2018.05.21
「文章が苦手な人」に教えたい書き方のコツ|ちょっとの工夫で「記憶に残る文章」が書ける
ビジネス文書は気持ちが伝わるのが第一です(写真:でじたる・らぶ/PIXTA)
主にビジネス書作家のデビューを支援するフリーの出版プロデューサーである亀谷敏朗氏による連載「伝わる文章術」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。
アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です
記憶に残るビジネス文書の作り方
お礼状やお詫び状を除くと、大抵のビジネス文書は用件が伝わればそれでよいわけですから、簡潔であるほどよいビジネス文書といわれます。ですが、ほんの一文が添えられることで、無味乾燥で紋切り型の定型文に魅力的な彩が加わるのであれば、大いにその効果を活用してみるべきです。
メラビアンの法則にあるとおり、言葉の情報は視覚情報に比べ伝達能力で大きく劣ります。しかも忘れられやすい。ところが、そういう言語情報でも「感動」が伴っていれば伝わりやすく、記憶にも強く残るといわれます。文書に気持ちを込めるとは、いわば記憶に残る人になるためのスキルです。
私は、年末に支払明細書をクライアントから送ってもらっていますが、そこに「今年はおかげさまで昨年対比〇%伸ばすことができました」とあると、自分が業績に貢献していないことを重々承知していても、ついうれしくなり、来年こそ貢献できるように頑張らねばと思います。そして、そういう一文を添えてくれた人のことは忘れません。
ビジネス文書のフォーマットは、現在、ネット上にいくらでもあります。定型文はその中からよさそうなものを選んで参考にすればよいでしょう。私自身、ビジネス文書のフォーマットは30年以上前の新入社員時代に覚えたものをいまでも使っています。ビジネス文書のフォーマットはひとつ憶えておけば、概ね何とかなるものです。フォーマットに悩むよりは、どうやってそこへ気持ちを込めるかに神経を使ったほうがよかろうというのが私の経験から言えることです。
ビジネスとは、商品やサービスを媒介とした人と人の関係。ですから、つまるところビジネスで肝心なのは人間関係ということになります。文書に気持ちを込めて、相手に伝えるのは人間関係を良好にするためのビジネススキルです。したがって、ビジネス文書に自分の気持ちを込めて相手に伝えることができる人は、それだけ有効なビジネススキルを持っている人と言えます。
固有名詞の活用が人間関係を良好にする
人間関係を良好にするための基本は、相手に対するリスペクトです。もちろんビジネス文書のフォーマットも、その点は十分に配慮されています。
そこへさらに相手に対するリスペクトを表現する方法などないように見えますが、実はそうでもありません。欧米では、「世界で最も美しい響きを持つ単語とは自分の名前」と言います。ビジネス文書では、先方の固有名詞はあまり出しません。文書のあて名の欄に
〇〇会社
△△部◆◆課長 □□□□様
とあるだけで、本文中にはまず出て来ないのが一般的です。だからこそ、単に「いつもお世話になっております」という決まり文句に相手の名前を加えるだけでも、印象はだいぶ変わります。もし、あなたの名前が田中さんであれば、「田中様にはいつもお世話になっております」と固有名詞がひとつ入ることで、定型文であっても、もらった田中さんにとっては気分が悪くないはずです。
本文中の用件についてでも、たとえば新製品の案内状を送るとき、その新商品を開発する過程で、得意先の田中さんがヒントをくれたとしたなら、単に「これまでよりずっと良い製品ができたと自信を持っております」と自画自賛するよりも、「田中様にいただいた一言のおかげで、これまでよりずっとよい製品をつくることができました」と先方の厚意を讃える一言があるほうが印象はだいぶよくなります。
もちろん田中さん以外の方々に送る案内状には、田中さんとは書けませんから、一つひとつの文書を書き換えなければなりません。「ビジネスは効率優先」という考え方からすれば非効率なことですが、効果という側面から捉えれば、先方の心に残らない文書を送るよりも効果は高いはずです。私は、請求書や商品を送るときの送り状でも、相手の名前(あるいは社名)と共に感謝の一言が添えてあるほうがよいと思っています。
請求書発行・発送は経理という会社が多いですから、営業担当者のような細かな配慮の利いた文面でいつも送ることは難しいでしょう。したがって、毎月、同じ文面になってしまうかもしれません。それでも、
時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
いつも弊社の製品をご利用いただきありがとうございます。
〇〇の件につき、別紙の通りご請求申し上げます。
ご査収下さい。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
とだけあるよりも、
時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
いつも弊社の製品をご利用いただきありがとうございます。□□(個人名または会社名)様のおかげで、私どもも少しずつ〇〇メーカーとして歩めるようになりました。
〇〇の件につき、別紙の通りご請求申し上げます。
ご査収下さい。
今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。
と文面にあれば、これが毎回同じ文面であっても、感謝の気持ちは伝わるのではないでしょうか。
いますぐ簡単にできる文章のブラッシュアップ法
文章をブラッシュアップする方法は他にもあります。「、」の使い方についてお話しします。一般に句読点と言いますが、「。」が句点「、」が読点です。そのうち句点はともかく、読点の過剰は見た目にもうるさいですし、あまり文章を書きなれていない人が書いたものという印象を与えます。
たとえば、
先日は、ご多用の中、弊社、20周年記念式典に、お運びいただき、誠にありがとうございました。弊社が、拙いながらも、20年間という、歴史を刻み、今日を、迎えることが、できましたのも、ひとえに、〇〇社様の、ご厚意の賜物と、改めて、全社員の心に、銘記いたしました。
という文章と
先日は、ご多用の中、弊社20周年記念式典にお運びいただき誠にありがとうございました。弊社が、拙いながらも20年間という歴史を刻み、今日を迎えることができましたのも、ひとえに〇〇社様のご厚意の賜物と改めて全社員の心に銘記いたしました。
を比較すればスマートさの違いは一目瞭然でしょう。「、」の使用は、なるべく抑制気味にしたほうが文面のかっこうはよくなります。
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提供元:「文章が苦手な人」に教えたい書き方のコツ|ちょっとの工夫で「記憶に残る文章」が書ける|東洋経済オンライン