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2018.11.29

世界最高齢83歳プログラマーが現役のワケ|人生100年時代、セルフラーニングのすすめ


「人生100年時代のセルフラーニング」をテーマに、自らの経験を伝授する83歳の若宮正子さん。世界最高齢の現役プログラマーだ(筆者撮影)

「人生100年時代のセルフラーニング」をテーマに、自らの経験を伝授する83歳の若宮正子さん。世界最高齢の現役プログラマーだ(筆者撮影)

60歳を過ぎて習い始めたパソコンを駆使し、81歳でスマホ向けゲームアプリ「hinadan(ヒナダン)」を開発した若宮正子さん。アメリカのアップル本社で開催された世界開発者会議で、同社のティム・クックCEOに歓待されたことで一躍脚光を浴びたことで知られる。その後は、国連会議での基調講演やIT関連のイベント、企業や自治体のセミナーなどの講師として引っ張りだこだ。83歳の今もなお、好奇心に突き動かされるまま貪欲に学び続ける姿勢は、われわれに大きな勇気と希望を与えてくれる。
人生100年時代の中、ビジネスパーソンが一生学び続けるために必要な心構えを教えてもらった(アクサ生命の社員向け研修と本人へのインタビューをもとに構成)。

「人生100年時代の学び方」をお伝えする前に、まず考えていただきたいのは、私たちが人間に生まれたのにはどんな意味があるのかということです。もしかしたらほかの動物や生物に生まれてきたかもしれません。人間として生まれたことに感謝して、貴重なことだと思って生きていると、やりたいことが次々と湧いてきて、とても人生100年では足りません。

私は好奇心に駆られるまま、次から次へと新しいことにチャレンジしてきました。でも無理して「○○を始めよう!」と決心したことは一度もありません。

なぜ80歳でゲームアプリのプログラミングができたのか

不思議に思うかもしませんが、60歳を過ぎてパソコンを独学で学び、80歳でゲームアプリのプログラミングをしたのも、好奇心に突き動かされて始めただけなのです。

人生100年代の学びを考えたときに、最初に「無理して決心する必要はない」という言葉を送りたいと思っています。

まず、何かを始めようと思ったときに、悲壮な覚悟で決心したり決断を下したりする必要はありません。無理して「何かを学ぼう」とかまったく思う必要はないのです。「○○を学びたい」「○○のことが知りたい」という気持ちが湧いてきたときに初めて行動を起こせば良いのです。

ただ学びたいという気持ちが起こったときには、迷わないでまず始めてみることです。失敗するとか恐れる必要もありません。失敗しても企業ではないのだから、"会社更生法"なんか適用されないのです。

プログラミングやゲームアプリ開発、エクセルでのデザインアート(画像参照)も、パソコンさえあれば誰でもすぐに学び始めることができます。「ソフトもただでダウンロードできるし、失敗しても誰にも迷惑かからないし……」と考えて気軽に始めていたら、私の場合、SNSで知り合った人の中から、教えてくれる人が出てきたのです。

幼い頃からクラシック音楽が好きで、75歳から始めたピアノでは、今やもう両手でピアノを弾けるようになりました。

失敗してもやり直せばいいのです。気が向かなくなったらいったん辞めて、やりたい気持ちが起こるまで何年も待てばいいだけのことです。

『徒然草』は「カッコつけないで学べ」と教えてくれる

何かを学ぼうと思った人に対しては「カッコつけるな」ということを伝えたいと思います。

若宮正子(わかみや まさこ)/1935年生まれ。銀行を定年退職後に、パソコンを独学で始める。シニア世代向けネット上の高齢者クラブ「メロウ倶楽部」創設メンバーの1人。81歳でiPhoneアプリ「hinadan」を開発し、アップル開発者向けイベントにAppleのティム・クックCEOから特別招待される。2018年2月には米ニューヨークで国際連合の事務局が主催する会議に招かれ、シニア層によるデジタル技術活用について、英語で基調講演した。日本政府の「人生100年時代構想会議」の有識者メンバーにも選ばれている(筆者撮影)

