2018.10.24
吉越流「定年後」のコミュニケーション術|会社メールで友人に退職の挨拶を送るのはNG
59歳でトリンプ・インターナショナル・ジャパンの社長を退任し、リタイアライフを謳歌している吉越浩一郎氏が『リタイアライフが10倍楽しくなる定年デジタル』を上梓。初期からiPhoneを使いこなしていたという吉越氏による「定年後のコミュニケーション術」とは一体どのようなものなのか。
『リタイアライフが10倍楽しくなる定年デジタル』 ※外部サイトに遷移します。
奥様ダニエルさんの故郷南フランスと東京を行ったり来たりの生活を送っている吉越浩一郎氏(写真:Evelyne Grandon Kohrus)
会社メールから友人に「定年退職の挨拶」はやめよう
ときおりこんなメールをいただくことがあります。
――○月○日をもちまして、定年退職を迎えることになりました。在職中はひとかたならぬお世話になりました。本来であれば、お伺いしご挨拶をすべきところではございますが………
定年退職の挨拶メールです。
そうか、彼ももう定年なのか、そのうちゴルフにでも誘おうかな、などと思いながらメールに返信を書こうとしてふとアドレス欄を見ると、発信元は会社のアドレス、メール文末の署名も会社の住所のみ。
実は「退職」と同時に、メールでの連絡がぜんぜん取れなくなってしまう友人が少なからず、いるのです。会社から割り当てられたメールアドレスは、退職すると当然使えなくなります。会社によって数週間は使えるようにしてくれる場合もありますが、外資系などは即日使用不可の場合もあります。
会社のPC、会社のアドレスを私用メールに使うというのは、厳密に言えばNGということになるのでしょうが、現実的には、社外の友人、たとえば同級生などとのちょっとした連絡にも会社のメールを使っている人は少なくないと思います。大学のOB会などのメーリングリストの宛先が会社のメールになっている、という人もいるはずです。
こうなると、相手のパソコンのスマホなどの履歴やアドレス帳に残されるのは会社のアドレスだけです。ふだんから親しく付き合っている友人ならば、携帯や自宅に電話するということもできますが「10年前の同窓会で会ったきり」だったりすると、いきなり電話はちょっと気が引けます。「じゃあ年賀状でいいや」と思っているうち、筆不精な私はそれも忘れてしまうことに。
そのたびに思うのが「なんでGmailのアドレスくらい作っておかなかったの!」ということ。
私は59歳でリタイアしてから12年経ちますが、現役の頃一緒に仕事をしていたインド人のIT技術者に強く勧められてGmailを使いはじめました。もちろん会社のアドレスも持っていましたが、外出先や自宅のパソコンでも読めるように、会社宛のメールはGmailに転送する設定を行い、基本的にはGmailだけでも仕事ができるようにしていました。
ですからリタイアして会社のアドレスが退職即日削除されても、知り合いとのやりとりに困るようなことはまったくなかったのです。退職後、個別に「新しいアドレスはこれです」とご案内する必要もありませんでした。
だからこそ、冒頭のような退職の挨拶メールを会社のアドレスからもらうたび、Gmailのアドレスから送ってくれればいいのに、せめて文末にGmailのアドレスを併記してくれたら、今後のやりとりはずっと気軽にできるようになるのになあ、と思ってしまうのです。仕事をやめたら二度と連絡など取りたくない人宛の挨拶ならば、会社のアドレスからで十分ですが、縁をつないでおきたい人には、早めに新しいアドレスを伝えておいてください。
退職が近くなったら、ぜひ、リタイア後の楽しみのためにも、Gmailのアドレスを取っておくことをおすすめします。もちろんSo-netやOCNなどのプロバイダメールを持っているのなら、それでもかまいませんが、会社のアドレスしかないという場合は、タダで今すぐ作れて、大容量の添付も可能で(ファイル合計25MBまで)、またほかのサービスにも利用できるGmailを一択でおすすめします。また迷惑メールフィルタが強力なことも大きなメリットです。
「ケータイメール」の落とし穴にはまらないで!
