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2019.01.08

前例のない「GW10連休」、交錯する期待と不安|観光業界は歓迎も、株価の変動リスク高まる


10連休になったことで、2019年のGWは多くの日本人が海外旅行に出かけそうだ(共同通信)

10連休になったことで、2019年のGWは多くの日本人が海外旅行に出かけそうだ(共同通信)

今上天皇の退位と皇太子さまの新天皇即位に伴い、2019年のゴールデンウィーク(GW)は4月27日から5月6日まで10連休となることが決まった。異例の長期休みで、観光業界や小売業界を中心に経済波及効果を期待する声が聞こえてくる。

旅行の予約件数は数倍の規模に

「4月27日、28日辺りは(予約件数が)前年比プラス150%ぐらいの伸びになっている」。エイチ・アイ・エスで旅行事業を統括する中森達也・専務執行役員はそう語る。同社の予約件数は連休全体で前年比3〜4倍に。人気のハワイやグアム、アジアの都市部行きのチャーター便や航空会社の便から席を買い取って、自社専売を増やす準備を進めている。

JTBの推計によれば、2018年の日本人海外旅行者数は1890万人と6年ぶりに過去最高を記録した。2019年も1910万人と連続更新が見込まれる。特に今年は日程調整をする必要がないため、昨年末時点で、各社の予約件数はすでに数倍の規模に膨らんでいるもようだ。

国内の行楽地もにぎわいそうだ。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは「天候には左右されるが、休日が多くなるという点で集客増につながると期待している」(会社側)。また、「行楽地へのドライブが増えることから、ガソリン需要は増加するとみている」(ガソリンスタンド運営会社)。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鹿野達史シニアエコノミストの試算によると、10連休は通常のGWに比べ、9265億円の消費押し上げ効果があるという。休みが単純に3日間増えるという前提の試算ということもあり、10連休である点を勘案すれば、「効果がさらに大きくなる可能性がある」(鹿野氏)。

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小売り各社もポジティブな反応が目立つ。「魅力のある企画や商品を準備して、顧客をお迎えしたい」(イオン)。「店舗ごとに集客力のあるイベントや催事を10連休に充てて、消費を盛り上げたい」(三越伊勢丹)。ただ具体的な販促策については、各社とも様子見といった状況だ。

勤務体系については例年のGWでも繁忙期シフトを設定しており、「過去のGWと状況は大きく変わらず、対応することはできる」(三越伊勢丹)という。

物流業界は人手確保に苦慮

一方、ネット通販の拡大などで配達現場が逼迫している物流業界は人手のやり繰りに苦労しそうだ。業界内では、連休期間中に百貨店や量販店のセールが増え、GW直前から休み期間にかけて輸送量が跳ね上がるという見方が大勢を占める。

物流一括受託の大手、SBSホールディングスは輸送量増をにらみ、昨年後半からドライバーやトラックの確保に動き始めた。自社戦力で足りない場合は外部委託せざるをえないが、「10連休は人手不足に拍車がかかり、委託費用も上がるだろう」(同社)。

今から頭を抱えているのが、株式市場関係者だ。

「レジャーや観光の関連企業などの株価が局所的に上がるかもしれないが、前向きな影響はその程度。株式市場全体にとって、いいことはない」。大手証券会社のベテランアナリストは苦い顔を見せる。

日本取引所グループは2018年12月21日、GWに市場を10日連続で休場すると正式発表した。休場中の最大の課題は、連休中に海外市場の株価や為替を大幅に変動させるような出来事が起きた場合の影響だ。仮にそうなっても、休場が続く日本の株式市場では、売買を通じた株価の調整が働かない。連休後の取引では、たまった変動要因を一気に織り込もうとして、株価が激しく変動する事態が想定される。

日本の株式市場は異例の長期休場によって、休み前後の売買が活発になりそうだ(撮影:尾形文繁)

日本の株式市場は異例の長期休場によって、休み前後の売買が活発になりそうだ(撮影:尾形文繁)

こうした状況に備えるため、連休前にはリスクオフの動きが活発になりそうだ。国内外の機関投資家を中心に、日本株を売って持ち高を減らすほか、日経平均株価の指数先物を売るなど、株価の下押しにつながる取引が多くなると考えられる。

また、GW前後は例年、投資家にとって重要な判断材料である企業の決算発表がピークを迎える。「早く出た決算がよくないようであれば、連休をまたいで株を持つリスクを避ける心理が高まり、売りが加速する可能性もある」(前出のアナリスト)。

銀行も対応に追われる

銀行などの金融機関も、10連休に向けて対応を迫られている。振り込みなど顧客企業の手続きが連休明けに集中する場合、取引が膨大になり、システムへの負荷が一気に高まるリスクが想定される。

加えて、書類の一部では和暦が使用されており、今回の改元で事務的な負担の増加が見込まれる。あるメガバンクの関係者は「休日を返上して、マンパワーで対応することになるだろう」と頭を抱える。

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当記事は「週刊東洋経済」1月12日号 <1月7日発売>からの転載記事です ※外部サイトに遷移します

三菱UFJ銀行は昨年末に、早くも改元・10連休に関わる個人・法人向けのQ&Aを公開。連休前後の取引を早めに持ち込むよう呼びかけた。ほかにもATM(現金自動出入機)の現金補充や連休中を満期とする定期預金の取り扱いなど、課題は山積みだ。

未踏の領域となる10連休だけに、各企業の対応力が求められている。

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提供元:前例のない「GW10連休」、交錯する期待と不安|東洋経済オンライン

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