2019.02.13
純白だけど注意!「雪」は食べない方がいい理由| きれいに見えて、実はチリだらけ
ふかふかに積もった新雪はかき氷のようで思わず食べたくなるが…(写真:sweetfish/PIXTA)
立春を過ぎましたが、まだまだ寒い日が続きます。この週末は北海道に極めて強い寒波が襲来。今年は珍しくほとんど雪が降らなかった東京にも雪の予報が出て、積雪の可能性があるので、交通機関への影響が心配です。
さて、ふかふかに積もった新雪は、真っ白でとてもきれい。まるでかき氷のようです。その美しさにつられて、「食べてみたい!」と思うこともあるかもしれません。しかし、残念ながら雪を食べるのはおすすめできません。私自身、実際に食べてみたことがあるのですが、なんだか砂っぽい味がして、「マズイ……」と非常に後悔しました。
雪の中には不純物が入っている
そう。雪はきれいに見えるのに、実は汚いんです。そういえば、車に雪が積もり、その雪が溶けた後は、車体はドロドロに汚れてしまいます。すぐに洗車に行かないとまずいレベルですよね。
この汚れこそ雪の砂っぽい味の正体です。つまり、雪には不純物が含まれているのです。この不純物は、空気中を漂う「エアロゾル」と呼ばれるものです。エアロゾルは、砂ぼこりや波しぶき、工場から排出される粒子などの総称です。
なぜ、雪にはエアロゾルが含まれているのでしょうか。これを説明するためには、雪がどのようにしてできるのかを説明しなければいけません。
雪は、雲の中でできます。そして、雲は、小さい水の粒でできています。あの白いモコモコの正体は、気体の「水蒸気」ではありません。水蒸気は目に見えないからです。それでは何なのかというと、液体の「水」や固体の「氷」の粒なのです。
雲は上昇気流などによって発生します。地表付近の空気が上昇すると、その空気の塊の温度が低くなります。気温が下がると、空気中に含むことのできる水蒸気の量は少なくなります。すると、水蒸気が水や氷に変化して、雲ができるのです。
ただし、水蒸気が冷やされるだけでは、なかなか水滴にはなりません。水蒸気が水に変わるとき、エアロゾルが重要な役割を果たします。エアロゾルが「凝結核」と呼ばれる芯となって、水滴ができるのです。
水でできた雲粒は小さくて軽いので、上昇気流があると空気抵抗でふわふわと浮かんでいられます。しかし、雲粒がまわりの水蒸気を取り込んだり、ほかの雲粒とぶつかってくっついたりすると大きくなり、重力が働いて落下します。すると、大きな雲粒は小さな雲粒をくっつけながら落下してさらに大きくなります。こうして雲粒は大きな「雨粒」となります。
雪の結晶を見れば雲の状態がわかる
さて、高いところにある雲は、水だけでなく氷の粒も混ざります。この氷の粒のことを氷晶といいます。といっても、雲粒は氷点下になると自動的に凍るわけではなく、液体の状態でいることがあります。このような状態のことを「過冷却」といいます。しかし、ここでエアロゾルが存在すると、「氷晶核」として働き、氷晶ができるのです。
そして、一度できた氷晶は、水蒸気を取り込んで成長します。こうして雪の結晶ができます。雪の結晶がそのまま落ちてくると雪になりますし、落下する途中で溶けると雨になります。
雪の結晶は「雪印」のような形や、針のような形、六角形の板のような形など、さまざまな形をしていますが、それはその雲の中の湿度や気温によって成長の仕方が変わるからです。
濃密雲粒付六花と呼ばれる雪の結晶(写真:荒木健太郎)
世界で初めて人工雪を作った中谷宇吉郎博士は「雪は天から送られた手紙である」という名言を残しました。これは雪の結晶を見れば、その雪を降らせた雲の状態がわかるということを示しています。
