2020.07.15
3密を避け密になる「在宅コミュケーション術」 │リモート時代の会議と打合せの「新常態」
在宅勤務におけるコミュニケーションの取り方について、温度差を感じたり、一体感が失われることを危惧する人も多い(写真:jessie/PIXTA)
緊急事態宣言下で一気に普及した在宅勤務。これからの新常態として企業も積極的な取り組みを見せるが、慣れない働き方に戸惑う人も少なくない。とくに、コミュニケーションの取り方では、いかにZoom等を駆使しても、相手との温度差を感じたり、チームとしての一体感が失われることを危惧する人も多い。
前回の「在宅勤務でも生産性が落ちない人の3つの習慣」に引き続き、自らも在宅勤務者であり、『在宅HACKS! 自分史上最高のアウトプットを可能にする新しい働き方』を上梓した著者に、在宅勤務におけるコミュニケーションのコツを聞いた。
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オンライン飲み会はなぜ疎外感を感じるのか
在宅勤務をしばらく続けていると感じるのが「孤独」です。人と会わなくて済むというのは楽ですが、まったく人と会わず仕事を続けていると、だんだん寂しさも募ってきます。メールやチャットアプリなどの文字だけのコミュニケーションだと、どうしてもやりとりが事務的になってしまいます。
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そうしたオンラインの寂しさを紛らわす目的もあって、Zoomなどを使ったオンライン飲み会が盛んに行われているようです。遠隔でも簡単に集まっておしゃべりできるオンライン飲み会は、リアルにはない気軽さも手伝って、「これでもいける」という感覚を持った人も多いのではないかと思います。
ところがそのオンライン飲み会も、参加人数が増えてくると会話に入れず疎外感を感じる人が出てくるのです。リアルの場合であれば、場所は一カ所に集まっていても、遠くの隣同士で別の会話が始まったりと、複数の会話が同時並行で進みます。しかし、オンライン飲み会の場合は、ひとつのセッションでひとつの話題が進むので、その会話に入れないと置いてきぼりになってしまうのです。
また、オンライン飲み会で疎外感を感じるもうひとつの原因が、その場の雰囲気が共有しづらいという点です。リアルでも会話に置いてきぼりになることがありますが、それでもはしっこにちょこんと座ってお酒を飲んでいれば、そんなに仲間はずれになる感じはありません。リアルの場合、みんなが盛り上がっている場の雰囲気を味わう楽しみがあるのですが、オンライン飲み会だとそうした楽しみ方も難しいのです。
こうした話はオンライン飲み会に限った話ではありません。在宅勤務での新常態とも言うべきオンラインコミュニケーションは、従来のリアルのコミュニケーションと勝手が違い、思うように行かないことが多々あります。
しかし、だからといって「やはり仕事はリアルなコミュニケーションでないとダメだな」と考えるのは早計です。そうではなく、在宅でも問題がないオンラインコミュニケーションの術を身に付ける。さらに一歩踏み込んで、むしろオンラインコミュニケーションのほうが優れている点を見いだし、それを積極的に取り入れていくことが、これからのリモート時代を生き抜くビジネスパーソンの知恵ではないでしょうか。
オンラインコミュニケーション術、3つのポイント
その観点から、3つのポイントをご紹介していくことにしましょう。
1.リモートでもあえて「天気」の話題から入る
リアルのコミュニケーションで当たり前のように行われている、差し障りのない話題の代表例が天気です。「今日は暑いですね」「午後は雨が降りそうです」といった天気の話題は、お互いに遠隔地の室内で行うオンラインのコミュニケーションでは出番がないような気がしますが、実はそうでもないのです。在宅勤務時にも、実は天気の話題は効果的なのです。
私はこれまで、天気の話題がされるのは、誰もができる共通の話題だからと思っていました。しかしオンラインでのやりとりを通して、あることに気づいたのです。実はそこでコミュニケーションしているのは、身体感覚だったということに。
「今日は暑いですね」という話題は、「私は暑く感じているけれども、あなたもそう感じますよね」という身体感覚の共有です。「雨が降りそうですね」という話題も、降りそうに感じている自分の皮膚感覚を表明しています。
