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2020.09.11

テレワークの生産性をぐんと上げる3つの朝活|オフィス勤務と同じリズムを作ることが大切だ


ついついリズムが崩れがちなテレワーク。生産性を上げるヒントは朝活にあるようです(写真:USSIE / PIXTA)

ついついリズムが崩れがちなテレワーク。生産性を上げるヒントは朝活にあるようです(写真:USSIE / PIXTA)

「テレワークやっていると、生産性が下がるじゃないですか」。ある社長から言われ、驚いたことがある。さらに社長は「でも、今どきテレワークをやらないと言ったら、若くて優秀な社員を採用できないので、どうしたらいいのかと思って」と付け足す。

たしかに、日本生産性本部が今年5月におこなった調査によると、テレワークを始めた人のじつに66.2%が「生産性が下がった」と答えている。この調査結果だけを見たら、テレワークは生産性が下がると思い込むのもムリはない。しかし当然のことながら、それは思い込みであろう。

オフィスにパソコンが普及し始めたころのことを覚えているだろうか。当時オフィスワーカーにパソコンが割り当てられ、その後しばらくして「生産性が上がった」「業務効率がアップした」と答えた人は少ない。

会社から強制されたからパソコンを使うのであって、そうでなければ、どうしてこんなものを使わなければならないのだと不平を言う人もいた。電子メールが普及したころもそうである。覚えづらいメールアドレスを打ち込んで、文章でコミュニケーションするスタイルは、当時多くの人から受け入れられなかった。

生産性アップに効果があったという意見も

テレワークのケースでも同じだ。テレワークに「慣れていない」から生産性が下がっただけであり、今後テレワークという働き方に慣れ、創意工夫することによって受け止め方は変わってくるだろう。

実際に、2017年の総務省の調べによると、テレワークの実施企業のうち、82.1%が生産性アップに効果があったとも評価している。この時期にすでにテレワークを実施するような人や組織は意識が高い。だから緊急事態宣言が出たからしかたなくテレワークを始めた人とでは、取り組み姿勢が違って当たり前。仕事のパフォーマンスに違いが出てもおかしくはない。

そもそも生産性が低くなるというのであれば、なぜ働き方改革関連法が2019年に施行されたのか。職場の生産性を高めるための重点施策として「働き方改革」があり、テレワークは「働き方」を変えるうえでの目玉というべき考え方だ。テレワークは生産性を上げるための新しい働き方なのだから、「テレワークすると生産性が下がるじゃないですか」といった考え方は誤解だとも思える。

私は20年以上、出張ばかりの仕事人生を送っているので、テレワークには慣れている(在宅勤務=テレワークではない)。移動中の新幹線、空港のロビー、講演会場の近くのカフェ、宿泊先のラウンジなど、どこでも仕事をしてきた。

もちろんオフィス勤務よりもテレワークのほうが、圧倒的に仕事のパフォーマンスが上がると思っている。だからテレワークに慣れず、「テレワークだと生産性が下がる」と言う人に対しては、無性にアドバイスしたくなる。

テレワークに慣れていない人は、朝に着目してみよう。テレワークをするにあたって、朝にどんな準備をしたら生産性の高い仕事ができるのか、3つのポイントを解説する。

まず1つ目のポイントは「オフィス勤務時と同じリズムを守る」である。私の知人の部下に、在宅でテレワークをさせたら、ものすごく生産性が落ちたという人がいる。原因をヒアリングしてみたところ、朝の準備を怠ったため、完全に仕事のリズムを失ったからだという。

在宅であっても同じリズムを取るべき

どういうことだろうか。整理して、説明しよう。その部下はオフィス勤務のとき、職場が家から遠いということもあって、朝5時半に起床し、6時過ぎに家を出て、8時10分ほどに出社していたという。9時出勤の会社であったが、満員電車を避けるために、早めに職場に着くよう自分なりに工夫していたのだという。

ところが、在宅勤務になると通勤がなくなった。そのため、8時45分に起床するようになったとのこと。オフィス勤務時より3時間も遅い時間である。伴せて就寝時間も遅くなったそうだ。いくら9時には仕事をスタートできるといっても、リズムを崩しすぎだ。これでは効率の高い仕事ができるはずがない。

こういった例は枚挙にいとまがない。できればオフィス勤務時と同じ時刻に起きるようにしよう。もしいつも朝5時半に起床しているのであれば、たとえ在宅であっても5時半に起きるのである。

食事をする時間も同じほうがいい。通勤にあてている時間は自由なのだから、ウォーキングやストレッチ、筋トレ、新聞や書籍をゆっくり読んだりする時間にあてる。仕事のスタート時間までに緊張感を高めていくことが大事だ。だから、気持ちが緩むような娯楽の時間は控えたい。体のメンテナンスや教養を身につけるなど、自己投資の時間に使うのがベストだろう。これは、次からの2つのポイントにも密接に絡むことだ。

在宅勤務で1日中自宅にいると思考が近視眼的になりがちだ。行動範囲が極端に狭くなるからだろう。その日1日の仕事にしか焦点を合わせなくなり、バタバタとした毎日を送ることになる。だから朝の準備2つ目のポイントは、「1年間、3年間、10年間などの中長期ビジョンの確認」をすることだ。

