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2018.05.07

実践!認知症を防ぐ超シンプルな3つの習慣|脳の健康を守れば認知症リスクは下げられる


認知症の予防には「1日30分の有酸素運動」が効果的だ(写真:KAORU / PIXTA)

認知症の予防には「1日30分の有酸素運動」が効果的だ(写真:KAORU / PIXTA)

世の中には、実に多種多様な「健康書」が氾濫している。しかし医者によって言っていることも大きく違い、何を信じたらいいのかわからない。「人生100年」時代、本当に信頼できて、誰でもお金を掛けずに毎日できる簡単な健康習慣とは、いったいどのようなものなのか。

4月26日、東洋経済オンラインのメルマガでもおなじみのムーギー・キム氏の渾身の著作『最強の健康法―世界レベルの名医の本音を全部まとめてみた』(SBクリエイティブ)が、『ベスト・パフォーマンス編』と『病気にならない最先端科学編』の2冊セットで刊行された。本書は日本を代表する50名に上る名医・健康専門家による直接解説を、東大医学部で教鞭をとる中川恵一氏、順天堂大で教鞭をとる堀江重郎氏が二重三重にその正確性をチェックしたうえで制作されている。

東洋経済オンラインでは同書を元に、多くの名医たちが実践しているおカネの掛からない確かな健康法を短期集中で紹介していく。第1回は、認知症の仕組みから予防法までを解説する。

「昔から『認知症は大統領から農夫まで平等になる疾患』と言われてきました。しかし今は、生活習慣の改善で誰でもある程度は予防可能な病気です」

こう語るのは、東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター副センター長の瀧靖之氏だ。

世界で最も高齢化の進む日本では2025年、日本の認知症患者・認知症予備軍の数は、合計1000万人を突破するといわれている。65歳以上の3人に1人、全国民の約10人に1人が認知症を患うという、人類の歴史でも例を見ない事態が、間近に迫っているのである。

年齢を重ねても、「体の元気」だけではなく「頭の元気」も保っていきたい、というのは万人に共通する願いではなかろうか。では、そのために具体的に何をしたらいいのだろうか。瀧氏は「運動」「コミュニケーション」「好奇心」の3つのポイントを挙げる。

「巷ではいろいろな食品や手法が流布しています。睡眠や食事、認知トレーニングなども大切とはいえますが、最も大事なのは、運動、コミュニケーション、好奇心の3つであり、その他の有効とされる方法は、あくまで、これらの土台があってこそなのです」

認知症の発生メカニズムを説明する前に、そもそも、どういう症状を「認知症」と呼ぶのかをはっきりさせておこう。

歳をとると体が衰える。若いころのようにあちこち飛び回るなどの無理がきかなくなる。

同様に脳も老化する。すると記憶力が低下し、「あれ、どこやったっけ?」といった症状が起こりはじめる。ただし、これは脳の老化現象による「もの忘れ」だ。専門的には「良性健忘」と呼ばれ、「認知症」とは区別されている。

「認知症」とは、一言でいえば、日常生活に支障をきたすほど、もの忘れが深刻化した病気だ。そうなると、ある記憶の一部ではなく、その記憶ごとごっそり抜け落ちる、ということが起こり出す。

たとえば、「一昨日の夕飯のおかずを忘れる」はもの忘れだが、「今日、夕飯を食べたことを忘れる」となると認知症の可能性があるかもしれない。もっと進むと日にちや時間などがわからなくなり、ついには家族の顔や、自分が誰なのかも忘れてしまう。これらは脳の老化によって起こる症状とは異なり、明確な原因があって発症する病気なのである。

認知症は「タンパク質のゴミ」から生まれる

認知症を引き起こす原因は、大きく2つある。

1つは脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血などの脳血管疾患。これは「脳血管型認知症」と呼ばれる。

そしてもう1つの原因は、「タンパク質のゴミ」が脳内に蓄積することだ。タンパク質のゴミによって名称が変わり、レビー小体が蓄積したものは「レビー小体型認知症」、アミロイドベータタンパク、タウタンパクが蓄積したものは「アルツハイマー型認知症」と呼ばれる。中でも「アルツハイマー型認知症」は、認知症全体の約50%を占めている。

出展:『最強の健康法 病気にならない最先端科学編』

出展:『最強の健康法 病気にならない最先端科学編』

「タンパク質のゴミ」が脳に蓄積すると、脳の神経細胞に炎症を起こす。結果、脳の神経細胞の機能が落ちる。最初は記憶を作る海馬、続いて判断力などの認知機能を司る前頭野へと、タンパク質のゴミの蓄積が広がっていく。

