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2019.04.11

「売りまくる営業」はプロセス重視という共通点|トップ営業マンは場当たり的にならない


できる営業は手を抜かず、お客様の興味を惹くトークテクニックを持っています(写真:photomai/PIXTA)

できる営業は手を抜かず、お客様の興味を惹くトークテクニックを持っています(写真:photomai/PIXTA)

北川景子さん主演のドラマ「家売るオンナの逆襲」の視聴率が好調だったようです。北川さん演じる不動産屋の「スーパー営業ウーマン」(公式サイトより)が次々と商談を成立させていく活躍ぶりに爽快感をおぼえる視聴者が多いということでしょう。会社勤めをしている方ならば、「ウチにもあんな営業がいれば」などと思ったこともあるかもしれません。

その仕事ぶりには感心させられるものの、長年、営業に携わってきた私としては、北川さん演じる三軒家万智を「スーパー営業ウーマン」としていいかどうかは、ちょっと迷うところです。といっても、ひっかかるのは「スーパー」ではなく「営業」の部分です。どちらかといえば、北川さんの仕事は「販売」に近いような気がするのです。

販売と営業は別の仕事

世の中では混同されがちなのですが、販売と営業は別の仕事です。新著『「場当たり的」が会社を潰す』 では、似て非なる両者の違いについて「トップ販売員」と「トップ営業マン」の生態から解説をしました。

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シンプルに分ければ「訪ねてきたお客様にセールスを行う」のが販売員で、「自ら顧客を開拓し、セールスを行う」のが営業マンです。それぞれのトップクラスの人間がどのような生態を持っているか、以下、ご説明してみましょう。

前者でいちばんイメージしやすいのは、アパレルショップの店員さんのようなお仕事でしょうか。お客様のほうからやって来る、といってもそれでモノが売れるほど楽な話は転がっていません。トップ販売員は、次のように目を配り、考え、動きます。

まずお客様が来店したときに、店に入ってくる速度、身なり、お連れ様のあるなしなどから、購買意欲と購買可能性を一瞬で判断します。「いける」と判断すると、次のステップとして観察の対象として捉えるようになります。逆に「厳しい」と判断すると自身の忙しさ次第ではそのお客様を放置することもあります。

購買意欲のありそうなお客様の観察は重要です。どんな商品を手にしたか、何を目線で追っているのかを見ます。たとえほかのお客様の接客中であっても、観察して記憶にとめます。その時の表情、仕草、値段の確認具合など、どのような商品を望んでいるのか、見当がつくまで観察を止めません。そして、なるべくそのお客様のそばにいるようにして、声がかかるのを待つ。

さらにそのお客様の望みそうなものが特定できたら、それが店のどこにあったか、サイズはそろっていたかなど記憶を手繰り、その記憶を頼りに、声がかかったときに薦める順番まで決めておきます。薦める順番は、その顧客の望むであろうストライクゾーンのど真ん中より少し高め(高価)なものから、がセオリーです。

できる不動産屋のテクニック

実はこのセオリー、三軒家万智の働く不動産業界でよく用いられるものです。部屋を賃貸で借りたことがある人には思い当たるふしがあるかもしれません。その不動産屋は、何軒目にあなたが気に入るような物件を薦めたでしょうか。

できる不動産屋ならば、いろいろ要望を聞いたうえで、1軒目には、希望地域の希望価格帯の中から、絶対にその人が選ばないだろうなという部屋、つまり「イケてない物件」を紹介します。そして、こう言うのです。

「この地域は、物件がよく動き、出モノはほとんどない。あってもすぐ動きます」

がっかりする相手に対して、こう切り出します。

「もう1軒だけお付き合いいただけませんか」

今度は、その人の条件にかなり近い「イケている物件」に連れて行きます。

「たまたま、今この物件がキャンセルになり、空いたと連絡が入ったのです。この物件はいかがでしょうか」

こう言って決めにかかります。借りる気持ちがある人のほとんどはここで決めます。もし、ここで決まらなければ、そのお客様がこだわっているポイントに立ち返り、特徴のある物件に誘導します。窓付きの風呂がいいとか、キッチンにはIHが欲しいといった条件を確認したうえで、3軒目に案内します。

できる不動産屋ならば、もうあまりほかの選択肢はないという感じで、希少価値をちらつかせながら、2軒目とうまく比較させ、この3軒目までで決めるはずです。

不動産屋に限った話ではなく、アパレルショップなどでも同様です。多くの場合、トップ販売員は、まずストライクゾーンのど真ん中より少し高め(高価)なものを薦めてきます。