確認するだけでいい。こうすることで、中長期的な視点で物事を考えるクセがつく。もしそのようなビジョンがなければ、ぜひ時間をつくって紙に書き出しておこう。

「今年1年で新規顧客獲得目標を達成させ、上司から高い評価を得る」「3年以内に、自分自身で新しい事業を立ち上げる」「10年以内に資格を2つ取得し、自分の市場価値をアップさせる」など具体的な数値目標があればなおいいが、少々抽象的でもいい。

それだけでも、気が引き締まるものだ。目線が上に上がるため、目の前の仕事に振り回されなくなる。家にいながらも、上空から世界を眺める俯瞰力も身につく。

自分の中長期ビジョンを振り返る

オフィス勤務時でもやってもらいたいが、在宅勤務だととくに必要だろう。私は朝、必ず外に出てジョギングするか、ウォーキングをする。在宅のときはもちろん出張時でもホテルの周辺を走ったり歩いたりする。

その際にも、私は中長期的なビジョンを反芻する。外の空気に触れながら、今年中にやるべきこと、数年以内にやりたいことなどを考え、そのうえで、「今月やり残したことはないか」「3カ月前にやろうと決意したことができていないな」などと反省する。ビジネスキャリアを大局的に見つめながら今日という日を過ごす。これが脳のストレッチになるのだ。心も体も柔軟性が必要だから、朝の時間を利用してこれをしっかりやってはどうだろうか。

朝の準備3つ目のポイントは、「報連相の計画をつくる」だ。仕事でのパフォーマンスを上げるために大事なことは、人に振り回されないことだ。オフィスにいると、ついつい誰かから「今時間ある?」「これやってくれない?」などと仕事を頼まれたり、打ち合わせに付き合わされることがある。

こういったことをいちいち受け入れていると、仕事の優先順位が崩れる。リズムもおかしくなる。いったん崩れると、立て直すのは少しばかりの時間とストレスがかかるものだ。

だからテレワークには、自分の仕事に打ち込めるという点で大きなメリットがある。ただ、組織の一員であることを忘れてはならない。だからこまめに報告すること、連絡すること、相談することは、とても大事なことだ。

在宅でも上司に報連相をする

しかし在宅だとついつい怠ってしまう。だから、あえてつくることだ。電話が難しいならメールでもいい。「企画書をつくり終えたので、●●フォルダに格納しておきました」「本日、A社と商談がありました。次回は来週の●日に決定しています」「3カ月後のイベントについて、そろそろコンテンツを考えたほうがいいと思うので、アイデア出しをしておきます」――。

このような、どちらかというと、報告しなくても問題がないことも細かく伝えていく。「そんなこと、いちいち言わなくてもいい」「状況報告をメールしなくていいから」などという上司もいるかもしれない。

だが、ただでさえ顔を合わせる時間が減っているのだから、このように率先してコンタクトをとろうとする部下の姿勢はたたえてもいいはずだ。上司であれば、部下に対しても積極的にやろう。ちょっとした理由をつけて電話したり、メールをするとよい。

「単純接触効果」という有名な心理効果もある。たとえ内容が薄くても、接触を繰り返すことで、互いの心理的距離が短くなるという効果だ。だから、電話なら2分程度で終わる内容にすること。メールなら、箇条書きで読めるぐらい整理したものを送ること。仕事の依頼となると、先述したとおり相手の仕事のリズム、ペースを崩すことにつながる。しかし、報連相であれば問題ない。

この報連相の計画を、朝のうちにしておくのだ。よほど習慣化している人ならともかく、「この仕事が終わったら報告しようか」「商談のあと、困ったことがあれば相談する」といった、「たられば」で考えていたら報連相の数は増えない。いつまでたっても上司や同僚、後輩や部下たちとの接点が増えない。組織内コミュニケーションを活性化するうえでも、「今日は4回は報連相をしよう」などと朝に決めるのだ。報連相は計画的にやらないと、その癖はつかない。

ビジネスにおいて直面する問題を解決するには、それなりのパワー、エネルギーが必要だ。その力の源は「意志力(ウィルパワー)」が深く関係している。

筋肉と同じように、意志力は使いすぎると消耗してしまう。そのため、できれば不必要な行動や感情的なイライラを減らすほうがいい。

通勤がなくなる分、意志力を鍛える時間に

ご存じのとおり、日本人の通勤にかかるストレスは世界でも突出している。そこで消耗されるビジネスパーソンたちの意志力の強さははかりしれない。会社に到着したころには、すでに過半の意志力を失っている社員も少なくない。日本の国力ダウンにもつながっているのではないか、と思うほどの損失だ。

だから通勤そのものをなくし、その分の時間をちょっとした運動や読書、マインドフルネス瞑想などに使うことで、当然のことながら意志力を温存できる。それに鍛えることもできる。

つまり意志力の観点からすると、在宅でテレワークができれば仕事のパフォーマンスも上がるだろう。慣れないからといって、テレワークを敬遠するのはよそう。朝の過ごし方、準備のやり方によって劇的に生産性はアップする。そうすることで、結果的にクオリティ・オブ・ライフもまた向上させることができるのだから。

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提供元:テレワークの生産性をぐんと上げる3つの朝活|東洋経済オンライン

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