家の中にいてなかなか外の空気に触れられない状況において、あえて外の天気を話題にする。違う場所にいるから、時には天候も微妙に違うかもしれません。「こっちで雨が降り始めたので、そちらにもまもなく雨雲が到達すると思いますよ」というような、時間と空間を共有するような話題は、仕事上のコミュニケーションにおいて、潤滑油となり、一服の清涼剤となり、また、身体感覚や場を共有するきっかけになるのです。
また、天気の話題は、その流れで「雨が降って、洗濯物が乾きませんね」という生活の雰囲気にも自然と話題を広げることができるメリットもあります。
2.チームの一体感を維持する「朝メール・夜メール」
在宅勤務とオフィス勤務のいちばん大きな違いが「時間の同期性」です。オフィスであれば、フレックスなどの制度はあったとしても、基本的には同じ時間に働いていることが可視化され、共有されています。しかし在宅勤務の場合は、ほかの人がいつどのように仕事をしているのかがわからず、「同じ時間に一緒に働いている」という実感に乏しくなります。これを「労働の非同期化」と呼んでいます。
人それぞれ、さまざまな都合があるし、調子の善しあしもあります。そうした中、無理に仕事の仕方を同期させるのではなく、状況に合わせて働き方も変えられるのが、在宅勤務のよさです。シエスタのような長めの昼食休憩をとってもいいですし、気分のいい朝早くにひと仕事を終わらせてしまうこともできます。
しかし、これはいいことばかりではありません。「一緒に働いている」という実感が失われてしまうことによって、チームとしての一体感が失われて、仕事がどんどん孤独なものになってしまうのです。
そこでおすすめしたいのが、朝メール・夜メール。もともとはワーク・ライフ・バランスの第一人者である小室淑恵さんのアイデアで、仕事を始める前にその日の予定を報告する「朝メール」を送り、仕事終わりにはその日の実績を書いた「夜メール」を送るというもの。これによって、非同期のチームにも同期するタイミングが生まれ、チームとしての一体感を取り戻すことができるのです。朝メールには、個人的なニュースを書く項目も作ってパーソナルなニュースも共有するようにすると、さらにお互いの顔が見えて効果的です。
3.リアル会議を超える「議事録ドリブン会議」
オンラインの会議も、一工夫しましょう。「議事録ドリブン会議」の導入です。
テレビ会議では、お互いの顔を見ながら議論できるという点はいいのですが、その分、話がいろいろな方向に飛びがちです。リアルの会議でもよく起こることではあるのですが、参加者がいろいろと自由に発言していった結果、一体何が決まったのか、何が決まっていないのかがわからなくなってしまいがちなのです。結論がどこに着地したのかがわからない、こうした会議の「空中戦」をなくすための方法が、議事録ドリブン会議です。
これは、会議を通じて議事録をリアルタイムに書き上げていく手法です。テレビ会議の画面とは別に、Google Documentsなどのオンラインツールを立ち上げます。あらかじめアジェンダ(議論する項目)をリストアップした書類をオンラインに用意しておき、そこに決まったことを書いていくのです。全員オンラインでつながっているので、誰もが議事録に書き込めるので、あっというまに議事録が完成します。
こうすれば、会議が終わるとすぐに、全員が同意した議事録が共有されるので、例えばテレビ会議に参加していなかった人ともすぐに情報共有ができます。また、話が飛んだり、脱線することも少なくなりますし、記録が残るので「言った、言わない」という不毛な争いもなくなります。これにより、短時間の打ち合わせでプロジェクトをどんどん進めることができるようになります。
そしてなにより、こうして議事録というひとつの作品をみんなで作り上げる一体感を感じることができるという利点があります。リアルに会わない分、オンライン上でいかに共創していくかということが、在宅勤務でのチームマネジメントの重要なポイントなのです。
オンラインはリアルよりも強いつながりを生む
オフィスという同じ場所にいるときは、実はチームのメンバーが同床異夢の状態でも見過ごされがちです。実際、毎日顔を合わせていても、会社としてのビジョンが共有されていなかったり、チームとしての目標に対して思いが異なっていたりすることがあります。
しかし、例えば「朝メール・夜メール」や「議事録ドリブン会議」のようなオンラインでのコミュニケーションでは、リアルのような曖昧なやり取りでは成立せず、互いに考えや意志をキッチリ表明し、それが履歴として残るようになります。
こうしたコミュニケーションを受け入れることで、より強固なチームマネジメントさえ可能になると思います。
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提供元:3密を避け密になる「在宅コミュケーション術」 |東洋経済オンライン