トップ営業マンはどうでしょうか。長年の経験から、トップ営業マンには共通する特徴的な行為があることがわかりました。営業は、販売と違い、顧客がお店に来てくれることはありません。アポイントがあるなしにかかわらず、こちらから訪問するのが基本です。

そして初めて会う顧客(候補)に対面します。問題はこの瞬間です。社名が広く知られている大手企業ならいざ知らず、多くの営業マンは、名の通っていない中小企業に所属しています。

先方は、有益な出会いを求めている一方で、あまたの営業マンの攻勢に辟易しています。ですから、初対面の瞬間、ほんの3~5秒の間に最初の一言を聞くべきかどうかを決めます。そこで合格になった人の中から次の1~2分の間に、さらに真剣に話を聞くべき相手なのかを見極めていきます。

最初の3~5秒は直感的に判断する

最初の3~5秒で顧客(候補)側は、営業マンの目つき、話し方、身だしなみ、姿勢、声のトーンから、「こいつは信頼できるかどうか」を直感的に判断します。

そこでクリアした相手に対しては、次の1~2分の間に、その営業マンや所属する会社が自分にとっていいことを持たらすかどうか、ほかの営業マンに比べてさらに好意を持つべきなのかどうか、放たれる言葉をもとに判断するのです。この言葉に説得力や熱意があるかが、大きな分かれ目になります。

私が営業の第一線から退き、すばらしい実績を誇るトップ営業マンたちに話を聞き、その成功体験をひもといていくと、実によく似ているのです。最初の数分間にその営業行為のほとんどが凝縮している。つまりここで顧客の共感を得る行為が卓越している人たちがトップ営業マンになれるのだと気づかされました。

この最初の段階で、ほかの人を大きく引き離せば、受注獲得までの流れはスムーズになります。しかし、トップ営業マンがトップたるゆえんは、ここから成約までは決して気を抜かないところです。

このあと更なる動機づけ(顧客が決断する理由を作る)を試みます。さらに決裁ルートも確認しなくてはなりません。本当に決定権があるのは誰か、といったことも聞きだす必要があります。それによって提案する対象、順番が決まるからです。

こうして2回目の訪問時に提案をするための要素を聞きだし、提案時には顧客の期待を超える提案をして、さらに次の段階を目指します。

トップ営業マンの頭の中には、こうした正しいプロセスが入っています。というのも、そのプロセスを踏まないと、契約に至らないことが多いからです。実務をやったことがある方はピンとこられるでしょうが、たとえ目の前の相手が「その提案、いいね」といっても、そこまでで終わるケースは珍しくありません。

担当者の「いいね」どまりになる人

「私はいいと思ったのですが、上がウンと言ってくれなくて……今回はゴメン」

こんな感じで土壇場で破談に終わる。往々にして「詰めが甘い」と言われる営業マンは、担当者の「いいね」どまりになる人です。

優秀な営業マンは「いいね」をもらった後、成立するまでのプロセスで手を抜きません。目的に向かって自分や顧客の集中力を切らさないようにします。いつの間にか、顧客と同じゴールを目指す構図を作ってしまうのです。

「一緒に、問題を解決しましょう」。そんな気持ちを共有できれば、話は前向きに進みやすいのです。

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著書ではこの「トップ営業マン」の思考法をかなり細かく解説しました。こうした思考法が「場当たり的」にならず、計画的かつ戦略的に物事を考える力につながる、と考えたからです。

多くの会社が「場当たり的」になってしまうのはなぜか。この問題を考えたときに、プロセスの重要性に改めて気づかされました。どんなにアイデアレベルではすばらしいものであっても、ゴール(プロジェクトの成功、成約)に至るには数多くのプロセスが必要となります。

その点を肝に銘じて、集中力を欠かさないようにしないと、せっかくの戦略も絵に描いたモチになるのです。

仕事ができる人はプロセスを重視し、最後まで気を抜きません。営業か販売かはさておき、顧客の要望を正確に捉え、成約に至らせている三軒家万智の手腕がすばらしいのは言うまでもないでしょう。

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日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因

年収180万円程度の日本人が「激増」する未来

7割弱の社会人が「学ぶ習慣」がないという現実

提供元:「売りまくる営業」はプロセス重視という共通点|東洋経済オンライン

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