2018.12.10
「メンタル不調」予防のため今日からできる事|幸せの度合いは「身近な人間関係」で決まる
良好な人間関係を築くにはどうしたらいいのでしょうか?(写真:プラナ/PIXTA)
こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャ(R)」の大野萌子です。
人生の幸せの基準は人それぞれです。名誉、お金、愛、皆様は何を思い浮かべますか? 何をおいてもまずは健康と思う方も多いかと思います。そして、その中でも心の健康は、すべての面において影響を及ぼすものです。どのような状況下にあっても、心の平穏を保つことができれば、幸せにつながると思うからです。
人間関係のトラブルを解消するには?
その心の平穏は、身近な人間関係に大きく影響されます。私が相談業務を行っている中でも、悩みの原因の9割以上は、人間関係に集約されます。最初は、「体調が悪い」「やる気が出ない」「仕事が向かない」と訴えてくる方々も、話を聞いていくと、多くは上司や部下、取引先などの仕事関係、もしくは、友人知人、家族との人間関係に行きつきます。裏を返せば、人間関係さえよければトラブルは起こりにくく、心を痛めることも少ないといえます。
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実際、職員向けの研修で、人間関係構築を主体とした「聴き方と伝え方のコミュニケーションスキル」と関わり方の基本姿勢を身に付ける「ハラスメント本質」の研修を行っていくと、メンタル不調を訴える人、業務上でのトラブル、休職や時短勤務を要する人が確実に減り、離職率が下がります。
魔法のように次の日から劇的に変化するということはありませんが、じわじわと確実に効果を表します。自分が変わることにより、周りから自分への対応が変わるからです。ですから、関わり方のスキルを学ぶのは非常に効果的なのですが、残念ながら限界はあります。相手自身を変えることはできないからです。
では、快適な関係を築くためには、どうしたらよいのでしょうか。
そもそも、相手を変えるという認識を変える必要があります。問題は自分にあるのではなく、相手にあるという呪縛から逃れなくてはなりません。
そのためには、自分と相手との境界をきちんと意識することです。相手との境界があいまいな人ほど「相手を変えたい、変えられる」という思いにとらわれがちになります。そして、感情に振り回されて疲弊します。
以下、いくつ当てはまりますか?
・アドバイスするのは、相手のためだからという思いが強い
・上司(親)なら部下(子ども)が失敗しないように導くべき
・「○○してあげたのに」という思いを感じることが多い
・相手の対応が予想外のときに腹が立つ
・良かれと思ってしたことが裏目に出ることが多い
以上は、自分と相手の境界のあいまいさのチェックです。2つ以上当てはまれば、予備軍。3つ以上当てはまれば注意が必要です。
相手に対して「あなたのため」や「私が助けてあげるべき」という気持ちがあるのは、こちらの思いの押し付けにすぎず、相手を対等に見ていません。対等でないということは、支配関係を構築していることにほかならず、相手からすれば、抑圧や自主性を奪われてしまうような感覚になります。
また、こちらの好意が実を結ばなかったときに「せっかくしてあげたのに……」「こんなにしてあげたのになぜ」という思いが強いのは、結局、相手のことを考えてはおらず、自分に注目してほしい傾向が強く、健全な関係構築に大きな障害となります。
自分は自分、相手は相手と切り分けて考える
依存度が強いと、人は攻撃的になります。相手に依存すればするほど、相手を攻撃対象とみなし、意見の押し付けや行動を変えることを要求しがちになるのです。攻撃すれば良好な関係を保つことは難しく、相手から拒否されても致し方がない状況に陥ります。
これを改善するためには、自律(自分をコントロールすること)が必須です。相手をコントロールすることでは、決して心の平穏は訪れないことを自覚しましょう。誰かのせいや何かのせいにすることなく、自分は自分、相手は相手と切り分けて考えることが何よりも大切なのです。
相手のせいにし続けるかぎり、負のスパイラルから抜け出すことは難しくなります。このスパイラルから抜け出すことができれば、相手を本当の意味で尊重することができ、対等な関係を育むことが可能になります。対等な関係性は、真の意味で相手と向き合うこと、理解し合えることにつながり、心地よい交流が可能になります。
特に身近な人間関係では、この境界があいまいになりがちです。しかし、日々接する相手だからこそ、境界が重要であることを認識していただけたらと思います。決して相手を遠ざけることではありません。自分と相手との間にある一定の距離感が、お互いを思いやる大切な感覚なのです。
認め合い、分かち合うための関係構築の一助となれば幸いです。
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身近な人たちとのより良い関係性を育み、気持ちのコントロールを目指す本連載『自衛隊員も学んでいる!タフな大人のメンタルチューニング』で記事を書き始めて、今回で100回目になります。
ここまで続けてこられたのは、ひとえに読者の皆様の温かいご支援と、いつもサポートしてくださる東洋経済オンラインの皆様のお力によるものと心より感謝申し上げます。
今後も皆様のお役に立てる記事を発信できるよう尽力してまいりたいと存じます。感謝を込めて。
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提供元:「メンタル不調」予防のため今日からできる事|東洋経済オンライン