若宮正子(わかみや まさこ)/1935年生まれ。銀行を定年退職後に、パソコンを独学で始める。シニア世代向けネット上の高齢者クラブ「メロウ倶楽部」創設メンバーの1人。81歳でiPhoneアプリ「hinadan」を開発し、アップル開発者向けイベントにAppleのティム・クックCEOから特別招待される。2018年2月には米ニューヨークで国際連合の事務局が主催する会議に招かれ、シニア層によるデジタル技術活用について、英語で基調講演した。日本政府の「人生100年時代構想会議」の有識者メンバーにも選ばれている(筆者撮影)

よくありがちなのが、英語や音楽などを習おうと思ったときに、「恥ずかしいから、ある程度勉強してから習いに行こう」という気持ちになることです。

ですが、それで本当にうまくなった人を私は見たことがありません。何にもできなくてわからなくて笑われてもいいから、ひたすら無心で学び続ける人の上達のほうが早いのです。カッコつけている人はいつまで経っても成長しません。

かの吉田兼好も徒然草の第150段の中で、「能をつかんとする人、『よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。うちうちよく習ひ得て、さし出でたらんこそ、いと心にくからめ』と常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし」と書いています。

その意味は、「これから芸を身に付けようとする人が、『下手くそなうちは、人に見られたら恥だ。人知れず猛特訓して上達してから芸を披露するのが格好良い』などと、よく勘違いしがちだ。こんなことを言う人が芸を身に付けたためしは何一つとしてない」ということで、古今を通じて普遍的な真実なのでしょう。

そしていざ学ぼうと思ったときには、「子どもからでも、孫からでも教えてもらう」姿勢がとても大切です。「先生」というのは、先に生まれたから先生ではありません。あくまで自分が学ぼうとする分野で「自分より先にいる人」が本当の先生なのです。以前こんなことがありました。7歳の少年が近所のお母さんたちに、プログラミングを教えることになりました。お母さんたちはその子どもに丁寧に頭を下げて、「どうぞ、よろしくお願いいたします」と言ったのです。すごく良い話だと思いませんか?

少しでもできるようになったら「教える人」になろう

「教えることは、学ぶこと(できるようになったら人に教えよう)」。最後にこの言葉を送りたいと思います。

若宮さんがエクセルで描いたデザインで製作した団扇と手提げ袋(筆者撮影)

若宮さんがエクセルで描いたデザインで製作した団扇と手提げ袋(筆者撮影)

英語でも音楽でも、何かを学んで少しでもできるようになったら、誰かに教えることをお勧めします。完全にできてからでなくてもいいのです。人に教えることで自分の足りない部分もわかり、それがまた次の学びにつながっていくのです。

私もパソコンを独学で学んだあと、近所のシニアの人たちを集めて自分が覚えたことを教えたことがあります。シニアの皆さんには喜んでもらえたし、自分自身もとても勉強になりました。これはぜひお勧めしたいことです。

今の時代、「人生100年時代」という話になったとき、若い世代も60歳以上のシニア世代も、あまり良くないイメージを持っている人は少なくないかもしれません。将来の年金や医療、介護の問題など、不安になる要素は確かにいくつかあるでしょう。そうした課題を前にして学び続けることに、ネガティブな気持ちになる人もいることでしょう。

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ベストセラー『ワーク・シフト』『ライフ・シフト』の著者リンダ・グラットン氏の来日記念シンポジウム(参加費無料)が12月5日に行われます。 クリックすると登録サイトにジャンプします

ただ、私がお伝えしたいのは、人生100年時代をネガティブにとらえるのではなく、いったんその発想は置いておいて、ポジティブにとらえ直してほしいということです。その前向きな気持ちから、自然と学ぼうという意欲が生まれてくるのだと思っています。

私自身は、人間として生まれた以上、それを貴重なことと考えて、"フルコース"でこれからも人生を堪能していきたいと思っています。

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提供元:世界最高齢83歳プログラマーが現役のワケ|東洋経済オンライン

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