ケータイのアドレスがあればいいじゃないか、と思う人もいるでしょうが、ここにも意外なところに「落とし穴」があるのです。
定年後の大きな楽しみのひとつは、リタイアした仲間たちとの文字どおり「仕事抜き」の付き合いです。 同級生たちとの飲み会やゴルフはもちろん平日、ときには「シニア版修学旅行」も計画しています。
私はこうした集まりの幹事さんのようなこともしているのですが、みんなへの連絡はほぼすべてメールです。基本的には「Googleグループ」という、Googleの機能を使って、一斉送信をするのですが、そのときに意外に「困る」のがケータイキャリアのアドレス(末尾にdocomo.ne.jpやezweb.ne.jpなどがつくキャリアメール)しか持っていない同級生なのです。
ケータイの設定によっては、PCメールからの受信を受け付けない状態になっていることがあり、そうなると私がGmailなどで送ったメールも、Googleグループから送ったメールも届きません。
また、飲み会の後などに、みんなで撮った写真をすぐに送ろうしても、サイズが大きいとこれまたダメということもあります。会ったときに仲間がいろいろ手伝って、ケータイでも受信できるように設定を直したりしましたが、キャリアメールの人には、写真のサイズを小さくして、1枚ずつ何度も送ったりしています。
会うたび「スマホでもタブレットでも使えばいいのに」とすすめ続けています。
中にはせっかくスマホを持っているのに、キャリアメールしか使っていない、という人がいて、友人一同で「スマホの持ちぐされ!」とわいわい騒ぎ、その場でGmailのアドレスを作らせてしまいました。
シニアにすすめたい「ガラケー+タブレット」の2台持ち
シニアのケータイというと「ガラケー」を愛用している人もたくさんいます。「まだガラケーなの? スマホにすればいいのに」と家族や若い人に言われながら、ちょっと躊躇している人も多いかもしれません。
私は、使い慣れたガラケーをムリに捨ててスマホに乗り換える必要はないと思っています。通話が多い人にとって使い慣れたガラケーは操作もシンプルだし、見やすいし、バッテリーはオソロシイほどもつのですから、無理して慣れないものにいきなり変更するのが不安なのは当然です。通話は大事なコミュニケーションツールですから、そこに「不安」「不便」をあえて持ち込む必要はありません。
けれど、残念ながらガラケーにはできないことがあります。それが、新しいコミュニケーションツールである、LINEやFacebookといったSNSです。これらは、ガラケーでもできないことはないのですが、「見ようと思えば見られる」レベルなので少しでも興味があるなら、スマホが必須です。パソコンでもSNSはもちろん使えますが、スマホなしでパソコンのみのSNSだと「外出先での連絡」や「旅行先で、スマホで撮った写真をすぐアップする」といったことができないので、やはり面白さが発揮しきれません。
そこで私がシニア世代におすすめしたいのが、「ガラケー+タブレットの2台持ち」です。ガラケーは通話専用、SNSや日常のメール、写真の管理、ウェブサイト、地図の閲覧、電子書籍の閲覧などはすべてタブレットにしてしまえばいいのです。iPadなら通話はできないものの、基本的には「画面が大きなiPhone」ですから、もし将来的にガラケーをスマホに変えようと思ったときにも、非常にスムーズです。
SNSには興味があるけれど、スマホも不安、パソコンはちょっと苦手という人でも、安心してすぐに利用できるスタイルだと思うのです。2台持ちでも、格安SIMなどを使えば通信費の負担も軽くなります。タブレットはWi-Fi接続ができる場所でしか使わない、という場合なら、タブレットは本体代金以外の通信費は不要です。
LINEは家族と、Facebookは友だちと、で楽しもう
スマホまたはタブレットを入手したら、シニアにこそぜひ試してほしいサービスは、まずLINE、そして Facebookです。LINEは日常的な家族、親戚との連絡に最適です。もしご家族が使っているのならぜひ利用してみましょう。文字や写真のやりとりがリアルタイムでできますし、メッセージを相手が読んだかどうかがわかる「既読」機能も便利です。巨大な絵文字のようなものですが「スタンプ」も使えるのが楽しいところ。しかも最近のスタンプは動きます! さらにLINEを使っている人同士なら音声通話も、テレビ電話も無料というおまけつき。
Facebookは実名登録が原則で、一般的なブログのように不特定多数の人に写真や文章を公開するというよりも、「知り合い同士」のコミュニティの中でのやりとりが中心になります。つまり地方や海外にいる知人、友人、同級生などとの交流に非常に向いています。Facebookでお互いにときおり近況を書き込んだり、それに「いいね!」をしているだけで、学生時代よりも親しくなってしまう、ということが多々あります。
リタイア後の人生を楽しいものにするには、経済的な安心や、健康であることはもちろん非常に大切ですが、それと同時に、いや時にはそれ以上に大切なのはさまざまな人とのコミュニケーションです。いくらお金があっても、健康でも、家族、地域、友人などいろいろな形のコミュニティーの中でのつながりがなければ、充実した人生を生ききることはできません。
スマホ、タブレット、そしてSNSなどは、非常に優秀で、しかも便利なコミュニケーションツールのひとつです。しかも、体が思うように動かせなくなったときにも、その生活を支えてくれる力を持っています。
「苦手意識」をちょっと脇において、リタイア後の人生を充実させるための一歩を踏み出してほしいと思います。「リア充」ならぬ「リタ充実」をめざしてください。
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提供元:吉越流「定年後」のコミュニケーション術|東洋経済オンライン