こうして「単なるもの忘れ」では済まされない、深刻な認知障害へと発展していくのである。

脳の血管障害と「タンパク質のゴミ」が、認知症の主な原因だということが理解できた。そして瀧氏は「このどちらにも効果があるのが、実は有酸素運動なんです」と明かす。

「詳しいメカニズムはまだ不明な点も多いのですが、有酸素運動によって脳内で脳細胞のエネルギー源であるBDNF(brain derived neurotrophic factor:脳由来神経栄養因子)が作られます。それによって海馬の神経細胞が再生するのです。さらには有酸素運動によって、海馬そのものの体積が増えたという研究報告もあります」

出典:『最強の健康法 病気にならない最先端科学編』

出典:『最強の健康法 病気にならない最先端科学編』

有酸素運動をすると血流がよくなり、肥満解消もできる。だから動脈硬化を予防でき、脳内で血管が詰まったり、血管が破けたりするリスクも下がる、というわけである。

さらに、先に見たように海馬は記憶を作る脳領域である。「タンパク質のゴミ」のせいで機能しなくなった海馬の神経細胞が運動で再生するというのだから、運動が認知症予防につながるという話も納得できるだろう。

1日30分程度の有酸素運動を習慣づけよう

では、どれくらいの運動をすると、認知症予防につながるのだろうか。

瀧氏はこう説明する。

「1日30分程度、歩くなどの有酸素運動を習慣づけましょう。一定時間、脳に酸素を送り続けることが重要ですから、激しいスポーツや、筋トレなどの無酸素運動は、かえっておすすめできません。公園などで見かける、踏み台の昇降運動もいいでしょう。なければ、自宅内やマンションの階段で代用することもできます」

瀧氏のほか、『最強の健康』に登場した他の先生も「ちょこっとでも歩く」ことをすすめている。認知症予防にもつながると思えば、さすがに歩きたくなってくるのではなかろうか。

瀧氏は人と交流することも認知症予防につながると語る。そのメカニズムについて、瀧氏は次のように解説する。

「私たちは普段、自然に人と交流しているように思えるかもしれませんが、人と交流するというのは、脳のあらゆる領域を使う行為です。人と話したり、人の話を聞いて理解したり、人を気遣ったり、思いやったり、あるいは人と協力して何かをしたり……。このように常に脳の認知機能を使うことで、衰えを防ぐことができるのです」

確かに人と話すときには、言葉以外にも、相手の表情や言外の雰囲気なども含めて相手の意図を理解しようとする。そのとき、私たちの脳は俊敏に働いており、なるべくその状態を絶やさないことで、認知機能の低下を防ぐことができるのである。

社交性がもたらす認知症の軽減効果

現に、瀧氏が視察したある施設では、非常に興味深い現象が起こったという。その施設には、月に一度、20人ほどの高齢者が集まって、料理をしたり、運動をしたりと、一緒に楽しくときを過ごすという。

「実は20人のうち、18人には軽度の認知症の症状が現れていたのですが、この施設のアクティビティに加わるようになって3年後、16人には症状の軽減が見られたのです」

すでに症状が出ている人に軽減が見られたということは、予防効果は言うにおよばないだろう。瀧氏は言う。

「今も老後も一人寂しく過ごすより、誰かと一緒に、楽しく過ごす時間をもつことが最高の脳への栄養です。互いに楽しく交流し、思いやれる関係を築くことが重要なのです」

さらに瀧氏によると、好奇心をもって取り組めば、記憶力が高まるという。

ワクワクして取り組むことは脳の最大の栄養

「アメリカで行われた、ある調査では、好奇心をもって取り組むとドーパミンが分泌され、記憶力が格段に高まる、という結果が出ています。『あれも知りたい!』『これも知りたい!』とワクワクして取り組むことは脳の最大の栄養といえるでしょう」

ドーパミンといえば、快感ややる気を司る脳内神経伝達物質だが、これが好奇心をもったときにも分泌され、記憶力アップに関係するというわけである。しかも「好奇心は、短期的な記憶力だけでなく、長期的な記憶力も高めることがわかっています」と瀧氏は話す。

好奇心は、ワクワク・ドキドキとセットだ。瀧氏はさらにこう話す。

「見る、聞く、嗅ぐ、触れる、味わうという五感で得た情報は、脳の扁桃体という小さな領域に送られます。ここで快・不快の感情が生まれます。先ほどのドーパミンも、この扁桃体から分泌されます。実は、この扁桃体は海馬のすぐ横にあるのです。だから強い感情を伴う出来事は鮮烈に記憶されると考えられています。

好奇心でワクワク・ドキドキしながら取り組むと、脳の扁桃体からドーパミンが分泌、より強く記憶されるというのも同様の仕組みです。知的好奇心が脳の栄養ですから、ワクワク・ドキドキできる趣味をもつことは、認知症予防に直結するといえます」

脳のタンパクのゴミが原因で引き起こされる認知症は、簡単な有酸素運動、社交、そして何かに好奇心をもって取り組むことで、予防できる可能性があるのだ。

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提供元:実践!認知症を防ぐ超シンプルな3つの習慣|脳の健康を守れば認知症リスクは下げられる|東洋経済オンライン

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