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2020.03.10

意外と知らない「ウイルスと人体」のメカニズム| コロナウイルスが広がる今押さえておきたい


なぜウイルスの攻撃を受けると発熱するのでしょうか?(写真:HM/PIXTA)

なぜウイルスの攻撃を受けると発熱するのでしょうか?(写真:HM/PIXTA)

新型コロナウイルスが世界規模で猛威を振るい、経済への悪影響も問題視されている今、あらためて、こうした「ウイルス」のしくみが気になる人も多いのではないだろうか。
新型コロナを含め、世界では何万種ものウイルスの存在が確認されているが、例えば、一般的な風邪の原因となるウイルス(200種以上とも)、そもそもそれはどうやって人体に侵入するのか。そして、私たちの体のどんなメカニズムがそれに関連しているのか。新刊『雑学科学読本 身のまわりのすごい「しくみ」大百科』を著したサイエンスライターの涌井良幸・貞美両氏に、まだまだ寒いこの時期、ウイルスや発熱、それらにまつわる人体の「しくみ」について、図を交えながらわかりやすく解説してもらった。

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風邪のときに出る熱は“悪者”?

私たちが通常「風邪」と呼んでいる病気の正式な病名は「かぜ症候群」。その原因の80~90%は「ウイルスの感染」によるものだ。一般的に、空気中に浮遊しているウイルスが、息を吸うことによって鼻やのどに入り、粘膜で増殖して炎症を起こす。炎症が鼻に広がると鼻水や鼻づまりの症状、のどに広がるとせきなどの症状が出る。

そんな風邪の症状の1つに「発熱」がある。しかし、いったいなぜウイルスの攻撃を受けたときに熱が出るのだろうか。そもそも発熱は、人体にとって悪いことなのか。

ウイルスの感染部位と侵入経路(図:小林哲也)

ウイルスの感染部位と侵入経路(図:小林哲也)

18~19世紀に解熱剤が開発された当時、発熱は病的な状態であることから「すぐに解熱剤を飲んで是正すべき」という考え方があったという。だが現在、発熱という現象は、体が身を守るための「生体防衛機能の1つ」と理解されている。

ウイルスは「低温で増殖しやすい性質」を持つが、それは発熱で抑制される。例えば、鼻やのどに炎症をもたらすライノウイルスは33℃、インフルエンザウイルスは37℃前後でもっとも活発化する。だが、発熱でウイルスが好む温度を超えれば、それらは増殖しにくくなる。体温が上がると白血球の働きが活発になって、侵入したウイルスなどの外敵と戦う作用が高まり、免疫機能も高まるのだ。

人間の体温は、常に内臓や筋肉が活動して熱を生み出しつつ、体の表面から余分な熱を逃がすことで調整され、ちょうどいい体温の「セットポイント」が設定されている。

体温のセットポイント(図:小林哲也)

体温のセットポイント(図:小林哲也)

ウイルスなどの病原体が体内に入ると、血管や粘膜にある、免疫に関わる細胞が病原体の侵入を察知し、免疫反応の信号を出す。そして、その信号や病原体を脳の細胞が感知し、体温のセットポイントを通常より高く設定。脳からの指令が神経細胞を通して全身に伝えられると、体の表面の血管が収縮したり、皮膚の汗腺を閉じて汗が逃げないようにするとともに、筋肉を収縮させて熱をつくり出すのである。

熱が出るしくみ(図:小林哲也)

熱が出るしくみ(図:小林哲也)

寒いときに「鳥肌」が立つのはなぜか?

さて、風邪といえば、“寒いぼ”とも呼ぶ「鳥肌」も関連性があるだろう。人間は寒さを感じると体がこわばったり、鳥肌が立ったりする。そもそも、人間を取り巻く空気の温度は、一部の地域を除き、体温よりも低いのが普通である。そのため、心臓から全身へ送られた温かい血液は、空気と接する皮膚で放熱して体温を一定に保っている。皮膚は、自動車でいう「ラジエーター」のような役割を果たしているわけだ。

皮膚の体温調整機能(図:小林哲也)

皮膚の体温調整機能(図:小林哲也)

ところが、寒くなると体の熱が大幅に失われて体温が下がり、代謝も下がってしまう。そのため交感神経が働き、皮膚の表面を走る動脈を収縮させて血流を減らし、放熱を抑えているのだ。これは、動物の中で人間だけが発達しているしくみだという。というのも、人間には動物のような全身を覆う毛がないからだ。

動物は寒さに直面すると、放熱を抑えるために通常は寝かせている毛を立てる。毛を立てると皮膚に接する空気の量が増え、毛の中の空気は循環しないため皮膚で温められて、温かい層が断熱効果を生んでいる。

鳥肌が立つしくみ(図:小林哲也)

鳥肌が立つしくみ(図:小林哲也)

私たちは“すごいしくみ”と共に生きている

では、このしくみは人間に残っていないのか。

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実は、鳥肌がその反応の名残なのだ。他の動物のような全身を覆う毛がなくなっても、人間には「立毛筋」という毛を立てる筋肉が残っている。

寒さを感じると、この筋肉が収縮して毛穴をきゅっと締め上げ、いぼいぼの皮膚(鳥肌)になるのだ。ただし、肝心の毛がないため、放熱防止という意味ではそれほど効果はない。

ちなみに、寒いとゾクゾクするのも立毛筋が収縮するから。夏の怪談にゾクゾクして鳥肌が立つのも、同様の理由なのだ。

以上、今の寒い季節、私たちの体につきものである「風邪」や「ウイルス」、さらに「鳥肌」など、メカニズムの視点から連想される人体のしくみについて解説したが、ほぼ毎日といえるほど自分の身に生じていることなのに「そもそもよく知らない」ことは意外なほどたくさんある。私たちは今、“すごいしくみ”と共に生きているのだ。

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提供元:意外と知らない「ウイルスと人体」のメカニズム|東洋経済オンライン

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