあなたが将来「不健康」になりかねない危機|超長寿時代、日本人の身体と社会構造が心配だ


現役世代の健康状態を見ると将来が心配になってくる(写真:xiangtao/PIXTA)

現役世代の健康状態を見ると将来が心配になってくる(写真:xiangtao/PIXTA)

「日本=長寿国」というイメージに反して、今の現役世代の身体データを見ると、その人たちが高齢者となったときに心配な姿が見えてくる。
さらに、ここに「人口減少」などの社会変化が加わると、ますます将来の日本人の健康レベルは危機的状況に。『100年時代の健康法』著者・北村明彦氏が解説する。

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全労働者中「1割」が高齢者

最新のデータでは、日本人の平均寿命は女性が87.3歳、男性が81.3歳です。2050年には女性の平均寿命が90歳を突破するとされ、「人生100年時代」は本当に目の前です。

しかし、全員が90年近くを健康な状態でフルに生きられるわけではありません。「長く生きる=不健康な期間が長くなるだけ」かもしれない将来を思わせるデータが、続々と上がってきているのです。

内閣府の調査によると、労働人口に占める高齢者の割合は右肩上がりに増えていて、2016年には労働人口6673万人のうち、65~69歳の人が450万人。70歳以上も336万人いて、日本で働く人全体の約10%は高齢者です。

一見、元気な高齢者が増えているようですが、医療機関を受診する人は後期高齢者で約73%と高水準です。

では現役世代はどうかというと、定年の延長が叫ばれているにもかかわらず、高齢者以上に心配な実状が見えてきます。

体が衰えないためには筋力が重要ですが、「歩数」はその筋力を保つ重要なバロメーターです。

ここ15年間の歩数の推移を見ると、70歳以上では微増か横ばいとなっています。しかし、69歳以下の数字を見ると、すべての年代で歩数が減っています。とくに若い人が歩かなくなっているのです。

20代男女では、共に約10%近く歩数が減っており(男性:8925歩→7904歩、女性:7185歩→6711歩)、30代でも同様の傾向です。

運動習慣を持つ人が若い人には多いですが、それは週に1、2度のこと。また、テレワークが推奨され、通勤で稼げていた歩数も減っています。日常の運動量としては減少傾向にあるといっていいでしょう。

スポーツ庁の青少年のスポーツテストについての調査では、1986年からのデータと比較して、11~19歳の握力スコアが低下傾向にあることが示されています。また、ソフトボール投げや立ち幅跳びなど、「筋力の瞬発力」を測る項目もスコアが低下しています。

2002年までは遅くなっていた50メートル走が再び速くなったり、上体起こしや前屈のように、今の子どものほうがスコアのよかったりする種目もありますが、全体的には筋力の弱い「力のない子」が増えている傾向が見て取れます。

ある研究で最近の若年女性(21歳±2歳)の骨格筋指数を調べた結果、実に9割の若年女性が高齢女性(70歳代)の平均値を下回っていました。つまり、スリムな若い女性は、おばあちゃんよりも筋肉がスカスカだということ。これだと、要介護まっしぐらとなりかねず、「元気な高齢者」としてアクティブな老後は迎えられないかもしれません。

また、男性の場合、50代後半までは体重が増加し、その後は減少傾向になるとされていましたが、最近では70歳以上の男性も肥満が増え続けていることが判明しました。脂肪で太っているため、男性も筋力不足は否めません。

「平熱」が下がってきている

身体変化は、「体温」にも見られます。

1957年に10~50代までの約3000人の体温を測定した調査では、平均体温は36.89℃。2008年のリサーチでは、平均体温は36.1~36.4℃に下がっていました。ほかのデータを見ても、日本人の体温が50年間で下がっているのは、確かです。

体温が下がった要因で真っ先に考えられるのは「筋肉量の低下」です。筋肉は熱を産生します。また、代謝も体温と関係していて、高齢者になると平熱が低くなるのは、筋肉と代謝が共に低下するためです。

運動量の低下などによって筋力と代謝が下がると、若いうちから低体温になってしまい、不健康な老人予備群が誕生してしまいます。

ここまで日本人の体の変化について見てきましたが、ここに「社会の変化」が加わると、より不健康リスクは高まります。

これからの日本社会、「超少子高齢化」「人口減少」が避けられません。そして、この「人の数が減る」という社会構造の変化は、私たち1人ひとりの不健康な老人予備群入りのリスクを高める可能性があります。

人の体の健康は筋力や食事だけで決まりません。他人や社会との関わりを失うと、体の不健康にも波及していきます。

今、65歳以上のひとり暮らしは男女ともに増加の一途をたどっており、1980年には全高齢者のうち男性4.3%、女性で11.2%が独居だったのに対し、2015年には男性13.3%、女性21.1%にも上ります。未婚、子どもがいないなど、人生100年時代は「お一人様高齢者」の激増が見込まれているのです。

「買い物」ができなくなる

高齢になると移動に制限がかかり、外出が難しくなります。

スーパーやコンビニが遠くて車も使えず、食品の買い物に困る人を「買い物困難者」といいますが、農林水産省は65歳以上の「買い物困難者」は2015年時点で824万人以上との推計を発表しています。

これは2005年からの10年間で21.6%増という上昇値で、東京・大阪・名古屋などの大都市にいたっては10年間で44.1%も買い物困難者が増加しています。おそらく、首都圏でも、郊外の大型モールに車で買い物に行くスタイルが広がっているためでしょう。

外出の有無は食生活に直結することがわかっていて、なかなか買い物に行けない高齢者は、3大栄養素のうち「炭水化物」に偏った食事になりがちです。米やインスタント麺は保存が利くので買いだめができ、またコンビニや地方の小さな商店でも、お菓子やパンは手に入りやすいためだと思われます。

人口減と高齢化が組み合わさることで、人との関わりが薄くなり、そして食べるものにも影響を及ぼしながら不健康寿命の伸長へとつながっていくのです。

「体が衰えてどうにもいかなくなれば、要介護認定を受けて……」と思われるかもしれませんが、介護する人たちが圧倒的に不足している問題もあります。

日本全体の医療費増大を抑えようと、入院を減らして在宅医療・介護やデイサービスへの切り替えが図られていますが、介護人材そのものが現時点で不足しています。2025年には245万人の介護人材が必要とされますが、2016年時点で190万人しかいない人材が9年間で55万人も急増することは考えられません。

今後、サービス対象者と認定される人はより制限されるでしょう。

離職率の高さも要因

介護職員の離職率は高く、調査によると16.7%に上るとのこと。離職者中、1年未満で離職する人は38.8%を数えます。

介護を必要とする人は増えていくのに、介護をする人は減っていくという厳しい現実が存在しているのです。

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『100年時代の健康法』(サンマーク出版)。 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

2040年には、人口が多い都市部の高齢化率が現在最も高齢化が進んでいる秋田県と同程度となり、高齢者の介護ニーズに対応できなくなることが危惧されています。

人生100年時代を生きる未来の日本の高齢者は、もしかしたら今よりはるかに老けているリスクがあります。それに加え、もし衰えてしまっても、周りに助けてくれる人がいるとは限りません。

「人生100年時代とは健康自衛の時代」と捉え、今から自分の体と向き合っていく必要があるのではないでしょうか。

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提供元:若いあなたが将来「不健康」になりかねない危機|東洋経済オンライン

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