2020.06.18
今年は「六月病」「七月病」の流行に要注意だ│在宅勤務から通常出勤に戻ると何が起こる?
いわゆる「五月病」は医学的に適応障害と呼ばれています。では、「うつ病」と「適応障害」の違いは何でしょうか?(写真:muu/PIXTA)
新型コロナウイルス(COVID-19)に関する緊急事態宣言がひとまず解除され、日常が少しずつ戻ってきています。飲食店や娯楽施設も順次営業再開しており、在宅勤務から通常の出勤に戻っている方も多いのではないでしょうか。そんな中で、私が現在心配しているのは「六月病」「七月病」です。
いわゆる五月病は、新入社員や新年度に部署移動した社員が、5月頃に心身の不調を訴えることからついた名前です。新しい環境に対して身体に溜まったストレスが、約1カ月で心身の不調として表れるのです。
今年は在宅勤務の推奨や勤務自体の縮小により、本格的な出社は5月下旬~6月から、という方が多いと思います。すると、約1カ月後、すなわち6月や7月に「五月病」と同じような症状が出てくる可能性があります。
また、4月頃に十分な新人研修や業務引継ぎが行われず、業務が通年どおりスムーズにいかないことに加え、梅雨のジメジメした蒸し暑い気候もストレスに拍車をかけると予想されます。
五月病の正体は?
さて、五月病は正式な病名ではありません。「六月病」「七月病」といった名称についても同様です。これらは医学的には「適応障害」と呼ばれます。
適応障害は「ストレス要因により引き起こされる精神面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」とガイドラインで定義されています。
すなわち、就職や転勤などの新しい環境に対してストレスを感じた結果、無気力感や不安感を覚えてなんとなく体調が悪くなったり、会社に出勤できなくなったりしてしまうのです。
なお、よく適応障害と混同されるのがうつ病です。物事に対する意欲がなくなってしまう「うつ状態」になるという点では共通していますが、うつ病が「明らかなストレス要因がないのに(日々の特定しきれないさまざまなストレスが積み重なって)発症する」のに対し、適応障害は「転職や人間関係のトラブルなど、ストレス要因に対して発症する」とされています。
適応障害が悪化してうつ病になる場合もあるため、適応障害を予防・治療していくことはとても大切です。
では、どのような症状がみられると適応障害の可能性が高いのでしょうか? これは精神面と行動面の2つに分けることができます。
精神面では無気力感、不安、焦り、緊張が主となります。何をしても興味が湧かずに楽しめず、むなしい気持ちになってしまい、ネガティブな方向に物事を考えてしまいます。不安や焦りから、ささいなことでイライラしてしまう方もいます。
行動面では外出や身支度がおっくうになり、ひどい場合は無断欠席を繰り返すまでになります。人によっては暴飲暴食、無謀な運転といった攻撃的な行動が表れます。
適応障害の治療
適応障害は、うつ病のように抗うつ薬のような薬物によって治療することは難しいとされていますが(強い不安に対して一時的に抗不安薬を使う、といったことはあります)、明確なストレスが原因であるため、それを取り除くことが治療になります。
うつ病では慢性的なストレスの積み重ねのために、ストレス要因から離れてもすぐに症状が治まることはありませんが、適応障害では「ストレス要因から離れると、症状がよくなる」のです。
そのため、まず自分にとって何がストレスなのかを見つけるところから始めましょう。
今回の例でいうなら、在宅勤務と出社での勤務は、業務内容は同じでもそれを取り巻く環境のストレスは大きく違います。身支度のための早起き、満員電車による通勤、後輩への直接指導、上司との顔合わせ、面と向かってのクレーム対応、頻繁な飲み会など、挙げればキリがありませんね。
こうした環境を変えること自体は難しくても、自分の受け止め方を少し変えるだけで「ストレスから離れる」ことができます。例えば後輩への指導では「どうしてこんなこともできないのか!」と怒るばかりでなく、「今年は4月に十分な研修を受けられていないから仕方ない、後輩も業務がうまくいかないストレスでつらいと思うし、まずは基本的なことからもう一度教えてみよう」と捉えることで、自身の心にも余裕が生まれます。
ストレス自体を消すのではなく、自分がそのストレスに対してどうしたらうまく受け止められるかを探すことが大切です。
また、上司への対応や、取引先のクレーム対応といった人間関係の問題については、1人で抱え込まず周囲の人に相談することも重要です。とくに今年はイレギュラー続きですので、誰もが少なからず対人関係の悩みを抱えています。普段から、ちょっとしたことでも同僚や上司とコミュニケーションをとることで、相談しやすい空気をお互いに作ることが適応障害の悪化を防ぐことにつながります。
それでもストレスを受け止めきれず、つらさがひどいときには産業医に相談するなどして、時短勤務にすることや、少し休養をとることもよいでしょう。
ただしつらさがある程度落ち着いたら、社会復帰のために再発防止策を考えていくことも忘れてはいけません。少しずつでもよいですので、ストレスの受け止め方を身に付けていきましょう。
環境が変わると誰もがストレスを感じるものです。情勢がめまぐるしく変わる昨今ですが、ストレスとの付き合い方を身に付けられるいい機会と捉え、ポジティブな毎日を送っていきましょう。
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提供元:今年は「六月病」「七月病」の流行に要注意だ│東洋経済オンライン