この雪の結晶から、雪を降らせた雲の状態をもっと詳しく知ろうという研究が気象庁の気象研究所で行われています。関東地方では、少し積雪しただけで交通機関に大きな影響が出てしまいます。しかし、関東地方の雪の予報は難しく、予報の精度を上げることが課題となっています。
そこで、関東地方に実際に雪が降ったときに、市民に雪の結晶の写真を投稿してもらえば、その膨大な写真データを解析することで雲の様子が明らかになるというわけです。
もし関東地方にお住まいであれば、雪が降ったらぜひ雪の結晶を撮影し、撮影場所と撮影時刻をTwitter(「#関東雪結晶」のハッシュタグをつける)で投稿してみてください。
あられやひょうは、雪とはでき方が違う
雪の結晶の撮影自体は、スマートフォンでも簡単にできます。さらに、100円ショップで売られているようなスマートフォン用のマイクロレンズを使うと、さらに美しく撮影できます。黒い毛糸の手袋などの上に降った結晶だと撮影しやすいですよ。
角板と呼ばれる雪の結晶(写真:荒木健太郎)
そして、雪の日に「#関東雪結晶」のハッシュタグでTwitter内を検索すれば、さまざまな雪の結晶の写真が見られて、なかなか楽しいです。
雲の中でできる氷の粒といえば、雪の結晶のほかにあられやひょうもあります。特にひょうは、夏でも雷とともに降ってくることがあります。夏なのに氷が降ってくるのは不思議ですよね。2014年の6月に、東京都三鷹市などで大量のひょうが降って、一瞬にして冬景色になってしまったニュースを覚えている人も多いのではないでしょうか。
あられやひょうは、雪と違って丸い形をしています。これは、作られ方が雪とは少し違うからです。
塊霰(かたまりあられ)と呼ばれる結晶。球に近い形をしている(写真:荒木健太郎)
雪は水蒸気を取り込んで成長しますが、あられは、過冷却の水滴をくっつけることで成長します。大きくなったあられは落下しますが、雷雲とも呼ばれる積乱雲の中には強い上昇気流があるため、その上昇気流で再びあられが上空に戻ります。そしてまた落下するときに、さらに過冷却の雲球に近い形をしている。粒をくっつけて大きくなるのです。このとき、あられはくるくると回転しながら下降するので、丸っこい形になります。
こうしてあられが直径5mm以上になると、「ひょう」と呼ばれるようになります。夏でもひょうが降ってくることがあるのは、ひょうが大きく成長したため、途中ですべて溶けきれずに落下するからです。
……というわけで、ずいぶんと話がそれてしまいましたが、もう一度冒頭の「雪が汚いのはなぜか」という話に戻りましょう。
雪は氷晶核、雨は凝結核があるので汚れている
雪の中にはエアロゾルからなる氷晶核が存在しているうえ、落下する際にもエアロゾルをくっつけます。だから、雪が溶けた後はエアロゾルが残って自動車が汚れるし、雪を食べてもおいしくないというわけです。
同様に、ひょうも雲の中でエアロゾルを含んだ過冷却の雲粒をくっつけて落下するので、食べるとおいしくありません。実際に、私の知人でひょうを食べたという人がいたのですが、やはりおいしくなかったようです。
そして、雨の中にも凝結核があるので、汚れています。以前、「台風の日に雨戸に洗剤をつけて放置したら、暴風雨で洗われてきれいになった」という旨のつぶやきがTwitterで話題になりましたが、雨自体がきれいなものではないので、残念ながらこの方法は掃除方法としては有効ではありません。
「なぜ、雨や雪が降った後は自転車や自動車が汚れるんだろう」「洗濯物を干している間に雨に降られたけれど、そのまま干し続けて、雨が止んだ後に乾いたものを取り込んだらダメなの?」という素朴な疑問は、雨や雪の成り立ちを考えればおのずと答えがわかるというわけですね。
【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します
提供元:純白だけど注意!「雪」は食べない方がいい理由|東洋経済オンライン